魔方陣
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魔方陣(まほうじん)とは、正方形の方陣に数字を配置し、縦・横・斜めのいずれの列についても、その列の数字の合計が同じになるもののことである。特に1から方陣のマスの総数までの数字を1つずつ過不足なく使ったものを言う。
なお、よく書き間違えられるが「魔法陣」ではない。
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[編集] 3×3の魔方陣
1×1の魔方陣は明らかであり、2×2の魔方陣は1,2,3,4を使う限り存在しない。したがって3×3のものが意味のある最小の魔方陣になる。
3×3の魔方陣又は、三方陣は、対称形を除けば下記の形しか存在しない。各列の合計は15になる。
3方陣の暗記法として、 「憎し(294)と思えば、七五三(753)、六一坊主に蜂(618)が刺す」 「憎し(294)と思えば、七五三(753)、六一八(618)はみな同じ」 などが知られている。
この対称形の一つが、九星などで用いられる「河図洛書」(洛書)の図は次のとおりとなる。

4 | 9 | 2 |
3 | 5 | 7 |
8 | 1 | 6 |
また西洋数秘術のサトゥルヌス魔方陣(土星魔方陣)は次の図のとおりである。
6 | 1 | 8 |
7 | 5 | 3 |
2 | 9 | 4 |
[編集] 奇数×奇数の魔方陣の作り方
- 上段の中央を1にする
- 右上に次の数字を置いていく(最上段の上は最下段になる。下の図を参照。)
- 右上が埋まっていたら一つ下に次の数字を置く
- 再び右上へと数字を埋めていく
- 後は3,4の繰り返しで完成
- 例:7×7
下段の中央を1にしたり、左斜めに進める方法もあるが、これらは対称形なのですべて同じ方法。
[編集] 四倍数×四倍数の魔方陣の作り方
- 4×4のブロックに区切り、対角線をイメージする
- 左上から右へ、1から順々に数え上げ、対角線にあたるところだけに数字を置く
- 右下から左へ、1から順々に数え上げ、対角線にあたらないところだけに数字を置く
- 例 : 8×8
[編集] ユピテル魔方陣

西洋数秘術のユピテル魔方陣(木星魔方陣)は次の図のとおりである。各ラインの和は34(女性数の最初2と男性素数17(ピタゴラス学派では不幸とする)の積)になっている。
アルブレヒト・デューラーの『メランコリア』という作品には砂時計隣に4×4の次の図のユピテル魔方陣が描かれている。この魔方陣の中には、制作年の1514が埋め込まれている。
[編集] 特殊な魔方陣
[編集] 完全方陣
斜め方向の和が、対角線以外でも等しくなるような物を完全方陣と呼ぶ。
例:
この図において斜めの和を見ると、
- 6+1+11+16=12+14+5+3=7+4+10+13=9+15+8+2=34
- 9+14+8+3=7+1+10+16=12+15+5+2=6+4+11+13=34
が成り立っている。その他、任意の2×2の固まりの合計が34になる。
一辺nが4以上でかつ n≠4k+2 の時、完全方陣が作成可能である。
[編集] multimagic square
すべての数をn乗しても、縦・横の和が一定になる物をmultimagic squareと呼ぶ。
例:
図は8×8の魔方陣である。各列の数の合計は260になり、この各数を2乗すると、縦横の各列の和は11180になる。
[編集] その他
以下は乗算した結果が等しくなる例
その1:2のべき乗{1,2,4}と3のべき乗{1,3,9}を掛け合わせたものの例
縦・横・斜めの積がそれぞれ216である。
以下のように分解することで構成要素がより明確になる。
2のべき乗の要素 |
3のべき乗の要素 |
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その2:奇数{1,3,5,7}と2のべき乗{1,2,4,8}を掛け合わせたものの例
縦・横・斜めの積がそれぞれ6720である。
同様に以下のように分解することで構成要素を明確にできる。
奇数の要素 |
2のべき乗の要素 |
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[編集] ラテン方陣
n×nの各行各列に1~nを配置したものをラテン方陣という。これを2つ組合わせることでも魔方陣を作ることが可能である。
数独(ナンバープレース)と呼ばれるペンシルパズルは、これに条件を付加した物である。
[編集] その他
[編集] 易の八卦
易の八卦のうち周易の先天図、帰蔵易(歸藏易:殷王朝の易)、連山易(夏の易)の三図は魔方陣的な図であり、卦に河図洛書と関わる数字を当てた場合、帰蔵図は魔方陣となる。なお連山は風水の羅盤に記載され使用される(便宜上正方形にしたが元図は8角形である)。
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[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 『新数学事典』大阪書籍(VII. 数学特論、3. 興味ある数学問題、§3.4 魔方陣、pp.910-916.) ISBN 4-754-82009-6
- 高木貞治『数学小景』岩波現代文庫 ISBN 4-006-00081-2
- 佐藤 肇、一楽 重雄『幾何の魔術―魔方陣から現代数学へ』日本評論社 ISBN 4-535-78352-7
- 内田 伏一『魔方陣にみる数のしくみ―汎魔方陣への誘い』日本評論社 ISBN 4-535-78421-3
- 大森 清美『新編 魔方陣』冨山房 ISBN 4-572-00696-2
- 数学セミナー編集部/編『数学100の問題 数学史を彩る発見と挑戦のドラマ』日本評論社 ISBN 4-535-60614-5