ヤシ
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ヤシ科 | ||||||||||||
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分類 | ||||||||||||
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ヤシは、単子葉植物ヤシ科に属する植物の総称である。熱帯地方に多く、独特の樹型で知られている。実用価値の高いものが多く含まれる。
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[編集] 特徴
ヤシは、単子葉植物ヤシ科に属する植物を広く指して言う呼称である。単子葉植物としては珍しく木本であり、幹は木化して太くなる。大きいものでは30mにも達するが、茎が立ち上がらないものや、草本並みの大きさのものもある。
葉は羽状複葉か掌状に裂け、基部は茎を抱き、鞘が茎を包んだり、繊維を茎にまといつかせる。茎に沿って多数の葉を並べるものもあるが、茎の先端部に輪生状に葉が集まるものが多く、ソテツ類に似た独特の樹型を見せる。
花は小型で、穂になって生じる。花序の基部には包がある。花びらは小型。
熱帯地方を中心に230属、約3500種がある。日本には7種ほどが自生、または自生状態で見られる。しかし、観葉植物として栽培される種が多く、見かける種数ははるかに多い。
[編集] 利用
古来より、多くの種が、様々な方法で利用されている。
[編集] 食用等
- ココヤシの果実内部にたまった水は飲用になる。ココヤシは果実の内側をココナッツとして食用にする。水分とともに砕いて乳液状にしたものはココナッツミルクと呼ばれる。
- ナツメヤシの果実は食用のほか、ウスターソースの原料などに利用される。
- サゴヤシは幹の内部にでんぷんを貯蔵しており、これが食料として利用される。
- アブラヤシは、果実から取れる油を工業原料、食用のパーム油として用いる。
- ロウヤシからは食品添加物のカルナウバワックスが採取される。
[編集] 薬用等
- ビンロウは果実を染料として利用するほか、キンマの葉とともに噛んで嗜好品とする。中国湖南省では、煮て甘草などで味付けし、虫下しの効果がある嗜好品としている。
- ノコギリヤシ(ソー・パルメット)の果実はインディアンが強壮作用のある食料として用いていたが、エキスには前立腺肥大の抑制作用があることが知られている。
[編集] 建材、工芸材料等
- 大きくなるものは、幹が建材等に利用される。また、ココヤシ、ニッパヤシなどの大型種の葉は、屋根を葺くのにも使われる。そのほか、傘や帽子、団扇などに直接加工することも広く行われる。
- 葉の丈夫な種では、引き裂いてひもや繊維とすることも行われる。シュロなどでは、葉の基部から生じる繊維状の毛を縄、ほうきなどの材料とする。
- つる性のトウ(籐)は籐細工として家具などにされる。
[編集] 活性炭
[編集] 園芸
- ヤシの独特の樹型はいかにも熱帯的な印象があり、温暖な地方では街路樹として用いられる。本州南岸以南では、カナリーヤシ・シンノウヤシ(フェニックス)・ワシントンヤシがよく街路樹として用いられ、特に観光地では南国ムードを高めるために頻繁に使用される。
- 小型種では観葉植物として室内で栽培されるものが多い。カンノンチク、シュロチクは古典園芸植物として、江戸時代から様々な品種が栽培された。大正・昭和期には投機の対象となり、何度かブームを起こしている。
[編集] 楽器
- ヤシの実を穿孔して土笛のようにし、楽器として使用されている。一例として兵庫県神戸市玉津田中遺跡から弥生時代のものが出土している。
[編集] 代表的な種
[編集] 日本産
日本国内には以下のような種を産する。
- クロツグ属 Arenga
- クロツグ・コミノクロツグ(沖縄など・茎は高く伸びず、葉は5mまで)
- マガクチヤシ属 Clinostigma
- ノヤシ(小笠原)
- ビロウ属 Livistona
- ビロウ・オガサワラビロウ
- ニッパヤシ属 Nypha
- ニッパヤシ(八重山以南・マングローブに)
- カンノンチク属 Rhapis
- カンノンチク・シュロチク(まれに逸出・古典園芸植物)
- ヤエヤマヤシ属 Satakentia
- ヤエヤマヤシ(八重山特産)
- シュロ属 Trachycarpus
- シュロ(逸出・縄などの材料)
[編集] 外国産
- クロツグ属 Arenga
- トウ属 Calamus
- ココヤシ属 Cocos
- ロウヤシ属 Copernicia
- ブラジルロウヤシ
- アブラヤシ属 Elaeis
- ナツメヤシ属 Phoenix
- カンノンチク属 Rhapis
- ノコギリパルメット属 Serenoa
- ノコギリヤシ
- シュロ属 Trachycarpus
他にも、有名なものが多々ある。