ニトログリセリン
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ニトログリセリン | |
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IUPAC名 | Propane-1,2,3-triyl trinitrate |
別名 | 三硝酸グリセリン トリニトログリセリン |
分子式 | C3H5N3O9 |
分子量 | 227.09 g/mol |
CAS登録番号 | [55-63-0] |
形状 | 無色または淡黄色の液体 |
密度と相 | 1.13 g/cm3, 液体 |
融点 | 13.2 °C |
SMILES | C(C(CO[N+](=O)[O-])O[N+](=O)[O-])O[N+](=O)[O-] |
ニトログリセリン(三硝酸グリセリン、トリニトログリセリン、nitroglycerin)とは、示性式 C3H5(ONO2)3 と表される有機化合物。グリセリン分子の3つのヒドロキシ基を、硝酸と反応させてエステル化させたもの。これ自身はニトロ化合物ではなく、硝酸エステルである。爆薬、狭心症治療薬として用いられる。 取り扱いがきわめて難しいため、日本においては原体のまま工場から出荷されることはない。
目次 |
[編集] 性質
加熱や摩擦によって爆発するため、爆薬として用いられ、ダイナマイトの原料になる。
[編集] 医薬品
血管拡張作用があるので狭心症の薬になる。これはニトログリセリン製造工場に勤務していた狭心症を患う従業員が、自宅では発作が起きるのに工場では起きないことから発見されたという。体内で加水分解されて生じる硝酸が、さらに還元されて一酸化窒素 (NO) になり、それがグアニル酸シクラーゼを活性化し cGMP の産生を増やす結果、細胞内のCa濃度が低下するため血管平滑筋が弛緩し、血管拡張を起こさせることが判明している。
上記の発見の過程と、一般にはニトロと聞いて爆薬を思い浮かべる人が多いため誤解があるが、 現在医薬品として用いられている物は硝酸イソソルビドなどのニトロ基を持つ硝酸系の薬品が主であり、 ニトログリセリンを使用する場合であっても添加剤を加えて爆発しないように加工されている。 そのため、医薬品のニトロをいくら集めても爆薬にはならないし、医薬品が爆発事故を起こすことはあり得ない。
このような事実にもかかわらず、アメリカなどでは医薬品のニトロも爆薬、兵器として敵対国への輸出を禁止している。
[編集] 爆発性
原液のままでは衝撃と摩擦に対して敏感である。 そのため、アセトン、水などと混ぜて感度を下げるか、ニトロゲル化して取り扱う。
一般的に原液のまま取り扱われるようなことはなく、正しく取り扱っていれば爆発するようなことは起きない。 昔は取り扱い方法が確立していなかったため、さまざまな爆発事故が発生していた。 実際の爆発事故は製造上の欠陥か取り扱い上の問題がほとんどである。
8℃で凍結し、14度で溶けるが、一部が凍結すると感度が高くなり危険であるため、自然な気温で凍結したり溶けたりしないように保管時の温度管理は必須である。
溶かす場合には絶対に直接火にかけてはいけない、湯煎するなどして間接的に加熱しないと、火に直接当たっている部分の温度が高くなって微少気泡が発生するとそこからホットスポットが発生して爆発する。
微少気泡が入ったニトログリセリンは小さな衝撃でもホットスポットが発生して爆発する。 そのため、気泡が入らないように瓶の縁に空気を残さない、かき混ぜない、振らない、などの取り扱い上の注意が必要である これらの問題は膠化してしまえば無くなるが、膠化する作業中に微少気泡が入ると同じように爆発するので加工には注意が必要である。
[編集] 歴史
1846年にイタリアの化学者、アスカニオ・ソブレロ (Ascanio Sobrero) によって初めて合成された。この新物質をテストするため、自分の舌全体でなめてみたところ、こめかみがずきずきしたと記載している。これは、彼自身の毛細血管が拡張されたためである。爆発力がすさまじく、一滴を加熱しただけでガラスのビーカーが割れて吹き飛ぶほどの威力があり、ソブレロは危険すぎて爆薬としては不向きであると判断した。しかしその後の工夫により、アルフレッド・ノーベルらによって実用化された。
また、カール・ノイベルグが微生物を使った製造にも成功している。
[編集] 製造法
グリセリンを硝酸と硫酸の混酸で硝酸エステル化するとニトログリセリンになる。 混酸の組成は硫酸50:硝酸55で行う、ナサン式ではグリセリン量の4.5倍から5倍の混酸が必要である。
製造法にはバッチ式のナサン式と連続法のビアッチ式とインジェクター式がある。
[編集] 物語に登場するニトログリセリン
ニトログリセリンの容易に爆発する性質は、様々な物語で取り上げられている。とりわけ有名なのが、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督のサスペンス映画『恐怖の報酬』(1953年)である。この作品では、油田火災を消すためにニトログリセリンをトラックで運ぶ男たちが描かれている。