いすゞ・キュービック
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キュービックはかつていすゞ自動車が製造、販売していた大型路線バス型の自動車。大型車のキュービックLVと、9m大型車のキュービックLTからなる。1984年に昭和58年の排出ガス規制に対応し、CJM/CQM系をフルモデルチェンジして登場した。
幾度かの改良を経て、2000年5月にエルガへフルモデルチェンジする形で生産終了。
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[編集] 車体
いすゞ指定メーカーの川重車体工業(後にアイ・ケー・コーチに移管、現在のいすゞバス製造)が開発したキュービックボディは特徴的な外観を有す。
前面は特徴的な1枚窓で、左右には独特の三角窓を持ち運転席からの視野拡大を実現している。ワイパーはオーバーラップ式が標準であるが、国鉄バスでは平行連動式ワイパーで導入している。車体はスケルトン構造を採用しているが、外版の接合にリベットを使用している箇所も多い。
日本車ばなれした前面のスタイルは、1971年の発表時に、機能とデザインの調和が高い評価を受けた、フランスのベルリエ・PR100(後のルノーV.I.・PR100)が元になっている。
なお、登場時はLVのみで、LTは少し遅れて1985年から架装された。このため、LTの最初期に製造されたもので、川重車体工業を架装した場合、K-EDM430と同じ、モノコックボディーが架装された。
その後、1990年にシャーシの平成元年排出ガス規制(U-)適合に併せて、マイナーチェンジが行なわれた。特徴的な前面はそのままに、車体のリベットレス化、リアの形状変更などの変更が行なわれた。 1995年の平成6年排出ガス規制(KC-)適合の際にもマイナーチェンジが実施され、窓周りの構造が変化している。
なおいすゞLV(路線)系は指定メーカーの以外の車体架装例が多い。富士重工架装例は関東・東海を中心に多くが見られる。この場合、1988年(LTとLVの一部は1990年)までは15型(5Eまたは5B)、その後は17型(7Eまたは7B)を架装する。また西日本車体架装例も関西、九州を中心に西日本で見られる。こちらは1996年まで58MC、それ以降が96MCとなる。但し、LVのみでLTへの架装例はない。1986年~1988年の製作車に限り北村製作所によるスケルトンボディー架装例も存在するが、これは新潟交通がP-LV314Qに架装した100台と、頸城自動車がP-LT312Jに架装した1台しかない(山形交通にはモノコックボディーを架装したLTを納入している)。
なお、いすゞバス製造がいすゞ自動車の100パーセント出資になった1996年以降、富士重工の架装例は激減した。このため、1998年以降の同社架装車両は全て改造型式扱いとなった。
末期には、前面窓にエルガに近い曲面ガラス2枚窓を用いたものがオプションで加わった。バス愛好家の間では「合の子仕様ボデー」と呼ばれた(なお、本項での「合の子」記述に差別的意図はない)。東武バス、静岡鉄道(しずてつジャストライン)、仙台市交通局、伊丹市交通局などに投入された。
3ドア車 京成バス KC-LV380N |
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富士重工架装車(5E) 京成電鉄 |
富士重工架装車(7E) 三重交通 |
西工架装車 西日本鉄道 |
曲面ガラス2枚窓の例 仙台市営バス |
[編集] 設定車種
当初ツーステップのみであったが、1992年に超低床車(ワンステップ)U-LV870Lを追加し低床化が始まる。1998年にノンステップバスLV832系が登場する。低床車については下記参照。
P-LV/U-LV系のエンジンは水平式直列6気筒で、高出力エンジン6RB2型はCQM/CQA系のエンジンをそのまま搭載。 KC-LV系のエンジンは、排ガス規制対応のため路線バスでは珍しいV形8気筒の8PE1型で高出力エンジンはチューニングで対応。
1)LV
- エンジン
- P-LV系
- 6QA2型(220ps) P-LV214/P-LV314系
- 6RB2型(275ps) P-LV218/P-LV318系
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- U-LV系
- 6QB2型(230ps) U-LV224/U-LV324系
- 6RB2型(275ps) U-LV218/U-LV318系
- 8PD1型(240ps) U-LV870L(ワンステップ)
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- KC-LV系
