サタン
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サタンとは
- ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の悪魔。本項目にて詳述。
- タイ王国の通貨であるバーツの補助単位。
- ソビエト連邦が開発したICBMのSS-18 Satan。サタン (ミサイル)を参照。
- 『キン肉マン』及び『キン肉マンII世』に登場するキャラクター。
- 『ドラゴンボール』に登場するキャラクター。ミスター・サタンを参照
- 岸本聖史の漫画作品。666~サタン~を参照
サタン(Satan)とはユダヤ教とキリスト教、イスラム教における敵対者、狭義には悪魔を指す。「敵」を意味するヘブライ語satanまたはアラム語satanaに由来する(これらの単語は「反逆」と言う意味も有する)。一説にはエジプト神話の悪神セトより、「セトの犬(セト=アン)」が変化したとも言われる。アラビア語では、シャイターン(شيطان)と綴られる。本来サタンは、明確に言えば「妨げる者」との意味合いだったが、敵対者との意味から悪魔との意味に変化したと考えられる。キリストも敵対者との意味合いで使わず障害として使っていた。
ユダヤ人にとっての悪魔は、神に逆らったみ使いであった。聖書には旧約、新約を含めて、悪魔は「敵」として出てくる。エゼキエル28章やマタイ4章9節によると、悪魔はエデンの園にいる油そそがれたケルブであったが、美しさのゆえに傲慢になり、自らが崇拝されたいと思い、神に反逆した。彼はミカエルとモーセの体について論じ合った。(ゼカリヤ3:2;ユダ9)彼はこの世の神として人類を配下に置いている。(2コリ4:4;1ヨハ5:19)黙示録12章9節によると、彼は定めの時にミカエルに天から投げ落とされ、地に災いをもたらした。黙示録20章によると、やがて彼は千年の間縛られ、そののち獄から解き放たれたが、天から火が下って彼とその使いたちをむさぼった。
キリスト教の説教などでは、キリストによる救いの対角にある存在として、一種の根源悪として悪魔を引き合いに出してくる(ただし根源悪といっても、悪魔が悪へ向けて創造されたかどうかには議論がある。正統教義では一般に被造物である悪魔が自由意志により離反したと考えるが、予定説のなかには悪魔は救済されえない存在として定められたとするものもある。なお悪魔も含めてすべての被造物が救済されるという「万人救済説」は異端としてしりぞけられており、一般には悪魔は最後の審判で滅ぼされる存在であると信じられている。
キリスト教伝承における悪魔には、キリスト教がローマ帝国で公認され、ガリアに伝播して、そこにあった土着の神、森や自然の驚異の一端を象徴する信仰対象などと混合してさらに生まれてきたものもあるのではないかと考えられている。 ゴシック建築の教会、たとえばパリのノートルダム大聖堂などでは、しばしば上部にガーゴイルと呼ばれる各種の悪魔、悪霊、幻獣の石造が設置されている。なおこれはたんなる装飾ではなく、雨どいの機能を持たされている。
11月から2月末まで、フランス、ドイツなどでは、冬の到来からそのさなか、そして春への期待を込めてのお祭りがある。イングランド発祥のハロウィン、キリスト教の祭日であるクリスマス、公現祭、カーニバル(謝肉祭)、復活祭などであるが、これらのお祭りの中に登場する仮装のキャラクタなどには、悪魔と同類の起源を予想させるような魔女、森の男、その他がいろいろと登場する。
日本で特にサタン(Satan)と呼ぶ場合、悪魔の中でも上位の存在を指す言葉として、半ば固有名詞的に用いられる。その際はしばしばルシフェルと混同されることもあり、また他の著名な悪魔(ベルゼブブ、メフィストフェレスなど)を含むこともある。これらの用法には、ルネサンス以降の小説や戯曲で取り上げられたことによる影響もある。