デロリアン
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デロリアン (Delorean) はアメリカ合衆国にかつて存在した自動車製造会社である。また同社で製造された自動車『DMC-12』の通称としても用いられる。
本記事では、企業としてのデロリアン社と自動車モデルのDMC-12の両方について記す。
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[編集] 企業概要
1975年、GMの副社長であったジョン・ザッカリー・デロリアンが、GMを辞職し独立して自ら設立したのがデロリアン社である。本社はミシガン州に、製造工場はイギリスの北アイルランドにあった。
会社の正式な名称は『デロリアン・モーター・カンパニー (Delorean Motor Company Ltd./DMC)』。1983年に解散(詳細は後述)。
[編集] DMC-12
長い開発期間を経て1981年に登場した同社唯一のモデル『DMC-12』は、イタルデザイン社のジョルジェット・ジュジャーロがデザインし(そのため、ロータス・エスプリやいすゞ・ピアッツァに似ているという人もいる)、ロータス社がメカニック設計を請け負った。開発は非常に難航し、ロータス創業者コーリン・チャップマンの寿命を縮める一因となったとも言われている。
バックボーンフレーム上に強化プラスチックボディを載せる手法はロータスが得意とした構造だが、メンテナンスフリーをも狙って外部全体を無塗装ステンレスで覆ったことが極めてユニークである。銀色に光るヘアライン仕上げのステンレスが剥き出しの外装と、近未来的なガルウイングドア装備は見る者に衝撃を与え、後年まで同社のイメージを決定づける存在となった。なお、ノーマル時の車高(ロードクリアランス)が高いのは、当時の基準におけるヘッドライトの高さを満たすためであった。
しかし、後部に搭載されたフランス製のエンジン(「PRV」V型6気筒SOHC2849cc。プジョー・ルノー・ボルボが乗用車用に共同開発した量産品) は、公称130HPに過ぎず、1,288kgの車重に比して非力で、さして速い車ではなかった。外見からイメージされるほどのスーパーカー的な車ではなく、むしろ個性的なスタイルのスペシャリティ・クーペというのが正確な捉え方である。
初年度は約6500台を販売するなど売り上げは好調で、ターボチャージャー搭載や4枚ガルウイング・ドア4座仕様追加等の計画もあったが、完成度の低さが故に、翌年以降たちまち売り上げが不調になっていった。また、(アイルランドへの工場誘致の条件として資金を供与していた)イギリスからの出資が停止された。後にエンロン社の会計監査も行ったアーサー・アンダーセン社が、デロリアン社の資金を社長ジョン・デロリアンが私的に流用するなどしたことを黙認していたことが、マスコミの調査などで明らかになっている。更に1983年に、社長のジョン・デロリアンが麻薬所持容疑で逮捕されるスキャンダルが発生したことにより、会社は資金繰りが立ち行かなくなり倒産してしまった(のちジョン・デロリアンの麻薬嫌疑は、裁判の結果無罪が確定した)。[1][2]
生産期間中には風変わりなバージョンも製造された。1981年モデルの最後を締めくくっているのが2台の純金パネル装備車で、2005年現在もネバダ州リノの National Auto Museum とテキサス州の Snyder Bank に展示されている。(1台125,000ドル以上という)。なお、一番最後に製造された車も純金パネルだったが、これは宝くじのような富くじ方式で一般人の手に渡った。
最終生産車が作られたのは工場閉鎖後のことで、工場に残っていたパーツ等で1983年12月24日に作られた4台が、一般向け生産の最後となった。最終的に、8,583台が製造されたと見られている。(500台が欠陥品)
なお、ボディのプレス型は倒産後に他社による再生を恐れた人々が海に捨ててしまったため現存せず、再生産が不可能になっている。
日本において、公道を走らせるため車検を取得した場合、自動車検査証の社名表記は 「デロリアン」では無く「デローリアン」になる。
[編集] 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』におけるDMC-12
デロリアンDMC-12が世界的に有名になったのは、1985年に公開されたSFアドベンチャー映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場したことが大きい。劇中ではタイムマシンに改造された車として登場した。ガルウイングドアを装備していたことがタイムマシンのベースに採用された大きな理由だと監督は語っている(劇中ではエメット・ブラウン博士がデロリアンを選んだ理由として「かっこいい」ことなどを挙げている)。
改造には3台のデロリアンが用意された。1985年時点では既にメーカー倒産で生産されていなかった車種にも関わらず、劇中ではマイケル・J・フォックス演じる主人公マーティらがよく知る車として登場しており、当時のアメリカでの認知度の高さが伺える。映画は大ヒットし、デロリアンDMC-12は世界的に有名になった。なお、3部作で計7台のデロリアンが使われており、うち1台はスティーヴン・スピルバーグが所有している。
[編集] 劇中での機能・設定
