ウスターソース
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ウスターソース(ウースターソース、英語 Worcestershire sauce、Worcester sauce)は、野菜や果実などのジュース、ピューレなどに食塩、砂糖、酢、香辛料を加えて調整、熟成した液体調味料。 日本語で単にソースと言った場合、ウスターソースを指すことも多い。また、一般的に「中濃ソース」や「濃厚ソース」(とんかつソースなどを含む)と呼ばれている商品も、粘度の違いと用途を示す言葉が付いており、一般消費者は別のものというイメージを抱いているが、行政上は一括してウスターソース類と呼んでいる。
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[編集] 歴史
原産地はイギリスのウスターシャー州で、1890年代後半頃ある貴族が、イギリスの植民地であったインドからソースの作り方を持ち帰り、薬剤師であった二人の人物(ジョン・リーとぺリン。現在そのままのブランド名となっている)に命じて作らせたものが発祥であるとされる。
アンチョビなどを使用したこのソースの作成は、失敗したと思われて樽に入れっぱなしのまま放置されていたが、数年間(数か月という説もある)放置された後に再発見され、再度味見をしたところ熟成された味に仕上がっており、それがそのまま広まったという。 現在では、リー・アンド・ペリン (Lea and Perrins) ブランドのウスターソースは、イギリスのみならず世界各国で広く使われている。
Lea and Perrins ブランドのウスターソースはその製法が現在でも社外秘とされている。
日本で使用されているウスターソースの味は、材料も異なるイギリス産の物とは別物である。日本産は果実と野菜、スパイスが主原料であるのに対し、イギリス産はアンチョビも主原料として使われており、そのため魚醤に似た味がする。日本産が揚げ物などにかけて食べるのに対し、イギリス産は隠し味などに使用されることが多い。このような事になった理由はウスターソースがたまたま日本の醤油に似ていた事から西洋風の「新味醤油」(日本で初めてソースを販売したヤマサ醤油の商標)などとして一般化したためらしい。日本ではその後に派生する形でとんかつソースや中濃ソースが考案されている。
[編集] ケチャップとの関連
ケチャップというとトマトで作るものを連想するが、本来のケチャップは魚醤が主原料であり、東南アジア経由で、欧米に伝わってゆく過程で様々な材料を用いてアレンジされ、現在のトマトケチャップとウスターソースなどに分化したものである。
[編集] 日本のウスターソース類
イギリスの元祖ウスターソースはアンチョビ、タマリンド(果実の一つ)、エシャロット、クローブ、やニンニクなどを材料にしているのに対し、日本のウスターソース類は、トマトやリンゴなどといった野菜・果実の絞り汁・煮出し汁・ピューレ、またはそれらを濃縮したものに、糖類、食酢、食塩、香辛料、でん粉、カラメルなどを加え、貯蔵熟成させてつくる。日本で最もポピュラーな調味料のひとつであり、茶褐色や黒色をしていて、しょっぱさのほかに、ほのかな辛さと野菜や果実に由来する甘味・酸味に特徴のある調味料である。
ウスターソース類は、粘度の違いにより、最もさらっとした(粘度0.2Pa・s未満)ウスターソース、ややとろみのある(粘度0.2Pa・s以上、2.0Pa・s未満)中濃ソース、中濃よりもさらに粘度が高い(粘度2.0Pa・s以上)濃厚ソースに分けられる。濃厚ソースには「特濃ソース」などの商品名を付けているものが含まれる。粘度はでんぷんを加えて高められることが多い。
また、とんかつソース(他に各種材料を配合して用途をフライ専用に特化している)、お好みソース、やきそばソース、たこやきソースなど、ウスターソースから派生し、商品名に用途を冠し、粘度や風味を調整したソースもある。多くは濃厚ソースに属する。中京圏では、こいくちソースと呼ばれる独特の濃厚ソースが好まれている。
ウスターソース類は、日本には明治時代に登場した。当初は、現在の狭義のウスターソース、つまり粘度が低いサラサラしたソースのみであったが、戦後まもなく粘度の高いとんかつソース(濃厚ソース)ができ、その中間の中濃ソースは昭和30年代に登場したものである。この中濃ソースが誕生した頃から、日本の家庭の食卓が洋風化したのに伴い、消費量が拡大し、しばしば家庭に常備される。家庭だけでなく、大衆食堂では、醤油とともに食卓上に常備されていることが多い。
調味料は、地域や個人により好みが分かれており、なかなか統一的ではない。ウスターソース類についても同様で、メーカーやタイプ(濃度や風味など)も、地域ごとに受け入れられ方が異なるため、各地域でメジャーに思われている商品のタイプやブランドも異なっている。一説によると、関東地方以北では中濃ソースのみを使い、近畿地方、西日本などではウスターソースととんかつソースを分けて使うことが好まれる傾向があるという。こういった消費動向に関連してか、近畿地方に本部があるメーカーでは、中濃ソースを他の種類のソースよりも比較的近年に登場させたケースが多い。
また、地方でのみ、あるいは個別のメーカーのみが作っている風味や用途の異なるウスターソース類もある。例えば、長崎県には皿うどんソース(チョーコー醤油製)というものがあった。近畿地方では辛味が強く、濃度の高い「どろソース」(オリバーソース製)の人気も高いほか、近年は大量生産された大手のソースにない味が評価され「地ソース」が静かなブームを呼んでいる。特に手作りの小規模な地ソースは人気が高く、メーカーによっては生産が注文に追いつかない状態となっている。
なお、商品名にソースと付いていても、必ずしもウスターソース類に入るとは限らない。例えば、オタフクソースは業務用のソースカツ丼ソース、焼きうどんソースなども製造しているが、これらは醤油などを加えた合わせ調味料であって、ウスターソース類には当てはまらない。
[編集] ウスターソース類が決め手の料理
[編集] 一部地方に限りウスターソースが常用される料理
[編集] 主なソースメーカー
- ポールスタア(東京都東村山市)
- トキハソース(東京都北区)
- ブルドックソース(東京都中央区)
- キッコーマン(千葉県野田市)
- オタフクソース(広島市西区)
- カゴメ(名古屋市中区)
- コーミ(名古屋市東区)
- イカリソース(大阪市福島区)
- オリバーソース(神戸市中央区)
- チョーコー醤油(長崎県長崎市)
- 鳥居食品(静岡県浜松市)
- サンフーズ(ミツワソース・ヒガシマルソース)(広島県広島市南区)
- センナリ(広島県広島市安佐北区)
- 毛利醸造(カープソース)(広島県三次市)
- 豊島屋(タテソース)(岡山県倉敷市)
- コックソース(福岡県福岡市中央区)
- ニビシ醤油(福岡県古賀市)