トルコ音楽
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トルコ音楽(トルコおんがく)
トルコの音楽は、様々な民族が往来してきたアナトリア半島の歴史を反映した多様性を持つ。
目次 |
[編集] 民謡、民俗音楽
トルコ民謡は、中央アジアの遊牧民の歌や、モンゴル、朝鮮や日本の民謡と共通点を持つと言われる。
- クルク・ハヴァ Kırık Hava(「割られたメロディ」)
- 短い旋律を主に大人数で歌う。舞踊曲など。
- ウズン・ハヴァ Uzun Hava(「長いメロディ」)
カラギョズ - 影絵芝居
[編集] オスマン音楽
[編集] 古典音楽
トルコ古典音楽と呼ばれるかつてのオスマン帝国の宮廷音楽は、アラブ音楽やイランの音楽などイスラム世界伝統の宮廷音楽を受け継いだ芸術性の強い音楽である。メヴレヴィー教団の儀式の音楽など宗教音楽とも関連が深い。
[編集] 軍楽
同じ宮廷が関わる音楽でも、メフテルと呼ばれる軍楽は、イスラム世界と中央アジア起源の軍楽があわさったもので、ラッパの類の管楽器と太鼓などの打楽器によって構成された。
[編集] 宗教音楽
メヴレヴィー教団の典礼音楽、とくに旋廻舞踊の音楽が有名。
[編集] ポピュラー音楽
トルコのポップスは、トルコ国内にとどまらない人気を持つ。中でも、タルカン Tarkan は国際的にヒットし、大スターになっている。また、アラベスクがちょうど日本の演歌のような位置付けにあり、民謡とともに根強い人気をもつ。
ハルク - 民謡風の音楽。
タヴェルナ音楽 - レストランなどで演奏されている軽音楽。
サナート
ベリーダンスの類もある。
[編集] 伝統楽器
[編集] オスマン古典音楽で使われる楽器
- タンブール Tanbur(弦楽器。ロング・ネック・リュート)
- ケメンチェ Kemençe(弓奏楽器)
- カーヌーン Kanun(撥弦楽器。台形の箱に糸を多数張り巡らせたもの)
- ネイ Ney(葦の笛、日本の尺八のようなもの)
- デフ Def(太鼓。タンバリンのようなもの)。など。
[編集] メフテルで使われる楽器
- ズルナ(チャルメラのようなけたたましい音のする管楽器)
- ボル(管楽器。ラッパの類)
- ダウル(打楽器。太鼓。)
- ナッカーレ(打楽器。太鼓。)
- キョス(打楽器。太鼓)
- ズィル(体鳴楽器。鳴り物。シンバルの原型。仏教の法会(ほうえ)で使う鐃鈸(にょうはち)のようなもの)、
- チェヴギャーン(いわゆるターキッシュ・クレッセント。山伏の持つ錫杖(しゃくじょう)のようなもの。音の鳴る杖)
[編集] 音楽家
[編集] オスマン古典音楽
- ハサン・エフェンディ Hatip Zakiri Hasan Efendi(1545年 - 1623年)
- ガージー・ギライ Gazi Giray(16世紀末)
- ソラックザーデ Solakzade(17世紀前半)
- 作品にニーシャーブール・ペスレヴ(Nişâbur pesrev)など。
- ハーフィズ・ポスト Hafiz Post(? - 1693/1694年)
- ブフーリーザーデ・ムスタファー・ウトリー Buhurizâde Mustafa Itrî(1640年 - 1711/1712年)
- ハーフィズ・ポストの弟子。
- アフメト・チェレビー Ahmed Çelebi(17世紀後半)
- 作品にセギャーフ・セマーイー(Segah semai)など。
- デルヴィーシュ・ムスタファ Derviş Mustafa(17世紀後半)
- 作品にニハーヴェンド・ペスレヴ(Nihavend pesrev)など。
- カンテミルオウル Kantemiroğlu(1673年 - 1723年)
- モルダヴィア(ルーマニア)公ディミトリエ・カンテミールのトルコ名。公子としてイスタンブール滞在中に数々の曲を作曲。独自の楽譜を考案、自作曲を書き残した。
- タンブーリー・ムスタファ・チャヴシュ Tanburî Mustafa Cavuş(18世紀前半)
- シェリフ・チェレビー Şerif Çelebi(18世紀前半)
- 作品にラースト・ペスレヴ(Rast pesrev)など。
- セリム3世 Sultan III. Selim(1761年 - 1808年)
- オスマン帝国の第29代スルタン。古典音楽を数多く作曲し「セリム3世楽派」の祖とみなされた。
- ハマーミーザーデ・イスマイル・デデ Hamamizade İsmail Dede(1777/1778年 - 1845/1846年)
- 古典音楽最高の作曲家で、「デデ・エフェンディ Dede Efendi」として知られる。マフムト2世の宮廷に仕えた。
- ハンパルスム・リモンジュヤン Hamparsum Limonicuyan(1768年 - 1839年)
- アルメニア人。ハンパルスム譜を考案。
- デッラールザーデ・イスマイル・エフェンディ Dellalzade Ismail Efendi(1797年 - 1869年)
- イスマイル・デデの最も著名な弟子で、師につぐ大作曲家。美声で知られ、宮廷声楽家になった。
- タンブーリー・オスマン・ベイ Tanburî Büyük Osman Bey(1816年 - 1885年)
- ゼカーイ・デデ Zekai Dede(1824年 - 1897年)
- ハジュ・アリフ・ベイ Hacı Arif Bey(1831年 - 1884年)
- シェウキ・ベイ Şevki Bey(1860年 - 1890年)
- レミ・アトル Lemi Atlı(1869年 - 1945年)
- タンブーリー・ジェミル・ベイ Tanburi Cemil Bey(1871年 - 1925年(1916年とも))
[編集] メフテル
- アリー・ルザ・ベイ Ali Rıza Bey(1881年 - 1934年)作品に「ジェッディン・デデン Ceddin Deden 」(祖父も父も)など。
- イスマイル・ハック・ベイ İsmail Hakkı Bey(1866年 - 1927年)作品に「オルドゥムズ・エッティ・イェミン Ordumuz Etti Yemin 」(陸軍行進曲)、「テクビル・ヴェ・ジェンク・マルシュ Tekbir ve Cenk Marşı 」(テクビル・戦闘行進曲)、メフテル・マルシュ Mehter Marşı 」(軍隊行進曲)など。
- リファット・ベイ Rifat Bey(1820年 - 1888年)作品に「シヴァストポル・マルシュ Sivastpol Marşı 」(セヴァストポリ行進曲)など。リファット・ベイをメフテルの所にいれるのはよくない?
[編集] ポピュラー音楽
- ゼキ・ミュレン - サナート。
- イブラヒム・タトルセス - 男性歌手。「アラベスクの帝王」
- キバリエ - 女性歌手。アラベスク。
- ジョシュクン・サバハ - 男性歌手。ウード奏者。「タヴェルナ音楽」を確立した一人。
- セゼン・アクス - 女性歌手。
- ムスタファ・サンダル - 男性歌手。
- ギュルシェン - 女性歌手。
[編集] 参考文献
- ジェム・ベハール『トルコ音楽にみる伝統と近代』(新井政美訳)、東海大学出版会
- 平凡社音楽大事典「西アジア - トルコ」項(柘植元一)
- 「New Grove Music Dictionary」 - 「Turkey」項 第4節 Art music 内3の「Composers」
- CD「TURKEY SPLENDOURS OF TOPKAPI」(OPUS 111,1999年,OPS 30-266)