波動砲
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波動砲(はどうほう)は以下の物を指す。
- アニメ『宇宙戦艦ヤマト』シリーズに登場する架空の艦載兵器の名称。
- 霧の濃い夜間に望遠鏡と懐中電灯を利用して行う科学遊び。
- 1以降のアニメ・ゲーム作品における、1に類する架空の艦載兵器・搭載兵器の名称。
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[編集] 宇宙戦艦ヤマト作品世界の波動砲
外宇宙航行機関波動エンジンの出力を利用する、艦載砲というより艦自体を巨大砲身と成すコンセプトの大量破壊兵器。そのため、宇宙艦の軸線に沿って艦首に発射口を配置するレイアウト以外はありえず、照準はもっぱら艦自体の姿勢制御を持って行う。旋回砲塔に載せたり、地上の固定砲台として建造された例は、デスラー砲を含めて登場しない。
正式名称は「タキオン波動収束砲」。但し、この名称は、タキオン砲であろうという基本考証も含めてファンダムが考案して広まったもので、作中では使われていない。宇宙戦艦ヤマトのSF考証の精度は、初回放映当時テレビアニメとしては画期的に詳細だったとはいえ非常にむらがあり、作品からはむしろ「波動エネルギー砲」以上のことを配慮していない節が伺える。
ガミラス軍はデスラー砲と呼称する同様の艦載兵器を保有しており、一部のファンは波動砲と同原理と確信している。その根拠は、俗に「原作版」とよばれる松本零士によるコミック作品での同エピソードで「デスラー砲」と同ビジュアルの艦載砲が「波動砲」とされていることなどによる(実際は、これがタキオン砲なら、命中事前にエネルギーの接近を察知することは原理的に不可能である)が、アニメ作品中では、劇中、ヤマトに向かって発射されたデスラー砲のエネルギー束を、真田技師長が「敵の波動砲だ!!」と分析する台詞(日本一のヤマトファンこと和田氏の分析より)のみである。
波動砲やデスラー砲を直接防ぐ方法として、空間磁力メッキ(「松本版」では「空間メッキ防護膜」)が知られている。ガミラス戦から地球帰還時、真田志郎ヤマト工場長がガミラス冥王星基地の反射衛星砲のシステムをヒントにひそかに開発していたものを咄嗟に使用し、跳ね返された自らのデスラー砲でデスラー艦は撃沈される。(この時、デスラー艦とともにデスラーは死亡したとされるが後の作品にてデスラーは生存していることとなる。)ガルマン・ガミラス帝国東部方面総司令ガイデル提督の移動要塞がヤマトを捕獲した際の要塞の内部にこれが装着されていたが、これはむしろ、本家反射衛星テクノロジーの流用であろう。
[編集] 第1作『宇宙戦艦ヤマト』における波動砲とその位置付け
波動砲を装備している艦船はヤマトのみであるため、ヤマトに搭載された波動砲の仕様がその全てとなる。正式名称は「艦首波動砲」。宇宙戦艦ヤマトの主砲(但し、作中でも「主砲」とよばれているのは旧帝国海軍戦艦大和の主砲である三連46糎砲を改修した三連ショックカノンであり、考証の混乱がある)。作中の登場人物、真田志郎ヤマト技術班長の台詞によれば、波動エンジンで生み出される全エネルギーを使用し、小宇宙一つ分に匹敵するエネルギーを一度にたたき出す、と説明される。発射スキームは、まず波動エンジン再始動に備えて事前に艦内すべての機能を停止してスターターのエネルギーを確保しつつ、波動エンジンを非常弁を閉鎖した上で全力運転し、生成した高出力タキオン粒子を強制的に艦首の薬室内に充填、砲手がトリガーを引くと同時にストライカー突入ボルトが後方から薬室内のタキオン粒子を一気に艦首方向に押し出す。イスカンダル遠征時の仕様ではエネルギー充填率120%での発射例しか確認されておらず、エネルギー伝導管の改修後もワープとの連続使用は不可であった(バラノドン迎撃のためワープ直後に使用した際は、艦が損傷した)。発射時には強烈な閃光と衝撃を発生するため、第一艦橋など窓のある部屋にいる乗員は目を保護するゴーグルをかけ、全乗員が物理衝撃に備える必要がある。射撃時には射撃手(戦闘班長が務めている)が引鉄を引く前に「対ショック、対閃光防御!」と号令をかける描写が毎回あり、それに合わせて乗組員がゴーグルをかけているが、ショックに対しての防御動作は、ガミラス星において発射された場面(発射直前に『耐ショック用意』の号令と共に乗員がシートに深く座り身構えている)を除けば、特になされている様子はない。
