真田志郎
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真田 志郎(さなだ しろう)は、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』に登場する、架空の人物。(声:青野武)
宇宙戦艦ヤマトの工場長兼技師長。宇宙戦艦ヤマトIIIでは副長も務める。2171年生まれ。シリーズを通して様々な場面で名参謀ぶりを発揮する。
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[編集] 宇宙戦艦ヤマト
小学生の時、家族で遊びに行った月の遊園地での事故で、姉の命と自らの手足を失う。以来、彼にとって科学は屈服させるべき敵となり、絵画好きの少年は長じて科学畑のプロになった。ビス一本抜くだけで取り外し可能な義手義足には曰く「切り札」の爆弾を組み込んでいる。
宇宙戦士訓練学校を経て、地球防衛軍の技術士官となる。古代進の兄、古代守と同期で親友、後には守の弟である進を本当の弟のように思い、彼を公私にわたって手助けする。地球艦隊にとって最終決戦である冥王星会戦の時は富士山麓の地球防衛艦隊基地・第三ドックの技術長を勤めていた。古代守が艦長のミサイル艦「ゆきかぜ」を整備したが、この時同艦に地球への帰還性能を保証できなかったと悔やみ、後に古代進にそのことを謝罪した。このシーンは後に、イスカンダルで古代守が生存していた事を知らされ、「古代守が生きていたって?!」と喜び勇んで艦長室に駆け付けて来る場面に繋がり、普段沈着冷静な彼には珍しく、親友の無事に驚きかつその喜びを全面に出したシーンであった。
イスカンダルへ向かう航海では、ヤマトの工場長に就任。科学技術全般に精通していて、アストロバイク、シームレス機、空間磁力メッキ等、色々なものを密かに開発した。また、ガミラス冥王星基地反射衛星砲破壊工作隊指揮、アステロイドシップ計画、デスラー機雷排除、無人宇宙要塞爆破、ドリルミサイル逆転、そしてイスカンダルのスターシアより部品の形で受領したコスモクリーナーDの艦内最終組立てなど、多くの場面でその類稀な独創力と行動力を発揮しヤマトをたびたび危機から救った。
[編集] さらば宇宙戦艦ヤマト
地球防衛軍科学局に勤務。古代進が持ち帰った謎のメッセージを解析、接近中の白色彗星との関連を危惧して古代と共に防衛会議で調査・救済を提案するが却下され、古代と共に旧乗組員に呼びかけて廃艦処分となったヤマトで旅立つ。
白色彗星帝国ガトランティスに侵入しての決戦で、艦長である古代をヤマトに帰還させ、自らは斎藤始と共に動力炉へ辿り着き、斎藤に庇われながら爆弾を仕掛ける。最後は無数の銃弾を受けて立往生した斎藤の亡骸を抱え、点火スイッチを押して任務完遂、動力炉と運命を共にした。 なお、この作品内ではヤマトの「元技師長」と言っている。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト2
地球防衛軍科学局局長。全自動化された最新鋭の宇宙戦艦アンドロメダを始めとする地球防衛軍の新型宇宙艦艇に疑念を持つ。白色彗星観測とメッセージ解析はさらば宇宙戦艦ヤマトとほぼ同様であるが、本作ではヤマト発進へとはやる古代を抑えて冷静な判断をするよう落着かせる役回りになっている。
シリーズを通じて、艦長代理の古代を補佐し精神的に導く姿が見られる。ヤマトの装備をチューンナップしていたが、戦争のために新兵器が役に立つことには複雑な心境をのぞかせる。都市帝国での戦いでは、義肢である左脚を撃ち抜かれて動力炉までは同行せず、古代と共にヤマトへ生還し、救命艇でヤマトを脱出する。古代にデスラーにならって、何としてでも生き延びるべきだと語る。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち
ガミラス爆発のため、暴走したイスカンダル救助のため、出撃したヤマトが、イスカンダルの古代守とスターシャに通信を送り、脱出するよう説得するシーンでは、スターシャに呼びかける森雪とともに、親友である古代守に向け「古代、なぜ脱出しないんだ!」と必死に呼びかける。真田と古代守、スターシャと森雪、それぞれの関係が浮き彫りになった名シーンである。
また、テレビ放映時にはカットされたが、古代守が、暗黒星団帝国のデーダー艦隊に苦戦するヤマトとデスラー艦隊を支援するためイスカンダルを再び暴走させようと地表の裂け目に雷撃し、マグマを噴出させようとする場面がある。その際、それに気付いた暗黒星団帝国の戦闘機が守の乗る水雷艇を狙うが、コスモタイガー隊を指揮していた古代進は、ヤマトに迫る敵旗艦プレヤデスに対処するため、あえて守を援護せずにコスモタイガー隊を帰還させる非情の決断を下す。守はそれを見ながら「進、それでいいぞ」と呟くが、敵戦闘機が迫り、大ピンチに陥る。だがその時、真田がコスモタイガーIIを駆って自ら出撃、敵戦闘機を次々と撃墜し、古代守を援護した。第一艦橋に戻ってきた真田に、進は駆け寄り、無言で顔を見合わせ、感謝の意を示す。このシーンは、カットされたこの場面の名残として、実際に放映された部分にも残っている。
