Wireless Application Protocol
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Wireless Application Protocol(ワイヤレス アプリケーション プロトコル、略称: WAP)は 携帯電話などのデバイスでインターネット閲覧などのサービスを可能にする為の技術仕様である。
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[編集] 概要
WAPで使われるコンテンツ記述言語は、WAP 2.0以前は、WML(Wireless Markup Language)であった。しかしながら、インターネット標準のHTMLとは、互換性がなく、あまり評判はよくなかった。WAP 2.0になって、記述言語としては、XHTML/MP(モバイルプロファイル)が、WMLとならんで採用され、コンテンツ記述言語としては、WMLは消えゆく存在となりつつある。
WAP技術の標準化・推進組職は WAP Forumであったが、発展的解消ということで、他の標準化団体とならんで OMA(Open Mobile Alliance) に統合された。
[編集] WAP 2.0
WAP 2.0では、インターネットで標準的に使われている技術が採用された。コンテンツ記述言語としては、従来までのWMLとならんでXHTML MPを、トランスポートプロトコルとしては、従来までのWTP/WSPとならんでTCP/IPを採用した。これらの採用で、より一層のコンテンツ利用の拡大をはかることになった。これは、WAP 1.x時代にインターネットと非互換である携帯電話だけの独自技術を採用したことのハンディキャップを考慮しての規格改訂であったといえる。
[編集] WAP プッシュ
WAP プッシュは WAP 1.2 から使われた技術であり、WAP コンテンツをお互いに違う会社の携帯電話にプッシュされるようにする機構である。WAP プッシュは普通 WAP 住所へのリンクを含んだメッセージにエンコードされて、WAP ベアラー(bearer)や SMS ベアラーを通じて伝達する。WAP プッシュを受けるようになれば自動的に WAP コンテンツにアクセスして使用者に伝達するようになる。
このような方法で、WAP プッシュは受信者に WAP 住所を伝達することで端末機を通じて見るとか、保存することができるようになる。WAP プッシュを使うことで、使用者はより簡単にモバイルサービスを利用することができる。
[編集] WAP技術とその経緯
[編集] WAP 1.x
WAPは、それまで、業界標準規格というものがなかった、携帯電話インターネットの技術仕様として、誕生した。しかしながら、当時の利用可能な携帯電話通信環境としては、9.6kbpsのCSD接続があるばかりで、パケットはないというような時代であり、コンテンツもおもに、テキスト。液晶は、モノクロという時代であった。日本では、業界首位のNTT DoCoMoは、WAPを採用せずに、c-HTML(Compact HTML)を元にした独自のi-modeを採用した。当時業界2位のIDO/DDIセルラーフォングループは、PDCを選ばずにCDMAを選んだのと同じ理由で、国際ディファクト規格であるWAPを採用した。 WAP 1.xの時代は、通信速度がおそく、通信コストが高く、コンテンツがそろわず、オペレータの閲覧可能サイト制限などもあり、全世界的に、あまりよい評判を得ることは出来なかった。
[編集] 通信環境の変化とWAP 2.0
GPRS,CDMA2000,EDGEおよびWCDMAなどのパケットベースでの通信が比較的安価に利用することが可能となり、また、液晶のカラー化、カメラ搭載なども進んで、携帯電話インターネットサービスを広く利用する環境は整いつつあった。そして、WAPの規格も、WAP 1.xに、XHTML MPとTCPの採用をあわせてのせる形で、WAP 2.0規格が制定された。今日、携帯電話のbrowsing,Messagingは、WAP Forumの後継団体であるOMAの定めたものが業界標準であり、それは、WAP1.x/2.0をもとにしたものである。国際的には、圧倒的多数の携帯電話は、OMAの仕様をもとにした実装をしているのが現実である。 なお、写メール、i-shotなどの日本発のピクチャーメール規格は、国際標準となることは出来なかった。業界標準のマルチメディア携帯メール規格は、MMS(Multimedia Messaging Service)と呼ばれるもので、これも、 WAP Forumが作った技術規格である。
[編集] プロトコル設計での教訓
WAP プロトコル設計の妥当性に対しては、その発足時から、論争の元になっていた。すなわち、WAP 1.xのプロトコルは、より低速で遅延性の高い携帯電話ネットワークの最適化したものという意図のもと、WTP(ワイヤレストランスポートプロトコル)、WSP(ワイヤレスセッションプロトコル)、WTLS(ワイヤレストランスポートレイヤーセキュリティ)などが、IP層の上位にのせられることになった。これらのプロトコルは、携帯電話の世界でしか使われず、また、TCP/IPの対応するプロトコルと比べるとかなり複雑なものであって、その効果と存在理由について、おもにインターネット側から、多くの批判がなされてきた。
WAP 2.0で、WAP自体が、トランスポートプロトコルとして、TCPを併記する形で採用するに及んで、最終的に、この論争には、終止符が付いたといえるであろう。WAP 2.0でのTCP採用時には、有線と無線をproxy serverで分けるという考えの元、wireless profiled TCPという概念もあわせて採用された。