最初の使用は木星でのガミラス帝国浮遊大陸前線基地との交戦時。その威力はガミラスの基地のみならず、オーストラリア大陸程の大きさを持っていた浮遊大陸そのものをたった一撃で消し去ってしまったため、ヤマト技師長真田志郎は「許されないことをしてしまったのではないのか」と漏らしたほどである。ただし、すぐ直後の冥王星での戦いで、同じ真田志郎が波動砲の使用を進言しているが、今度は艦長沖田十三が冥王星原住生物に配慮してそれを最終局面まで留保し、結局使用されなかった(これらの作劇例は、ガミラス星本土決戦の結果も合わせ、波動砲が遊星爆弾と同様に、作品の製作された1970年代前半における核兵器に関する世相を仮託された最終兵器として描写されていることを意味する)。
[編集] 第2作『さらば宇宙戦艦ヤマト』以降の波動砲
ヤマト以外に波動エンジン及び波動砲を搭載する艦船が複数登場する。波動砲にもバリエーションが生まれ、『さらば宇宙戦艦ヤマト』・『宇宙戦艦ヤマト2』で地球防衛艦隊の旗艦アンドロメダ に2門装備され、他の地球防衛艦隊の主力戦艦にも1門装備された、作中では波動砲の2倍のエネルギー量があるとされる拡散波動砲は、無駄に高エネルギーで効果範囲の狭い波動砲の運用上の欠点を比較的低威力広範囲型に改良したものである。ショットガンのように、ある程度の距離を進んだ後エネルギー流が飛び散り、飛散範囲内にあるものをことごとく焼夷する。オーバーチャージされた飛散性タキオンエネルギーを収束型タキオンエネルギービームの薄い膜で覆ったようなエネルギー弾で、外部ビーム幕が減衰すると内包された飛散性エネルギーが炸裂することにより拡散する。このため、ある程度の拡散点の精密調整も可能。『宇宙戦艦ヤマト 完結編』では、地球艦隊の戦艦・巡洋艦に装備されている波動砲は拡大波動砲(聞き方によっては爆雷波動砲ともいう)と言われたが、作品を見る限りは直線的な軌跡となっており、ヤマトの波動砲との違いは不明である。ヤマトが装備しているものを(無印の)波動砲、白色彗星の外殻ガスを吹き飛ばした際に急遽改造した、拡散波動砲とは逆にエネルギーに焦点を結ばせる仕様を「収束波動砲」と、ファンは呼び分けている。ヤマト自体も何度か改修された結果、エネルギー充填率100%以下での波動砲発射例が確認され、波動カートリッジ弾、波動爆雷という派生兵器も開発された。 波動砲を装備した艦による艦隊が編成できるようになると、敵艦隊の進軍に対し等間隔の面状に艦を配し、一斉に波動砲を発射し敵艦隊を撃破する波動砲戦という戦法が考案された。この戦法は地球連邦艦隊の特徴的な戦法となり、白色彗星帝国戦役、ディンギル帝国戦役などで使用された。
波動砲を最終兵器としてぎりぎりまで使用を自重する作劇は最早なされておらず、むしろ発射シーンを単なる見せ場の一つとしているようにうかがわれる。
[編集] アニメ史上の評価と後の作品への影響
- アニメの主人公(およびその乗機)が、通常武装と別個に最終局面まで用いないスーパーパワーを所持している、という設定は、波動砲に始まったものではない。『レインボー戦隊ロビン』のミラクルノヴァ、『宇宙エース』のプラチナ光線、『サイボーグ009』の004内蔵核(原作・テレビでは未使用)、『科学忍者隊ガッチャマン』の科学忍法・火の鳥、『新造人間キャシャーン』の超破壊光線などが先駆的なものとして挙げられる。しかし、惑星破壊級の威力を持った主人公側最終兵器はヤマトの波動砲が嚆矢であり、以降も『伝説巨神イデオン』の波導ガン・イデオンソード、『六神合体ゴッドマーズ』に登場するガイヤー搭載の反陽子爆弾、『トップをねらえ!』のガンバスターの8大兵器、『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』の統一場粒子兵器ザッパー・相転移兵器ブラスター、『機動戦艦ナデシコ』の相転移砲、『勇者王ガオガイガーFINAL』のゴルディオンクラッシャーなど、類例は意外にも多いとはいえない。