[編集] ヤマトよ永遠に
地球防衛軍司令長官藤堂平九郎の命により、小惑星イカロスの天文台にて秘かにヤマトを保管・改造するかたわら、宇宙戦士訓練学校校長山南敬助の下で生徒の訓練にたずさわっていた。暗黒星団帝国との戦いでは敵の謎の超大型ミサイルをハイペロン爆弾だと見破る。
また、古代守とスターシャの娘サーシャを姪の真田澪として預かり、教育していた。この為、サーシャに対しては自身の娘のような感情を抱いている。この作品前半で、サーシャの実父であり、自分の長年の親友であった守が、司令長官を救うため殉職したことを知らされるが、それについての彼の想いはあまり明確には本作中で表現されてはいない。
デザリアム本星攻撃の際、サーシャがデザリアムに残っていることで躊躇している古代進を怒鳴りつける一方、自身にも耐え難い葛藤があると漏らしている。
[編集] 宇宙戦艦ヤマトIII
航海班長島大介と共にヤマトの副長に任命され、艦長となった古代を補佐して「第二の地球探し」に努める。
ヤマトがガルマン・ガミラス東部方面軍移動要塞に捕獲された際、周囲の壁面に施されていたメッキ状の物質を、一見で反重力メッキの類と看破し、要塞からの脱出が不可能に等しい事を悟る。
ガルマン・ガミラス帝国のフラウスキー少佐とともに太陽の核融合異常増進を制御に向かうが、失敗。自決しようとするフラウスキーに翻意を促そうとしたが、フラウスキーは真田と部下を脱出させた後、船ごと太陽に突入した。
シャルバート星の神殿地下に封印された超兵器類を一見しただけで、シャルバート人の科学力が非常に卓越したものである事を理解した。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト 完結編
ディンギルの最終兵器「ハイパー放射ミサイル」を初見で「あれはハイパー放射ミサイルだ!」と看破し、防御装置を開発。見事ヤマトの危機を救う。都市衛星ウルクでの戦いでは、考古学の知識を活用し「古い地球文明を受け継いでいるなら都市は神殿を中心に構成されている」と進言し、敵中枢部の位置を特定する。
[編集] その他
- 彼の名ゼリフは「こんなこともあろうかと」と一般にいわれているが、このセリフは漫画版『宇宙戦艦ヤマト』最終話とパート2の第10話「危機突破!吠えろ波動砲」でしか登場しない。しかも放映時のセリフとも異なっている。しかし、ファンの多くはこのセリフが印象に残っているらしく、近年発売された劇場版DVDのCMでは「こんなこともあろうかと、このDVDを用意した」で復活した。
- また、新兵器やアイテムの開発の際にはテストなしにいきなり実戦投入している。波動カートリッジ弾は「まだテストしていない」といいながらゴルバ型要塞でいきなり使用、対ハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲では「テストは?」と聞いた古代進に「そんな暇あるか」と間髪入れずに返答している。これも上記のCMのラストで「テストはまだだがいけるぞ、古代」と言っている。
- そんな真田も最初は森雪がパート1の最終話でコスモクリーナーDを始動させる際に「まだ試運転もしていない」と一度は制止したのだから、彼を決定的に変えたのは森雪ではないかとも考えられる。
- 新米俵太、板東平次といった新人の部下は登場したものの、全シリーズを通して固定された副班長が一度も登場しなかった部署は彼の受け持つ技術班だけである。
- ヤマト乗組員の命名(特に苗字)は、戦国武将や幕末の人物、新撰組隊士など歴史上の人物をモデルに採ったものが多く、彼の苗字も武将の真田氏(真田幸村)をモデルとしている。実際、初期設定の氏名「真田佐助」は、「真田十勇士」に登場する幸村の家来である「猿飛佐助」の名を真田姓に付けたものであるが、後述の注の理由から、アニメ版本編中の名前は「志郎」となっている。
- 豊田有恒・原案の小説版「宇宙戦艦ヤマト」では、真田は、後のテレビ・映画作品と同様に「ヤマト技師長」の立場であるが、名前は「真田佐助」となっていて、性格は全く正反対の「傲慢で科学第一主義者、人間より科学を信じる」人物として描かれている。(ちなみに1977年7月発売のLPレコード盤「宇宙戦艦ヤマト」(映画版「宇宙戦艦ヤマト」の劇場公開と合わせて発売された、主題歌とドラマの一部を収録したLP)での人物紹介でも名前、性格とも豊田版小説と同様になっている)恐らく、構想段階において、何らかの理由で真田のキャラクターについて、反抗者から主人公・古代進の名参謀役へと大変換が行われ、名前をそれに伴って変えられたものと思われる。それは薮助治の項目にある、脚本家によるイスカンダルにおける「反乱」首謀者の取り違えが影響しているとも考えられる。