イサム・ノグチ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イサム・ノグチ(Isamu Noguchi、日本名:野口 勇、1904年11月17日 - 1988年12月30日)は、アメリカ合衆国ロサンゼルス生まれの日系アメリカ人。彫刻家、画家、インテリアデザイナー、造園家、舞台芸術家。
父は日本の詩人・野口米次郎、母はアメリカの作家・レオニー・ギルマー(Leonie Gilmour)。
目次 |
[編集] 略歴
1906年、家族とともに日本へ移住し、2歳から13歳までを東京で暮らし、横浜のインターナショナルスクール、セント・ジョセフ・インターナショナル・カレッジに学ぶ。
1918年、母の意志でインディアナ州ローリング・プレーリーの学校に送られた。その後コロンビア大学医学部に入学。ニューヨークで野口英世博士に会った時、芸術家になれと助言されたことから19歳から彫刻に専念する。在学中にレオナルド・ダ・ヴィンチ美術学校で彫刻を学んだ。
1927年、グッゲンハイム奨学金を取得し、パリに留学。2年間、ロダンの弟子である彫刻家コンスタンティン・ブランクーシに師事し、1929年にニューヨークで最初の個展を開いた。
1941年、第二次世界大戦勃発に伴い、日系人の強制収容が行われた際に、自ら志願して強制収容所に拘留された。しかし、アメリカ人とのハーフということで、アメリカのスパイとの噂がたち、日本人から冷遇され、今度は自ら出所を希望するが、またも日本人のハーフとのことで出所はできなかった。彼は後に芸術家仲間フランク・ロイド・ライトらの嘆願書により釈放され、その後はニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにアトリエを構えた。
1947年、ジョージ・ネルソンの依頼で、「ノグチ・テーブル」をデザイン・製作するなどインテリアデザインの作品に手を染め、2年後から岐阜ちょうちんをモチーフにした「あかり(Akari)」シリーズのデザインを開始。また北大路魯山人のもとで陶器彫刻を製作した。
1951年、山口淑子(李香蘭)と結婚。鎌倉の魯山人の邸宅敷地内にアトリエと住まいを構えたが、1958年に離婚。
1952年には広島平和記念公園のモニュメント(慰霊碑)にノグチのデザインが選ばれたが、原爆を落としたアメリカ人であるとの理由で却下された。しかし彼のデザインの一部は、丹下健三により設計された平和公園の中心部に位置する「原爆慰霊碑」の中に色濃く生かされている(なお、丹下はこのプロジェクトにノグチの起用を強く推した当人であった)。また平和公園の東西両端に位置する平和大橋・東平和大橋のデザインはノグチの手になるものである。彼は後年、アメリカ大統領の慰霊碑をデザインしたこともあるが、こちらの方は日本人であるとの理由で却下されている。
1969年、ユネスコ庭園に香川県牟礼町(現・高松市)の花崗岩を使ったことがきっかけで牟礼町にアトリエを構え、「あかり(Akari)」シリーズを発表。ここを日本での製作本拠とし、アメリカでの本拠・ニューヨークとの往来をしながら作品製作を行う。
1984年、ニューヨークのロング・アイランド・シティのイサム・ノグチ庭園美術館が一般公開。また1987年にはロナルド・レーガン大統領からアメリカ国民芸術勲章を授与された。 1988年には 勲三等瑞宝章を受け、札幌・モエレ沼公園の計画にも取り組んでいたが同年冬、肺炎によりニューヨークで死去した。享年84。
[編集] エピソード
- 日本での小学校時代、工作が得意だった。友達と馴染めず転校を繰り返していた。学校には行かず、茅ヶ崎の木工細工の職人の元で修行をしていた時期があった。
- 野口英世の元に、ひょっとしたら自分の父ではないかと思ったイサムが会いに行った逸話がある。実際の親子関係は無かった。
- ノグチの彫刻の原点は京都の禅寺である。20代から龍安寺や天龍寺の石庭を何度も訪れ、自然石は彫刻だという哲学に辿りついた。
- 2006年、群馬県庁の敷地内にあるオブジェに、「この作品は『ブラック・スライドマントラ』のパクリである」という旨の落書きがされたことが話題となった。
[編集] 作品
- ブラック・スライドマントラ イサム・ノグチ作の奇妙によじれた形のすべり台。(札幌市中央区大通西八丁目大通公園)これが世界的彫刻家の芸術であることなど露知らぬ子供たちの歓声が響く。
- モエレ沼公園 公園全体を一つの彫刻に見立てた氏の「最大」の作品。(札幌市東区丘珠町)1988年に構想を開始し、2004年に完成予定であったが、やや遅れて2005年7月完成。2002年度グッドデザイン大賞受賞。
- 「あかり(Akari)」シリーズ 日本の提灯に触発されて制作された「光の彫刻」。現在でも電気店などで手ごろな価格で入手することができる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Isamu Noguchi Garden Museum(英語。Noguchi.org, Long Island City, NY)
- イサム・ノグチ庭園美術館 (香川県高松市牟礼町牟礼。IsamuNoguchi.or.jp)
- The Lillie and Hugh Roy Cullen Sculpture Garden at the Museum of Fine Arts (英語。Houston, TX)
- ISAMU NOGUCHI PRIVATE TOUR(日本語)
- モエレ沼公園(札幌市東区丘珠町)
カテゴリ: アメリカ合衆国の彫刻家 | 日本の彫刻家 | 家具デザイナー | カリフォルニア州の人物 | 日系アメリカ人の人物 | 1904年生 | 1988年没