- 発射シーケンスを描くことで臨場感とその威力の程を演出した超兵器としても『ゼロテスター』のオメガゼロビームに一年遅れる。しかし、長いタイムラグを要する巨大砲の発射時に、砲口奥に光の粒子が集まって徐々に輝度を増すと同時に動作音のテンポとピッチが上がり、両者が最高潮に達したところで発射(発動)という、超兵器の威力と緊迫感(および連続速射の不可能性)をビジュアルと効果音で印象づける「溜め」の演出を完成した形で創出した功績は大きく、以後様々なアニメ作品でその影響を受けた演出が頻出し、すでに誰もその模倣性を指摘しない「お約束」の一つとなった。『宇宙空母ブルーノア』の反陽子砲、『超時空要塞マクロス』の主砲や地形兵器であるグランドキャノン、『機動戦士Zガンダム』のコロニーレーザー、『機動戦艦ナデシコ』のグラビティブラストなど巨大砲の発射描写以外にも、『ドラゴンボール』のかめはめ波、『スレイヤーズ!』のドラグ・スレイブなど魔術・超能力系の描写にもその影響を見ることが出来る。この演出の認知度から「波動砲」は「溜める超威力ビーム兵器」を意味する一般名詞としても用いられるようになっている。
- 『機動戦士ガンダムSEED』では、最も威力が高い搭載火器だが使い勝手が悪い為に主砲とは扱われない特別装備砲(特装砲)というコンセプトの艦載砲、「陽電子破城砲ローエングリン」が登場するが、そこにも明らかに「波動砲」の影響が見られる。事実、設定担当に監督の「波動砲を積みたい」というオーダーがあった事が後に語られている。
[編集] 遊びの波動砲
言葉の語源は上記の波動砲からである。山の中腹にキャンプを設営したりすると、夜間、霧が降りてくる。そのときに行う遊びである。天文マニアの間に広まった遊びでもある。主に口径30cm以上の望遠鏡で行う事が多い。1台、30万円~50万円の望遠鏡で行う超高価な遊びでもある。
[編集] 用意する物
強力なライト2個。口径の大きい望遠鏡2機。2インチの接眼レンズのある望遠鏡が望ましい。
[編集] 遊び方
接眼部にライトを当て、お互いに離れた地点から相手目掛け望遠鏡を向け照射する。途中に霧があるため、光跡が目視でき、また照らされた相手は一瞬目がくらむ事がある。上空に向けて行うとライトセーバー遊びとなる。時間と共に霧が晴れてくるので晴れた時点で終了となる。
[編集] 遊ぶ際の注意事項
- 関係の無い第三者や車に向けて照射してはならない。
- この遊びを行うと30分間は目が慣れず(暗視に必要な視紅素があらかた破壊され、再生に時間がかかる)、天文観測を行う事が出来なくなる。どうしてもやりたい場合は事前に片眼を閉じておく事。
[編集] ゲーム作品における波動砲
- 『R-TYPE』シリーズの主役戦闘機Rシリーズには各種波動砲が搭載され、特にR-9には波動砲およびその発展形としての拡散波動砲が搭載されているほか、シリーズを通して10種類以上(最終作『R-TYPE FINAL』においては50種類以上)の「波動砲」が登場している。やはり全てが溜めて発射する兵器であり、機首前方にエネルギーをチャージする演出が存在する。その際には、攻撃ボタンを押し続けるために(回避行動はできるものの)一時的に無防備となる。ただし、中には溜めるというより特殊兵装のボタン的意味合いしかない種類も存在する。また、R-TYPE以降のシューティングゲームにおいていくつかの作品にも同様の溜め系とも呼ばれる武器が見られる。総じて戦闘機の通常攻撃と比べて遥かに高い破壊力は持つものの、搭載するのが戦闘機クラスであるためその作品内での戦艦の主砲クラスの破壊力に落ち着くことが多い。ただし、敵対する戦艦等に波動砲が搭載された場合は惑星破壊級の威力と設定されることもあり、前述の『R-TYPE FINAL』においてもこのような空中戦艦を戦闘機1機で攻略するといった場面がある。
- 『鋼鉄の咆哮』には「入手した部品で自艦を設計できる」という特徴があるが、入手可能なパーツに波動砲が存在する。この波動砲は全兵装中でも最大級の大きさと重さを持っているため搭載可能な船体が限られるという欠点があるものの、ゲーム中でも最大クラスの飛び抜けた攻撃力を誇っている。またその発射時には機関及び全兵装を停止してチャージを行ってから極太のビームが発射されるという明らかにヤマトの波動砲を意識した演出が行われる。