ゼッケン (競馬)
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競馬におけるゼッケンとは、競走馬を見分けるために鞍の上に装着する道具である。使用目的によって様々な種類のゼッケンが存在する。
- ※ここでは中央競馬におけるゼッケンについて説明する。
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[編集] 競走ゼッケン
[編集] 仕様
- 縦510mm・横695mmの台形でポリエステル100%の不織布(ふしょくふ)を素材としている。主に競馬場から回収しているペットボトルをリサイクルした再生繊維が使用されている。
- 文字は転写シートとなっており、ゼッケンには、馬番号・馬名・レース番号・レース名等が貼り付けられる。また、ダービーのゼッケンには縁に金色の刺繍が入る。ジャパンカップ・ジャパンカップダートの場合はレース名ではなく英文馬名が記載される。
[編集] 歴史
もともと、ゼッケンの書体や寸法に統一的な規格は無く、競馬場毎で異なっていた。これは、元々の競馬倶楽部時代の名残と考えられるが、戦後の東京競馬場や中山競馬場では、東京競馬場で戦前から使用されていた、数字がやや前方に傾いた形のもので統一されていた様である。また、天皇賞については、戦前の日本競馬会時代より、紫紺地に金色の数字のゼッケンを使用していた。なお、生地は帆布製で、数字は縫い付けられていた。
1965年に、競馬場毎に異なっていたゼッケンの規格が統一された。但し、数字などの細かな部分には違いが存在しており、また例外的に、春秋の天皇賞(1971年まで)及び菊花賞(1970年まで)については、規格統一以前のゼッケンが継続して使用された。
紫紺地に金色(のち黄色)の文字の天皇賞用ゼッケンは、ゼッケンの規格統一後は重賞用ゼッケンとして使用される様になったが、関東では、重賞競走でも八大競走等の格の高いレースに限定されていたのに対し、関西では重賞競走の殆どに使用された他、桜花賞では緑地に桃色の数字のゼッケンが、また天皇賞(春)では、青地に桃色の数字のゼッケンを使用する等、有る程度は競馬場の裁量に任されていた。これは、1989年の重賞競走用ゼッケンに馬名が入り、かつレースのグレード毎に色が分けられる様になるまで続いた。
1983年、ジャパンカップにて、馬名入りゼッケンが始めて導入された。但しこれは、外国馬が出走する事による特別措置で、馬名もゼッケンの下の方に小さく刺繍されたものであった。1985年の有馬記念にも馬名入りゼッケンが使用されたが、、この時点では、本格採用には至らなかった。
1986年、京都競馬場の重賞用ゼッケンが変更され、数字の下に"KYOTO"という文字が並ぶ様になるとともに、G1競走については、競走名が数字の下に表示される様になった。但しこの時点では、文字の規格や生地は従来のままであった。
1987年、一部の重賞競走より馬名入りゼッケンが使用された。素材は化学繊維製となり、馬番及び馬名は、印刷により表記される様になった。この時点では、生地は紺色か黒色で、馬番・馬名は黄色の文字で記載されるのが通例であったが、オークスの様に、馬名のみ桃色で書かれたものや、重賞競走ながら、白地に黒の馬番、馬名が赤文字で記載されたゼッケンが使われる等、試行錯誤の段階であった。
1989年より、全ての重賞競走で馬名入りゼッケンが使用される様になった。この時、グレードレースの格に応じて生地の色を変え、文字の色も白が基本となる様に仕様が統一された。
1990年秋より、全ての特別競走で馬名入りゼッケンの使用を開始し、1991年の正月開催より、遂にすべての競走で馬名入りゼッケンが採用され、以後は馬名の字体に多少の仕様変更があるものの、現在に至っている。なお、以後の仕様変更は以下の通り。
- 1997年 ゼッケン生地が、化学繊維からアクリル製の不織布へ変更される(この頃にレース番号も表記開始)。
- 2002年 ジャパンカップとジャパンカップダートにおいて、馬名の横に調教国の国旗が追加される。以降も継続。
- 2004年 JRA50周年記念のメモリアルレースで、50周年記念ロゴが追加される。(同年のみ)
- 2004年 若手騎手限定競走用のゼッケンが採用された。但し当初のものは、オレンジ色の生地に黒色の文字ありで、派手で見づらいとの指摘があったため、同年秋に、黒色の生地に黄文字に変更される。
- 2004年 ゼッケン素材がアクリル製からポリエステル製へ変更される。
