トリニトロトルエン
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トリニトロトルエン | |
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IUPAC名 | 2,4,6-トリニトロトルエン |
別名 | トリニトロトルオール TNT |
分子式 | C7H5N3O6 |
分子量 | 227.1 g/mol |
CAS登録番号 | [118-96-7] |
形状 | 黄色固体 |
密度と相 | 1.65 g/cm3, 固体 |
相対蒸気密度 | 7.85(計算値)(空気 = 1) |
融点 | 80.1 ℃ |
沸点 | 240 ℃(分解) |
発火点 | 475 ℃ |
出典 | 国際化学物質安全性カード |
爆速 | 6,900m/s,仮比重1.60 |
熱量/質量比 | 3,790J/g |
燃焼熱 | 1000J/g |
爆発熱 | 221J/g |
生成ガス容積 | 730L/kg |
鋼板試験猛度 | 5.18 |
トリニトロトルエン (trinitrotoluene, TNT) はトルエンのフェニル基の水素のうち3つをニトロ基で置換した物質で、いくつかの構造異性体があるが、一般にトリニトロトルエンと呼ばれるものは 2,4,6-トリニトロトルエン 2,4,6-trinitrotoluene である。化学式は C7H5N3O6、示性式は C6H2CH3(NO2)3 である。別名、トリニトロトルオール。
目次 |
[編集] 性質
TNT火薬の主成分となる。日本では消防法で危険物第五類の自己反応性物質ニトロ化合物に指定されている。初期火災の場合、水・泡などの水系消火剤で消火する。
燃焼の化学式は以下の通り。
- 2 C7H5N3O6 →3 N2 + 5 H2O + 7 CO + 7 C
[編集] 製造方法
製造方法には1段法、2段法、3段法および連続法がある。
- 1段法は反応が激しく危険であるため実用では用いられていない。
- 2段法は小規模な設備のみで製造できるため実験などで少量を製造するのに用いられる。これは硫酸と硝酸の混酸を使ってトルエンを2段階ニトロ化するものである。
- 3段法、連続法は収率が良く製品純度を高めやすく扱いが容易であるため工業的な大量生産に用いられている。
[編集] 歴史
- 1863年にウイルバンド (Wilbrand) がトルエンを硝硫混合酸を使用して高温でニトロ化することで初めて合成に成功する
- 1891年にドイツで工業的規模での大量生産が開始される
- 1901年にはピクリン酸に代わって主要な爆薬となる
[編集] 法規制
[編集] 日本
火薬類取締法第2条により「火薬類」に指定されているため、製造、所持には法律による制限を受ける。ただし第4条で定めるように理化学上の実験目的で経済産業省令で定める数量以下のものを製造する場合はこの限りでないので、理化学の実験の目的で極少量を製造することは可能である。
「可塑性爆薬に含める物質等を定める告示」(平成9年通商産業省告示第548号)によって 爆発物マーカー「Taggants」となる揮発成分を含めることが法律で義務付けられている。
また爆発物マーカーが義務化する以前の爆薬の販売、贈与を行った場合にはかならず相手の身元を帳簿に記載することを火薬類取締法で義務付けている
[編集] 規格
日本ではJIS K 4813によって等級が定められている
[編集] 備考
核兵器の威力は一般に、同じ爆発力を持つTNT爆薬の重量に換算して表記される。たとえば「20メガトン級の水爆」は20メガトン、つまり2,000万トン分のTNT爆薬と同じ爆発力を持つ事になる。