ヤマト (宇宙戦艦ヤマト)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤマト (宇宙戦艦ヤマト)では、大作アニメシリーズ『宇宙戦艦ヤマト』の主役戦艦である「宇宙戦艦ヤマト」について、劇中設定を記す。一部を除いて、『宇宙戦艦ヤマト』第1作から『宇宙戦艦ヤマト 完結編』に至る、TV・劇場用アニメーション作品の劇中描写を元に記し、書籍等の媒体で発表された設定やコミカライズ等に登場する設定についてはその旨を明記する。
目次 |
[編集] 概要
1945年に海没した戦艦「大和」を改造して作られた超弩級宇宙戦艦。同型艦は無し。西暦2199年就役。松本零士による漫画版での型式名「M-21991式宇宙戦艦」。
ガミラスによる発見を避けるため、遊星爆弾によって干上がった九州坊ケ崎沖の海底に露出した「沈没戦艦大和の遺跡」をカモフラージュにして、元来は選ばれたわずかな人類と生命種を乗せ地球を脱出するための「ノアの箱舟」として建造されていた。しかし、イスカンダルからのメッセージ飛来を機に、地球脱出からイスカンダルへの航海へと計画は変更された。
[編集] 波動エンジン
- ヤマトの主機関には、イスカンダルより送られた設計図に基づき、急遽製造された「波動エンジン」を装備している。波動エンジンよって、ヤマトは「ワープ」(空間跳躍)能力を備えることになり、長距離の恒星間航行が可能になった。また、波動エンジンが生み出すエネルギーによって、従来の地球製宇宙船とは一線を画した戦闘能力を得ることが出来た。
- また、別に「補助エンジン」を2基装備する。これは副推進器であると同時に、主機である波動エンジンの始動にも使われる一種のセルモーター、スターターでもある。
[編集] 設計
- 劇中では述べられていないが、ヤマト第一艦橋要員であり砲術担当責任者でもある南部康雄の実家、南部重工業製と書籍類で設定されている。(地球防衛軍の士官クラスの拳銃も同社製)。 設計において戦艦大和をデザインベースとしたため、水上艦艇をそのまま宇宙に浮かべたような外観を有している。艦体はスペースチタニウム合金製。艦底に第三(航海)艦橋を持つ。本艦に限らず、ヤマト世界の宇宙艦艇の大半は着水能力を有し、また艦に上下がある(重力制御が実現している)ため、主砲を始めとする各種武装が「船体上部」に集中する傾向がある。
- また、大気圏内航行時の安定保持のため、左右両舷に収納式の主翼を装備している。このデルタ翼型の巨大な大気圏内安定翼は、ヤマト以後の宇宙戦艦には採用されていないが、次世代艦のアンドロメダ級戦艦には小型ながら可変式安定翼がある。この主翼は、尾部の3つある舵、姿勢制御翼と併用して用いる。
- また、航海途上、敵の攻撃を受けながらも艦体修理を続けられるようにするため、真田志郎発案によるアステロイドシップ計画が採用された。これは小惑星に反重力感応器を打ち込んで、ヤマトに引き寄せて装着し擬装する(アステロイドシップ)とともに、攻撃を受けた場合、感応器を操作して小惑星群を艦体の周囲に回転させ(アステロイドリング)、敵のミサイルやレーザー砲を跳ね返そうというものだった。特殊な防御装備としては、同じく真田発案による、光学兵器やエネルギー兵器を反射させる空間磁力メッキがある。
- 対白色彗星帝国戦役時には、波動砲の収束率向上のための改良を行っている。また、主砲にも改良が加えられ、射程距離が大幅に伸びている(これらが描写されているのは『ヤマト2』のみ。『さらば宇宙戦艦ヤマト』では改良の描写も性能向上を思わせる描写も無い)。
[編集] 大改装
対暗黒星団帝国戦役時(『ヤマトよ永遠に』)、旧式化していたヤマトは大改装され、イスカンダルオリジナル設計製から地球設計製へと、主機関を換装することとなった。また、増幅装置「スーパーチャージャー」を備え、これにより連続ワープ(超長距離ワープ)の使用が可能となった。
同時に波動砲の威力も格段に向上し、また短時間のインターバルをおいての連続発射が可能となり、発射時の艦内電力供給停止措置も必要なくなった。これを「新・波動砲」と呼ぶ。 主砲も性能向上が図られ、波動エネルギーを充填した新型主砲弾「波動カートリッジ弾」が使用できるようになった。 同様に波動エネルギーを充填した新型爆雷「波動爆雷」も追加装備として新たに搭載された。
[編集] 姉妹艦
建造の経緯が特異であるため、姉妹艦にあたるような同型艦は存在しない。 設定が一新された新宇宙戦艦ヤマトでは、同じ大和型戦艦の架空の4番艦「まほろば」がヤマト級宇宙戦艦に改装されているので、実質、ヤマト級2番艦といえる。後継型にはグレートヤマト級(ヤマト級の改装だが)がある。また銀河鉄道999に、プロトタイプヤマトともいえるヤマト級のワープテスト艦が登場している(艦首のデザインがわずかにヤマトと異なる)。これらの艦については、第1作から完結編までの歴史とは異なった世界観の中で設定されているので、パラレルワールド上の存在である。だが、正史でもヤマト級は真に地球防衛軍の象徴とされたようで、ヤマトの名を継ぐ戦艦が代々建造されている(YAMATO2520を参照の事)。