[編集] ゼッケンの色と特徴
レースの種類 | ゼッケンの色 | 文字の色 | ゼッケン右側の記載 | ゼッケン左側の記載 | レース番号の表記 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
日本ダービー | 白 | 黒 | カタカナ馬名 | 第00回日本ダービー | 10R | 金色の刺繍 |
菊花賞・桜花賞 | 紫紺 | 橙 | カタカナ馬名 | カタカナ馬名 | 11R | |
皐月賞 | 紫紺 | 黄 | カタカナ馬名 | カタカナ馬名 | 皐月 | |
オークス | 紫紺 | 橙 | カタカナ馬名 | 第00回オークス | 11R | |
有馬記念 | 紫紺 | 白 | カタカナ馬名 | カタカナ馬名 | 有馬 | |
ジャパンカップ | 紫紺 | 白 | 国旗とカタカナ馬名 | 英表記馬名と国旗 | 10R | |
ジャパンカップダート | 紫紺 | 白 | 国旗とカタカナ馬名 | 英表記馬名と国旗 | 11R | |
スプリンターズステークス・安田記念 | 紫紺 | 白 | カタカナ馬名 | 英表記馬名 | 11R | |
天皇賞 春 | 紫紺 | 白 | 英表記馬名 | カタカナ馬名 | 11R | |
天皇賞 秋 | 紫紺 | 白 | カタカナ馬名 | 第00回天皇賞 秋 | 11R | |
NHKマイルカップ | 紫紺 | 白 | カタカナ馬名 | 第00回NHKマイルカップ | 11R | |
フェブラリーステークス | 紫紺 | 白 | カタカナ馬名 | 第00回フェブラリーステークス | 11R | |
その他のGI競走 | 紫紺 | 白 | カタカナ馬名 | カタカナ馬名 | 11R | |
GII競走 | 赤紫 | 白 | カタカナ馬名 | カタカナ馬名 | 11R | |
GIII競走 | 緑 | 白 | カタカナ馬名 | カタカナ馬名 | 11R | |
特別競走 | 黒 | 白 | カタカナ馬名 | カタカナ馬名 | 7R~12R | |
ワールドスーパージョッキーズシリーズ | 黒 | 白 | 騎手名 | カタカナ馬名 | 7R~12R | |
ワールドスーパージョッキーズシリーズ(2001年のみ) | 水色 | 黒 | 騎手名 | カタカナ馬名 | 7R~12R | |
一般競走 | 白 | 黒 | カタカナ馬名 | カタカナ馬名 | 1R~12R | |
若手騎手限定競走(2004年秋以降) | 黒 | 黄 | カタカナ馬名 | カタカナ馬名 | 1R~12R | |
若手騎手限定競走(2004年初め~秋) | 橙 | 黒 | カタカナ馬名 | カタカナ馬名 | 1R~12R |
※GI競走については2006年のもの
[編集] 調教ゼッケン
- 美浦トレーニングセンター・栗東トレーニングセンター・競馬学校・競馬場の各施設において、調教時に装着が義務付けられているゼッケンである。
生地は帆布製で番号は縫いつけられており、以前の馬名なし時代の競走用ゼッケンと同じである。
- 競走馬が登録された段階で最大4桁の固有の番号が割り当てられるが、馬名は入らない。抹消された馬の番号は年内には使用できないため、翌年初めには五十音順に再度割り当てられる。
- 後述する特殊調教ゼッケンを除き、馬の年齢によって色分けされている。
[編集] ゼッケンの色
年齢 | ゼッケンの色 | 文字の色 |
---|---|---|
3歳以上 | 黒 | 白 |
4歳以上(美浦) | 黄 | 黒 |
4歳以上(栗東) | 白 | 黒 |
2歳(美浦) | 緑 | 橙 |
2歳(栗東) | 緑 | 白 |
[編集] 特殊調教ゼッケン
- GI及びGIIのうちトライアル競走のみ使用される調教用ゼッケン。番号は通常使用する番号と異なる上、ゼッケンに馬名が入る。
- 特別登録したときからレースまでの一定期間に限って使い、その後通常のゼッケンに戻る。
[編集] ゼッケンの色
年齢 | ゼッケンの色 | 文字の色 |
---|---|---|
牝馬限定競走 | 海老 | 黄 |
上記以外 | 紫紺 | 黄 |
[編集] レプリカゼッケン
- コレクション用としてサイズ・素材共に同一のゼッケンを、GI優勝馬のゼッケンに限り、中央競馬ピーアール・センターの通販サイトにて発売している。
[編集] 使用済みゼッケン
- 競走で使用されたゼッケンは基本的には処分・リサイクルされるが、関係者等が持ち帰ることは可能である。このため牧場などに展示されている例も散見される。