- 8PE1-S型(285ps) KC-LV280/380/880系
- 8PE1-N型(240ps)
- 6HE1-TCN型(230ps) LV832系(ノンステップ)
- KC-LV系はLV832系を除きエンジンの違いは型式に影響しない
- ホイルベース
- P-LV/U-LV系(U-LV870Lを除く)
- K尺 4.7m
- L尺 5.0m
- M尺 5.2m
- N尺 5.5m
- Q尺 6.0m(U-LVでは、自家用のみの設定。路線は改造扱い)
- 5種類と他社の大型に比べ多めの設定。
- K尺にはショートフロントオーバーハング車があり、車体長は6種類になる。
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- U-LV870L、KC-LV系
- L尺 4.8m
- M尺 5.3m
- Q尺 5.8m
- KC-LV系からホイルベースは3種類になる。
- サスペンション
- 型式の先頭の数字が2ならエアサス、3の場合はリーフサス(板バネ)。超低床は8。
2)LT
- エンジン
- P-LT系
- 6BG1
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- U-LT系
- 6HE1
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- KC-LT系
- 6HH1
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- KK(KL)-LT系
- 6HH1
- ホイルベース
- 4.3m
- サスペンション
- 型式の先頭の数字が2ならエアサス、3の場合はリーフサス(板バネ)。
[編集] ワンステップバス
1991年に東京都交通局向けのワンステップ超低床車が試作車として登場する。後部までワンステップ低床で、グライドスライドドアの3扉を採用した。構造的には後のKC-LV系に用いられるV8エンジンを初めて搭載し、車軸の位置を下げることにより低床化を実現している。
1992年には正式に型式を取得、U-LV870Lとなる。ドア配置は前中扉になり、中ドアには車いす用のリフトが取り付けられた。東京都交通局では「リフト付き超低床バス」と呼ばれる。 しかし、特注の高価な車両のため、同局以外の導入例は、路線用では大阪市交通局の3両に留まっている。こちらは前後ドアを採用し、前扉にリフトがとりつけられている。 1995年には、平成6年排出ガス規制に適合しKC-LV880Lとなったが、下記の京急型ワンステップバスが普及したため、僅か5台の生産で、同年度で製造は中止された。
一方、京急型ワンステップバスは1988年に京浜急行電鉄(現在の京浜急行バス)が日野自動車と共同開発したワンステップバスが起源である。安価なワンステップバスを目指し、従来のツーステップバス(都市型低床車)をベースとし、前中扉間の床を下げてワンステップ構造とした。中ドアよりも後部は1段上げ、後輪車軸などは通常のツーステップバスと同じ物を用いる。 新規開発部分は前輪アクスルのみとなり、安価にワンステップバスが製造できた。現在のワンステップバスは基本的にこの京急型ワンステップバスに準じる。
いすゞキュービックの京急型ワンステップバスは1993年に、富士重工製車体は1994年に登場した。当初はすべて改造扱いで京浜急行バス、川崎市交通局、東武鉄道(現在の東武バスセントラル)、秋田市交通局、関西園のごく一部の事業者のみの投入であったが1997年に正式にカタログに掲載され、一般に発売された。また、この時に西日本車体工業製のワンステップバスも追加された。
[編集] ノンステップバス
キュービックのノンステップバスは1997年のモーターショーで発表し、翌1998年にKC-LV832L(N)型として一般に発売された。エンジンは中型車用エンジンに過給器を取り付けた6HE1-TCN型を最車体後部に横置き垂直に搭載、トランスミッションはドイツ・ZF製AT "ECOMAT"、アクスルはハンガリー・ラーバ製を採用した。この組み合わせはモデルチェンジ後のエルガtype-Bにほぼ継承された。
またごく少数だが、西日本車体工業製の車体を架装した例があり、大阪市交通局と京都市交通局に納入された。
1999年には高圧ガス保安法の改定でCNG自動車のガスボンベに軽量素材が使用できるようになったことを受けて、日産ディーゼルとほぼ同時にCNGノンステップバスも登場した。屋根に150リットルのアルミライナー製ガスボンベを5基搭載、バリアフリー化と低公害化を両立した功労車となった。東京都交通局(S-E400,R-F443・444)、横浜市交通局(9-1530~1534)、名古屋市交通局(NS-7)、国際興業(3901)などに納入。