[編集] その他
居住性
- もともと地球脱出用に設計されていたため、航海が長距離、長期間に及ぶので居住性は高い水準にある。そして艦内には人工重力が働き地上と同じく行動できる。この人工環境に乗員100余名が居住している。
- 乗員福利施設が極めて充実している。士官食堂、自動配膳の一般食堂、緑黄野菜を自給するヤマト農園、ジムを備えた体育館、レクリエーション施設と精神医療施設を兼ねるイメージ投影ルームや冷凍睡眠装置、さらにスナックまである。
生産性
- 自前の艦内工場を備え、外部から資材を調達する必要はあるものの、船体維持管理部品や艦載機を含めたミサイル等の消耗系の兵器弾薬に関しては高い生産能力を誇る。閉鎖的な人工環境を作っているが、完全ではなく長期航海時には地球型惑星で生鮮食料品になる生物の採取を行っている。
[編集] 諸元
なお、度重なる「修理・改装」の為、時期によって「武装やデザインなど細部仕様」に若干違いが生じている。
- 全長:265.8m
- 全幅:34.6m
- 全高:77.0m
- 自重:62,000t
- 注.これらのデータはオフィスアカデミーが『宇宙戦艦ヤマト全記録集』を出版した際に固定されたもので、それ以前はヤマトの大きさに関しては「概ね300m以上」といった取り決めしかされていなかった。そのためパート1時の設定資料を見ると、ものによって全長が263mだったり300mだったり330mだったりとかなり曖昧である。ベースとなった戦艦「大和」は、全長263mである。
- 乗員:114名
上記の諸元は現実的にシミュレーションした場合に矛盾が生じる。特に、以下の3点は制作者側も矛盾を承知の上での演出であり、設定書に矛盾点として明記されている。
-
- 設定されたサイズでは、艦載機は数機しか格納できない。
- 第一艦橋内部が、設定から導かれるサイズにくらべて広すぎる。
- 船の形からロケット型に絞られる艦尾の形状は、立体化すると矛盾が生じる。
こうした「制作者承知の上での矛盾」は、SF映像作品においてリアリティを重視することが当然になった近年になって、一部のファンから批判も生じている。しかし、『宇宙戦艦ヤマト』が制作された時代は、SF映像作品の物理的な設定を厳密に映像化するという発想が充分に浸透していなかったため、他のSFアニメ・特撮作品でも物理的なスペックより映像的なインパクトを優先する演出は多々存在した。本作は「演出優先」から「緻密なリアリティ」への過渡期にあたる作品であるため、様々な矛盾点がクローズアップされやすい傾向にある。
[編集] 兵装
主要兵装は、艦隊決戦兵器である艦首波動砲(続編で登場した拡散型に対し、収束型と呼ばれる)、主・副三連装ショックカノン、煙突ミサイル、パルスレーザー砲など。武器ではないが、ヤマト前部に2つ備えるロケットアンカーも、敵艦体に打ち込むなど攻撃に用いることができる。しかし、艦の上部に武装が集中しているため、下部からの攻撃が弱点になっている。
- 艦首波動砲(収束型)1門
- 主砲:45口径46cm三連装衝撃砲(ショックカノン)3基
- 副砲:46口径20cm三連装衝撃砲(ショックカノン)2基
- 注.大和の副砲は60口径15.5cm。ヤマトは大和に比べ、副砲の砲口径を増大させている。副砲の砲身長が大和とヤマトでは同じとして計算すると、ヤマトでは20.0cmの場合、46.5口径となる。口径が20.0cmではなく、20.3cmの場合、45.8口径になる。ここでは便宜的に間をとって46口径とさせていただく。異説ではヤマトの副砲も15.5cm。
- その他
- 煙突ミサイル×8セル(再装填可)
- 艦首ミサイル(魚雷)発射管×3門×2、後部同×3門×2(再装填可)
- 両舷側ミサイル発射管×8門×2(再装填可)敵ミサイルを防ぐ粘液ミサイルとしても用いられる
- パルスレーザー高角砲多数
- パルスレーザー対空機銃多数
- 波動爆雷投射機
[編集] 搭載機
宇宙戦艦と呼ばれているが、これは二十~二十一世紀における軍事用語としての“戦艦”とは微妙に異なり、「高い戦闘能力を持つ宇宙船」という程度の意味合いである。そのため、多数の戦闘攻撃機を搭載するという航空戦艦的な要素も有している。そのため艦尾艦底のかなりの部分を艦載機の格納スペースに割り当てている。エレベーターを使い立体的に格納することで、スペースを有効に利用している。
艦尾のカタパルトからコスモ・ゼロ、艦底ハッチよりブラックタイガー(後にコスモタイガーIIに機種更改)戦闘攻撃隊を発進させることができる。他に惑星探査用の中型機コスモハウンド、内火艇を兼ねた救命艇、ガミラス冥王星前線基地の反射衛星砲破壊時に活躍した水陸両用探査艇、円盤型救命機(イスカンダル・ダイヤモンド大陸水没時に森雪を救出)など多数の機を搭載する。