信託
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信託(しんたく)(英: trust)とは、ある人Aが自己の財産を信頼できる他人Bに譲渡するとともに、当該財産を運用・管理することで得られる利益をある人Cに与える旨Bと取り決めること、およびそれを基本形として構築された法的枠組みを意味する。Aを委託者(settlor, trustor)、Bを受託者(trustee)、Cを受益者(beneficiary)と呼ぶ。信託された財産を信託財産と呼ぶ。受託者は名目上信託財産の所有権を有するが、その管理・処分は受益者の利益のために行わなければならないという義務(忠実義務)を負う。
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[編集] 沿革および日本への移入
歴史的には、中世英国法の「ユース」 (use) に端を発したと言われ、衡平法 (Equity) 裁判所で発達、更に英米法圏で発展し、日本の信託法はカリフォルニア州信託法とインド信託法をモデルにした、と言われている。
[編集] 日本における信託
日本においては、他人(受託者)に一定の目的に従い財産の管理または処分をさせるため、その者に対して財産権(例: 所有権)の移転その他の処分[1]をすること(信託法1条)と定義され、信託法によって規律される。
信託は、金融制度のインフラ[2]として活用されているが、社会の公器として、高齢者・障害者のための財産管理制度(福祉型信託)としても普及することが期待されている。[3]
営業信託は信託法のほか信託業法によっても規律される。歴史的に信託銀行がその中心的な担い手として発展してきたため、証券投資信託、年金信託等、主に金融資産を運用するスキームとして用いられることが多い。しかし、動産・不動産を運用するスキームにも使われ、また、遺言信託や公益信託等、営業信託とは異なる用いられ方もする。2004年11月26日の信託業法改正によって、運用財産には知的財産権等が加わることになった。
信託会社は、終戦直後以降、信託業務だけを取り扱う会社は皆無で、日本では長らく信託銀行7行のみの「信託兼営」の時代が続いてきたが、2004年の信託業法改正で銀行併営でない信託会社の新たな設立・発展が期待されている。
2006年現在において日本では信託は委託者・受託者間の契約または委託者の遺言によってのみ設定可能であるが、英米などでは委託者が受託者を兼ねることも可能であり、これを信託宣言または自己信託と呼ぶ。2006年12月に成立した新しい信託法の施行の1年後に、日本でも信託宣言が可能になる。
[編集] 分類
- 契約による信託・遺言による信託・信託宣言による信託
- 自益信託(委託者=受益者)・他益信託(委託者≠受益者)・受益者の定めのない信託[4]
- 営業信託(商事信託)・非営業信託(民事信託)
[編集] 脚注
[編集] 関連項目
- 貸付信託
- 信託会社
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