グッバイ、レーニン!
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『グッバイ、レーニン!』 (Good Bye Lenin!) は2002年製作、2003年2月に公開されたドイツの映画である。監督はヴォルフガング・ベッカー、脚本はベルント・リヒテンベルクとヴォルフガング・ベッカーの共同、音楽は『アメリ』で知られるヤン・ティルセンである。
本国ドイツで大ヒットし、ドイツ歴代興行記録を更新した。 また第53回(2003年)ベルリン国際映画祭の最優秀ヨーロッパ映画賞(「嘆きの天使賞」)ほかドイツ内外の様々な映画賞を受賞した。
日本ではギャガ・コミュニケーションズの配給で2004年2月に公開された。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] キャスト
注・(役名):(キャスト名)
- アレクサンダー・ケルナー(アレックス)(主人公。子ども時代は宇宙飛行士になるのが夢だった。成人後はテレビ修理工として働いていたが、ベルリンの壁崩壊で失職してしまう):ダニエル・ブリュール
- クリスティアーネ・ケルナー(アレックスの母):カトリーン・ザース
- ララ(ソ連からの交換看護学生。ロシア人。アレックスの恋人となる):チュルパン・ハマートヴァ
- アリアネ・ケルナー(アレックスの姉。学生結婚の末離婚したシングルマザー。大学で経済学を学んでいたが、ベルリンの壁崩壊後に中退してバーガーキングで働き出す):マリア・シモン
- デニス・ドマシュケ(アレックスの再就職した職場の同僚で「明日のキューブリック」を目指す映画マニア。アレックスを助けるためにニセのニュース映像を作成する):フロリアン・ルーカス
- ライナー(アリアネの新しい恋人。アリアネの就職したバーガーキングのマネージャー。インド文化オタク):アレクサンダー・ベイヤー
- ローベルト・ケルナー(アレックスの父):ブルクハルト・クラウスナー
[編集] ストーリー
東ドイツの首都ベルリンで暮らす主人公のアレックスとその家族。母のクリスティアーネは夫のローベルトが西ドイツに亡命して以来、熱烈に社会主義に傾倒していた。 そんな家庭環境の中、1989年10月7日(東ドイツの建国記念日)の夜にアレックスは内緒で反体制デモに参加し、警官ともみあっていた。それを偶然通りがかったクリスティアーネが目撃してショックで心臓発作を起こして倒れ、昏睡状態になってしまう。
彼女は二度と目が覚めないかと思われたが、8ヶ月後に奇跡的に目を覚ます。しかし、その時にはすでにベルリンの壁は崩壊し、東ドイツから社会主義体制は消え去り、東西統一も時間の問題となっていた。「もう一度大きなショックを受ければ命の保障は無い」と医師から宣告されたアレックスは母の命を守るため東ドイツの社会主義体制が何一つ変わっていないような必死の演技を周囲の協力を得て行ない続ける。だが、道路は西側の車が頻繁に通行し、ビルの壁には「コカ・コーラ」の垂れ幕が掛けられ、国営ストアは西側資本のスーパーマーケットに変貌していく。そして東西統一の現実は着実に近づいてくる…。
そんなある日、アレックスは子どものころ憧れていた宇宙飛行士のジークムント・イェーンとそっくりのタクシー運転手と知り合う。母親の命がもはや残り少ないと知ったアレックスは映画マニアの友人デニスの協力を得て「エーリッヒ・ホーネッカーが退陣してイェーンが新たな国家評議会議長に就任し、資本主義に行き詰まった西ドイツを東ドイツが吸収合併する」というニセのニュース映像を作成する。既にララから密かに真実を知らされていたクリスティアーネは、その映像を見ながら、必死に頑張ってくれていた心優しき息子に感激しつつ、安らかに永遠の眠りについたのだった。
[編集] 日本公開版の関係者
- 字幕版翻訳:石田泰子
- 日本語吹替版翻訳:郡山奈美子・浅野倫子
[編集] 日本語吹替版の声優
[編集] 関連人物・関連用語
- ジークムント・イェーン:実在の東ドイツの宇宙飛行士。物語中で重要な役割を果たす。日本公開時の字幕では「S・イェーン」と表記されており、DVD版の吹替えやノヴェライズ版でも「ジクムント」と発音あるいは表記されているが「ジークムント」が原語の発音にもっとも近いと思われる。
- ザンドマン(砂男):旧東ドイツで製作されていたパペット・アニメーション作品。物語中で何度か登場する。夜更かしする子供に睡眠を促す少年の妖精の数々の冒険を描いた作品で、東西ドイツ統一後も命脈を保ち続けている数少ない旧東ドイツ産文化の一つ・象徴。
- 東ドイツマルク:東ドイツの通貨。劇中では東西統一後にドイツマルクに交換されることになったが母が大量の東ドイツマルクを隠していた場所を病気のショックで忘れてしまい母が隠し場所を思い出したときにはすでに交換期限が過ぎてしまった後であり紙幣がただの紙切れとなってしまった。
- モカフィックス・ゴールド:旧東ドイツの代表的なコーヒー・ブランド。「シュプレーヴァルト・グルケン」ブランドのピクルス空き瓶同様、このコーヒー・ブランドのパッケージも探す事になる。
- インテル・コスモス計画(西欧では「インター・コスモス計画」と呼称):1973年(昭和48年)7月13日に調印され、1977年(昭和52年)3月25日に発効。正式名称は「平和目的のための宇宙空間の探査及び利用に関する協定」。旧ソビエトを中心に、締約国諸国(ブルガリア、ハンガリー、旧東ドイツ、キューバ、モンゴル人民共和国、ポーランド、ルーマニア)により結ばれた共同宇宙開発プロジェクト。 計画の詳細。
- 作中に登場したジークムント・イェーンは、東ドイツ代表の宇宙飛行士として選抜され、参加。
- オスタルギー:ドイツ語で「東」を意味する「オスト」と「郷愁」を意味する「ノスタルギー」を掛け合わせた造語。東西ドイツ統一後に旧東地区出身者の「昔だってそんなに悪くなかった」との感傷から作られた概念。本作品自体がオスタルギーに満ちているとも言える。
- トラバント:旧東ドイツ製の小型乗用車。
[編集] 入手可能なメディア
- DVD『グッバイ、レーニン!』 映像特典として未公開シーンや監督のインタビューが収録されている。発売元はカルチュア・パブリッシャーズ、販売元は日本ソフトサービス。
- ノヴェライズ版『グッバイ、レーニン!』 入間眞・編訳:竹書房文庫より2004年2月21日初版発行。巻頭に関連年表が付いている。