劇中に登場するデロリアンはクリストファー・ロイド演じるエメット・ブラウン博士によりタイムトラベルを可能にする「次元転移装置」や「タイムサーキット」が取り付けられていることを筆頭に、電子表示のスピードメーターが増設されるなど、多くの改造が施されている。ブラウン博士の愛犬アインシュタインが搭乗した際、外部コントローラーで操作をしていた事から無線操縦装置も取り付けられていると思われる。また、前輪をロックするための改造(ラインロック)も施されている。タイムトラベル先は月-日-年-時刻の順でテンキーで入力し指定する。1.21「ジゴワット(ギガワットの脚本家によるミス)」の電力が次元転移装置に与えられ、時速88マイル(約140.8km/h)まで加速した際にタイムトラベルが可能となる。時速88マイルに達するとデロリアンのボディの粒子は分散し再び結合する。時空移動の際には閃光を放ち炎のタイヤ跡を残し、目標時間に突入する時には多少の衝撃を伴う。目標の時間に出現したデロリアンの表面は、素手で触れないほどの超低温で凍っている(後に改良された)。
[編集] Part1
Part1では1.21ジゴワットの電力を得るために核燃料(プルトニウム)を使用している。1955年から1985年へ帰還する際は核燃料が無かったため落雷から1.21ジゴワットの電力を得た。
[編集] Part2
2015年に行った際に、プルトニウムの代わりに生ゴミ等を原子まで分解し核反応を起こし1.21ジゴワットの電力を得る事ができる「ミスター・フュージョン(翻訳時は融合炉などとされていた)」という装置が取り付けられた。また2015年でタイムサーキット(時間設定装置)を日本製のマイクロチップで制御できるようにし、「ホバー・コンバージョン」を装着して空を飛ぶための改造も施す。 しかし、再び赴いた1955年で飛行中に落雷に遭いマイクロチップと飛行回路がショートしタイムトラベルと飛行ができなくなった。
補足だが、劇中ではこのタイプが一番高性能である。そのため、ファンの中では一番人気がある。
[編集] Part3
デロリアンの修理に1955年製の部品を使用。真空管など1950年代の部品がマイクロチップをはじめとする未来の部品の代わりに使用され、新しい装置はデロリアンのボンネットに取り付けられた。タイムトラベルはできるようになったが空を飛ぶ事は2度と無かった。タイヤとホイールも1950年代のものに交換され、さらに未舗装路を走行するため車高を上げた仕様で1885年へタイムトラベル。1885年では燃料タンクに穴が空きガソリンが漏れてしまい自走不能の状態になる。そこで蒸気機関車でデロリアンを押し時速88マイルまで加速するため、線路を走る事ができるよう鉄道用車輪(鉱山のトロッコ用車輪だという説もある)が取り付けられた。しかし1985年に戻ってすぐ、列車に激突されてバラバラになった。このシーンの撮影の際は車のボルトをすべて外したそうである。
[編集] USJ
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアトラクション「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド」には8人乗りの最新型デロリアンが登場する。同アトラクションのスポンサーはトヨタであるが、この8人乗りデロリアンはトヨタ製ではない。
アトラクションの外に展示されているデロリアンは、米国のデロリアン専門店が作成したレプリカであり車体そのものは実際に撮影に使用されたものだという話があるが詳細は不明。パーツが左右同じ、配線がオリジナルと異なる、ミスター・フュージョンが極端に大きい等、映画版と比べてエクステリアに違いがある。
また、これとは別にパークでは自走可能なデロリアンも所有しており、パーク内アトモスフィア・エンターテイメントやパーク外での各地イベントにて使用されている。
[編集] ジョン・デロリアンとDMC-12のその後
これら多くの逸話と映画での活躍によって、デロリアンDMC-12は1980年代を代表するカルトカーとなり、21世紀初頭の現代でも多くの自動車マニアのコレクション対象となっている。倒産後のデロリアン社(DMC社)の設備を取得したKAPAC社(新生DMCと呼ばれることが多い)は、現在もDMC-12のオーナーに修理用パーツを供給し続けており、1台丸ごと組み立てることも可能である。
ジョン・デロリアンは再び新たな車を創造するプランを抱いていたが、残念ながら果たすことなく2005年3月19日に死去された。あるデロリアン愛好者のウェブサイトによると、2ドア・2シーター、60マイル(96km/h)到達まで3.5秒、価格は17500ドル程度と、低価格でありながら非常な高性能を目指していたようである。
[編集] その他
ゲームソフト『グランツーリスモ4』では、チューンナップされたデロリアンが登場する。エクステリアに関してはリアのエンブレム及びナンバープレートの取り付け方法がオリジナルと異なる。馬力が200PSまで上げられており、ゲーム中では限界まで改造すると448PSまで上がる。
また、北海道函館市にある函館出身の人気ロックバンドGLAYの記念館、Art Style of GLAY では、鏡の部屋に半分だけのデロリアンが展示されてあり、観覧客が乗り込むことも可能。これはメンバーであるHISASHIのお気に入りの映画が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』であることと、自身の車好きのためだと推測される(彼は別冊カドカワのGLAY総力特集での対談でもデロリアンについて語っている)。
[編集] 外部リンク
- デロリアンオーナーズクラブジャパンホームページ - 日本のデロリアン所有者・愛好者により結成している団体のウェブサイト