ハチロク
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ハチロク
- 国鉄8620形蒸気機関車の通称。
- アメリカ合衆国の制空戦闘機、ノースアメリカンF-86セイバーの日本における通称。
- Intelの80386の流れを汲むCPUの俗称。通称x86。
- トヨタ自動車が製造したカローラレビン/スプリンタートレノの共通車台番号AE86型の通称。本稿で著述する。
ハチロクとは、1983年にトヨタ自動車が発売したカローラとスプリンターのスポーツモデルである6代目カローラレビン/スプリンタートレノの名称「AE86型」から取った通称である。
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[編集] 評価
発売当時は前輪駆動(フロントエンジン・フロントドライブ方式)やターボなど利便性を追求した新メカニズムの取り入れが日本車の流行だっただけに、新開発の4A-GE型エンジンが目新しかったものの、当時のトヨタの生産設備の都合で先代の「TE71型」からそのまま受け継いだ旧来のシンプルな、フロントがストラット、リヤがラテラルロッド付きの4リンクリジッドアクスルという後輪駆動方式(フロントエンジン・リアドライブ方式)が当時としてもやや簡素であり、走りを追求する一部の人たちに期待はずれの印象をもたらした。基本的なサスペンション仕様が先代「TE71型」と同様だったため、アフターマーケットでのサスペンションモディファイが容易であったことが、実はその後の人気が続く理由になっていったのだが・・。(発売から1週間後にはジムカーナ仕様車やラリー仕様車が完成したと言われている。)
1987年、レビン・トレノが「AE92型」へとモデルチェンジを果たして駆動方式が前輪駆動に変更された事で、ハチロクは国産車として希少となった軽量後輪駆動車ということでその存在が見直され、皮肉にも発売当時以上に車好きの間で注目されるようになった。
また、人気プロレーシングドライバーの土屋圭市がその立身出世の相棒として、当時から現在に至るまで取り上げ続けたことでも注目を集めるようになる。特に氏を信望する峠の走り屋には、土屋圭市(ドリキン)=ドリフト=FR=ハチロクというように絶大な人気を得た。
1990年代半ばからは漫画『頭文字D』の主人公(元々は父・藤原文太保有、後に主人公の藤原拓海保有に)の愛車ということで、元々の車好き以外にも注目を浴びて以来、中古車市場でも異常なほどの高値安定を示し、アメリカなどから左ハンドル仕様を逆輸入して販売する業者も現れた。絶版直後ならいざ知らず、絶版から20年近く経った現在、その経年状態と性能に見合わない価格で購入していくのは、走り屋よりも『頭文字D』に憧れた者ばかりと言われる。その為か、ハチロク専門店も存在するほどである。
それでも長年培った様々なノウハウや社外パーツでのチューニングに加え、後に登場したレビン・トレノに採用されたスーパーチャージャー、4連スロットルボディー、20バルブ4A-GEエンジン等を流用する純正品でのチューニングメニューも多く、さらにはSR20DETやRB26DETT、2JZ-GTE、F20C、RE等あらゆるエンジン換装例もある。金に糸目を付けなければ1980年代の車でありながら、21世紀の現在でも充分にこの車を楽しめる。現代の車に比較して、シンプルなエンジン(補器類含む)、サスペンションの構造が、プライベート(個人)でのモディファイに適していることも、これだけ長く人気を得てきている理由の一つといえる。また、外観からかなり痛みが見られるような車体状態でも、走行は可能な堅牢さも特筆に価する。(通常であれば廃車扱いとなるような状態の車体であっても、人気とメンテナンス経験を持った人間の多さゆえ、電気自動車などの改造ベースとしても好んで使用される。)
前述の逆輸入左ハンドル車の注意点は、足車として使われていたため走行距離が多い個体が多い、Dジェトロでなくエアフロ式なので、インテークパイプに加工が必要、排気側もEGR(排ガス還流装置)があり、右ハンドルの物をポン付け出来ない、などである。
ちなみに、同年式のレビン・トレノの3A-U型1500ccSOHCエンジン搭載車はその形式名(AE85)から「ハチゴー」と呼ばれるが、たった83馬力しかないそのエンジンゆえにハチロクほど人気はない。が、一部ではその不人気さゆえのハチロクより軽量、低価格でハチロクより程度のいいボディーが手に入ると言う理由で、マニアがエンジン載せ換えやフレーム加工などの大規模な改造を施す時のベース車として使われる事が多い。(実際、ハチゴーをベースにフレームに大規模な加工を加え、スープラ等に搭載される2JZエンジンを搭載したドラッグマシンの実例もある。)ちなみにこのハチゴーは、頭文字Dの拓海の友人である樹の愛車でもある。
余談ではあるが、当時トヨタ社と提携関係の有った英国ロータス社の「エスプリ」に、このAE86(前期型レビン)のリアコンビランプが使用されていた。
[編集] モータースポーツでの活躍
1980年代のツーリングカーレースでシビックとともに活躍、しばしば上級カテゴリーをも脅かし、実際にスカイライン勢を押さえ、総合優勝の快挙を成し遂げた事もある。一例として1985年から始まった全日本ツーリングカー選手権グループAの第1戦、スポーツランドSUGOでの総合優勝が挙げられる。
活躍の場はサーキットばかりではなく、ラリーやジムカーナにも参戦しており、現在でも様々な競技で活躍が見られる。
また、横田紀一郎がパリ・ダカール・ラリーにレビンで参戦しているが公式記録ではリタイアとなっている。
全日本GT選手権のGT300クラスにも参戦していたこともあったが、2001年にスポーツランドSUGOで行われた引退レースは、炎上、リタイアという形になってしまった。
生産中止から約20年経過した車両が公式レースでのベース車として使用されることは非常に稀なケースであり、ここでもハチロクの人気の高さが伺える。
[編集] 関連項目
[編集] テレビ番組
自らも10年来ハチロクに乗る、アニメ版「頭文字D」で主人公の藤原拓海役の声優・三木眞一郎を司会に、CS放送のSKY PerfecTV!やケーブルテレビなどで観られるMONDO21で“走る伝説ハチロク。その魅力を徹底解剖”した専門番組「ハチロク極」が2006年4月からスタートしている。
[編集] 関連イベント
東京都江東区の臨海副都心にあるトヨタ自動車のショールームスペース、MEGAWEBでは、2005年10月18日より2006年2月19日まで、ヒストリーガレージにて「レビン&トレノ展」を開催し、頭文字D仕様のレプリカなどが展示していた。