マリア・ブッテルスカヤ
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マリア・ブッテルスカヤ(Мария Викторовна Бутырская/Maria Viktorovna Butyrskaya、1972年6月28日)は、ロシアの女性フィギュアスケート選手。本来の発音は「ブティルスカヤ」に近いが、日本ではメディアが使用した「ブッテルスカヤ」が定着した。ロシアでの愛称はマーシャ。モスクワで生まれのモスクワ育ち、現在もモスクワに住んでいる。その演技で男性ファンを得る一方、さばさばした男勝りな性格から女性ファンも多かった。
[編集] 略歴
- 1991-92シーズンに頭角を現し、ソ連選手権2位。しかしこの後、ソ連の崩壊に伴い彼女は競技を続ける為の資金にも事欠くようになり、満足にコーチも付けられない日々を送ることになる。しかし持ち前の気丈さでこの危機を凌いだマリアは、以降、チャンピオン・シリーズ(現在のグランプリシリーズ)やヨーロッパ選手権、世界選手権を舞台に安定した成績を残し、NHK杯も複数回優勝している。長野オリンピックでは4位入賞、ソルトレークシティオリンピックでは6位入賞を果たすも、メダル獲得はならなかった。
- 1998年 - 1999年シーズンには史上最高齢の26歳で世界選手権優勝を果たした。演技後にガッツポーズをし、弾けるような笑顔になったのはアマチュア時代には後にも先にもこの時だけである。プログラムはSP:james infirmary FS:Otonal(秋に寄せて)
- 2002年ソルトレークシティ五輪の1か月後、3月に長野で行われた世界選手権に出場した。しかし、最初の予選演技にコーチが間に合わないアクシデントなどで、メンタル面での動揺が影響して不調となり、ショートプログラムとフリープログラムを棄権して帰国。そのままアマチュア競技生活を終えた(同じロシア代表のビクトリア・ボルチコワは、「気持ちは分かるが、出場を決めたのなら途中で投げ出さずに、最後のフリー演技まで全うすべきだった」と苦言を呈した)。
- 現役時代は傑出した美貌とスタイルで高い人気を誇り、富士フイルムのテレビコマーシャルにも出演している。また自ら振り付けを行い、衣装もデザインするという、珍しい選手でもあった。その振り付けは自らの美貌とスタイルを十二分に生かした独特のもので、特に技と技の繋ぎの部分のアイデア豊富な動きはコレオグラファーとしての彼女の能力の高さをうかがわせるものであった。彼女は自身の演技を「氷上の一人の女」と定義しており、女性性をいかに表現するかにその眼目は置かれていた。
- 彼女の現役時代に競技の勝負を決定的に左右していたジャンプに関しては、決して得意な方ではなかったが、「根性降り」と評された、気合いで転倒をこらえるさまは、ファンに好感をもって迎えられた。
- フリップとルッツをきちんと跳び分けていたこと、ジャンプよりもそれ以外のパートでの優雅で女性的な表現力が持ち味だったことなどから考えて、新採点システムがもっと早く採用されていれば、彼女のキャリアにはもう一つ二つ大きな勲章が付け加わっていたと思われる。
- 彼女の競技への姿勢は極めてストイックで、豊富な練習量をこなしていたと言われる。また競技会時には、満足のいかない演技後は得点が出される前にキスアンドクライエリアから立ち去るなど、観客へのアピールよりもひたすら自分の演技にこだわる勝負師の側面が見られた。実際、長野とソルトレークシティーの五輪の舞台では、フリースケーティングでいずれも演技中にミスを犯してしまったため、フリー演技終了後は得点の表示板を全く見ずに憮然とした表情のまま、早々にキスアンドクライの席を立ち去っている。
- 1998年には「プレイボーイ」誌のグラビアを飾っている。
- 2006年にロシア出身でNHLのダラス・スターズに所属するアイスホッケー選手で、10歳年下のVadim Khomitski と結婚。
[編集] 主な戦績
大会/年度 | '91-'92 | '92-'93 | '93-'94 | '94-'95 | '95-'96 | '96-'97 | '97-'98 | '98-'99 | '99-'00 | '00-'01 | '01-'02 |
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オリンピック | - | - | - | - | - | - | 4 | - | - | - | 6 |
世界選手権 | - | - | - | - | 4 | 5 | 3 | 1 | 3 | 4 | 棄権 |
欧州選手権 | - | 5 | 4 | 7 | 3 | 4 | 1 | 1 | 2 | 2 | 1 |
ロシア選手権 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 2 | 3 | 2 |
GP ファイナル | - | - | - | - | 7 | 4 | 3 | 2 | 3 | 4 | 4 |
GP アメリカ | - | - | - | - | - | 10 | - | 1 | - | - | - |
GP カナダ | - | - | - | - | - | - | 2 | - | - | - | - |
GP ドイツ | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
GP フランス | - | - | - | - | - | 2 | - | 1 | 1 | 1 | 1 |
GP 日本 | - | 5 | - | - | 5 | 1 | 2 | - | 1 | - | - |
1906-1907: マッジ・サイアーズ | 1908-1911: リリ・クロンベルガー | 1912-1914: Opika von Méray Horváth | 1922-1926: ヘルマ・サボー | 1927-1936: ソニア・ヘニー | 1937: セシリア・カレッジ | 1938-1939: メーガン・テイラー | 1947-1948: バーバラ・アン・スコット | 1949-1950: Alena Vrzáňová | 1951: ジャネット・アルウェッグ | 1952: ジャクリーヌ・デュビエフ | 1953: テンリー・オルブライト | 1954: ガンディ・ブッシュ | 1955: テンリー・オルブライト | 1956-1960: キャロル・ヘイス | 1962-1964: ショーケ・ディクストラ | 1965: ペトラ・ブルカ | 1966-1968: ペギー・フレミング | 1969-1970: ガブリエレ・ザイフェルト | 1971-1972: ベアトリクス・シューバ | 1973: カレン・マグヌッセン | 1974: クリスティーネ・エラート | 1975: ディアネ・ドレーウ | 1976: ドロシー・ハミル | 1977: リンダ・フラチアニ | 1978: アネット・ペッチ | 1979: リンダ・フラチアニ | 1980: アネット・ペッチ | 1981: デニス・ビールマン | 1982: エレイン・ザヤック | 1983: ロザリン・サムナーズ | 1984-1985: カタリナ・ヴィット | 1986: デヴィ・トーマス | 1987-1988: カタリナ・ヴィット | 1989: 伊藤みどり | 1990: ジル・トレナリー | 1991-1992: クリスティー・ヤマグチ | 1993: オクサナ・バイウル | 1994: 佐藤有香 | 1995: 陳露 | 1996: ミシェル・クワン | 1997: タラ・リピンスキー | 1998: ミシェル・クワン | 1999: マリア・ブッテルスカヤ | 2000-2001: ミシェル・クワン | 2002: イリーナ・スルツカヤ | 2003: ミシェル・クワン | 2004: 荒川静香 | 2005: イリーナ・スルツカヤ | 2006: キミー・マイズナー | 2007: 安藤美姫 |