Corona
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Corona とは、アメリカ合衆国の軍事偵察衛星のシリーズ名称である。CIA主導でアメリカ空軍が技術・運用面で補助し、1959年6月から1972年5月までソビエト連邦や中国などの地域の写真監視に使われた。プロジェクト名は CORONA とも表記されるが、頭字語ではなくコード名である。
1960年5月、U-2撃墜事件後にプロジェクトが加速されることとなった。
使用された人工衛星の型名は、KH-1、KH-2、KH-3、KH-4、KH-4A、KH-4Bである。KH とは Keyhole(鍵穴)の意味であり、番号が大きくなるに従って監視機器が進歩している。例えば、当初1つのパノラマ写真撮影機だったものが後に2つになっている。この型名体系は1962年にKH-4で初めて使われ、遡って適用された。144機の Corona 人工衛星が打ち上げられ、そのうち102機で使用可能な画像を回収できた。
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[編集] 技術
Corona 人工衛星は、31,500ft(9,600m)の特殊な70mmフィルムと焦点距離 24インチ(0.6m)のレンズを使用していた。当初、高度165kmから460kmの軌道で航行し、画像の解像度は地表の7.5mの物体の識別が可能なレベルであった。2機の KH-4 システムは高度を下げることでそれぞれ 2.75m と1.8m の解像度を実現している。
皮肉にも、Corona という名称は名付け親が想像していたよりもふさわしい名前であった。最初のミッションは様々な技術的問題に直面し、中でも回収されたフィルムに不可思議な曇りや明るいすじが見られたが、これは次のミッションでは発生しなかった。この現象は、ルイ・アルヴァレら科学者と技術者の共同チームの調査によって、カメラのゴム製の部品によって発生した(コロナ放電と呼ばれる)静電放電が原因であると判明した。この問題の解決策としてチームが推奨した手段は人工衛星の部品の接地(アース処理)の強化と事前のガス放出試験であった。この教訓は現在のアメリカ合衆国の偵察衛星にも生かされている。
[編集] Discoverer
当初、Corona は 1959年初頭に最初の試験打ち上げが行われた Discoverer という宇宙技術計画の一環として始められた。カメラを搭載しての最初の打ち上げは1959年6月の Discoverer 4 で、ソー-アジェナロケットで打ち上げられた 750kg の人工衛星である。フィルム缶は buckets と呼ばれるカプセルとして地球に戻され、パラシュート降下中に特殊装備の航空機で空中回収された。それが失敗した場合、カプセルは短時間なら水上に浮かぶよう設計されていたが、ある程度経つと沈んでいく。最初のカメラ搭載 Discoverer ミッションは利用可能なフィルムを回収できなかったが、その後も回収試験を繰り返し、1960年8月18日、Discoverer 14 のカプセル回収が成功した(C-119爆撃機を使用)。Samos という別の計画では、人工衛星上でフィルムを現像し、その画像をスキャンして地上に電送する方式が採用された。Samos E-1 と E-2 人工衛星計画ではその方式が採用されたが、多くの写真を撮ることができず、電送できる写真数も限られていた。後に Samos E-5 と E-6 でもフィルム回収方式が採用されたが、いずれも失敗に終わった。Corona のフィルム回収カプセルは、より高解像度の写真を撮れる KH-7 Gambit 人工衛星にも採用された。
Discoverer 13 は1960年8月11日に地球に戻り回収された最初の人工衛星である。
Discoverer 計画の最後の打ち上げは Discoverer 38 で 1962年に行われた。その後、Corona 関連の計画は国家機密とされた。Corona の最後の打ち上げは1972年5月25日で、ソ連の潜水艦がカプセル回収地点付近で待ち構えていることが判明したために、その後の打ち上げが中止された。Corona が最もうまく機能していたのは1966年から1971年で、その間に32回の打ち上げ・回収が行われた。
[編集] 機密解除
Corona は1992年まで国家機密扱いであった。1995年2月22日、大統領命令によってCoronaやその後の2つの計画(ArgonとLanyard)で撮影した画像が機密解除となった。
機密解除された画像を使って、メルボルン大学のチームは古代シリアの製陶工場、巨石墓、13万年前の遺跡などを発見した[1] [2]。
[編集] 参考文献
- ^ http://www.physorg.com/news73840698.html
- ^ http://www.livescience.com/history/060807_syria_satellite.html
- Dwayne A. Day, John M. Logsdon, and Brian Latell (Eds.), Eye in the Sky: The Story of the Corona Spy Satellites. Washington, DC: Smithsonian Books. ISBN 1-56098-773-1 (paperback) or ISBN 1-56098-830-4 (hardcover).
- Curtis Peebles, The Corona Project: America's First Spy Satellites. Annapolis: Naval Institute Press. ISBN 1-55750-688-4.