兒玉源太郎
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兒玉 源太郎（こだま げんたろう, 嘉永5年閏2月25日（1852年4月14日） - 明治39年（1906年）7月23日）は、日本の陸軍軍人。陸軍大将勲一等功一級伯爵（なお、現在では通常児玉 源太郎の表記の方が多い。「兒」は印刷字体、「児」は手書き書体）。
東郷平八郎、乃木希典と共に日露戦争の英雄として有名である。
国際情勢や各国の力関係を考慮に入れ戦略を打ち立てることの出来る広い視野の持ち主であり、情に脆く家庭を大事にし友誼に厚いといった長所の反面、短気で激情型の性格で人間関係において無用の軋轢を招くことがあった。しかしながら天才肌の人間によく見られるような相手を見下したり、我を張り通すといった面はなく、内省的に己を見つめる視点を常に保持し、諧謔の精神を持ち、地位や権力に固執することはなかったので、人々から慕われた。
また、彼は己のパーソナリティの限界を弁えたが故、自分にない人格的長所を持つ乃木に対する尊敬の念を終生抱き続けたと思われる(後述）。
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[編集] 経歴
- 1852年 - 周防国都濃郡徳山村（現･山口県周南市）に徳山藩士 兒玉半九郎の長男として生まれる。父とは5歳で死別する。
- 1870年 - 軍曹として陸軍入り
- 1880年 - 歩兵第二連隊長
- 1889年 - 陸軍少将
- 1895年 - 男爵
- 1898年 - 台湾総督
- 1900年 - 陸軍大臣
- 1903年 - 内務大臣・文部大臣
- 1904年 - 陸軍大将、参謀本部次長
- 1906年 - 参謀総長在任中に脳溢血で死去、史上初の金鵄勲章功一級を明治天皇より下賜。他に陸軍次官なども歴任。
生まれは長州藩の支藩「徳山藩」の中級武士（百石）の家であった。父親は早世し、姉婿が家督を継ぎ養育された。だが源太郎が13歳のとき義兄が佐幕派のテロにより惨殺され、家禄を失い一家は困窮した。
熊本鎮台准参謀時の明治9年（1876年）には神風連の乱鎮圧、同鎮台参謀副長（少佐）時の明治10年（1877年）には西南戦争・熊本城籠城戦に参加。鎮台司令長官の谷干城少将を良く補佐し薩摩軍の激しい攻撃から熊本城を護りきる。この経験が後の日露戦争に生かされる事となる。ちなみに、この時東京から現地へ真っ先に送られた電報「児玉少佐ハ無事ナリヤ」は、当時弱冠24歳の一少佐にかける期待がどれほどのものであったかを物語る逸話として有名。
台湾総督時代には、日清戦争終了後の防疫事務で才能を見いだした後藤新平を総督府民政長官に任命し、全面的な信頼をよせて統治を委任した。後藤は台湾人の生活文化を尊重し、インフラの整備を進める等穏健政策を行い、台湾人から厚い信頼と尊敬を受けたとされる。今日の台湾に於いて比較的親日派が多いのはひとえに兒玉・後藤の功績による所が大きいという。
日露戦争開戦前には内務大臣を勤めていたが、 明治36年（1903年）に対露戦計画を立案していた参謀次長の田村怡与造が死去し、大山巌参謀総長から特に請われて降格人事である田村の後任を引き受ける。日本陸軍が解体する昭和20年（1945年）まで、降格人事を了承した人物は兒玉源太郎只一人である。
日露戦争時には満州軍総参謀長を務める。旅順攻囲戦においては、満州軍総司令官大山巌の承認を得て第三軍司令官乃木希典大将の指揮権に介入し、作戦を成功に導いたとされる。しかし、旅順陥落直前に督戦に訪れたことは事実であるが兒玉の指揮権介入を事実として証明する一次資料は存在せず、このエピソードが広く知られるきっかけとなった司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』中の創作という意見もある。ただ、軍司令官の任免権は天皇だけが有していることから、勝手に司令官の指揮権に介入するということは天皇に対する反逆行為であり、もしそのような一次資料が存在しているならば兒玉源太郎は逮捕されているはずであり、そういう面から見れば、このような一次資料が存在していないのも当然といえば当然である。 ただ、兒玉が旅順に到着した直後に、それまで難攻不落だった203高地がいとも簡単に陥落した事実から推測すると、兒玉が乃木の指揮権に介入したか、それとも指揮権は乃木に持たせたままで兒玉自身が考えていた作戦を乃木に教え、それを乃木が実施したのか、のどちらかであると思われる。 ゆえに、どちらにしろ203高地陥落は兒玉の功績であると思われる。 ただ、当時まだ新兵器であった機関銃を多数備え付けていたロシア軍の要塞を突撃をメインにして陥落させるのは、ほとんど不可能であり、それができなかった乃木を無能だと評することは酷であり、適当ではない。それよりは、そのような状況下でも203高地を簡単に陥落させた兒玉の有能さを評価すべきである。
一般に知られている説によれば、1904年12月5日、乃木が攻めあぐねていた203高地に対し火力の集中という要塞攻撃の常識を行うため、 もともと海岸防衛用の恒久据え付け砲で移動が困難な28センチ榴弾砲を、敵陣に接近した場所まで1日で配置転換を行うという奇抜な作戦を取った。砲撃と突撃隊の突撃を同時に行いたった半日で陥落させた。さらに203高地に弾着観測所を設置し、砲兵の専門家の助言※1を無視して203高地越えに旅順湾内のロシア旅順艦隊に28センチ砲で砲撃を加え、これを全滅させた。これによりバルチック艦隊は単独で日本の連合艦隊と戦わざるを得なくなり、日本海海戦における日本の連合艦隊の作戦行動を有利に導いた。これらのことから、兒玉の指導による203高地陥落が日露戦争勝利の決定打になったと言われている。結果だけを見れば、兒玉が赴いた事によって203高地が陥落が早まったのは事実であり、兒玉の作戦指揮は全て図に当たった。司馬氏の小説が疑問視されるにおいては、乃木の軍事的能力の無能さを過度に指摘する事などもあるといわれている。
日露戦争勝利のために心血を注ぎ込んだともいわれ戦争終結後は急速に体調を崩し、翌年急逝（暗殺説あり）。
※1 専門家の指摘は以下のとおりである。
重厚な装甲が施された艦からの報復射撃がされた場合、無防備の観測点及び榴弾砲陣地は一方的に損害を受ける恐れがある。従って、それ相応の防御陣地を構築してから射撃を行う必要がある。
これに対して兒玉は、反撃の機会を与えず砲弾を撃ち込み続ければ、反攻能力を失わせることが可能であると考え、これを実行した。結果的には兒玉の作戦は殆ど的中し、敵艦からの効果的な反撃は一切無かった。 陸軍による本格的な連続攻撃は10月から始まったが、先行して8月から海軍が重砲を持ち込み、成果を上げていた。この中に永野修身もいた。彼は戦艦レトウィザンを撃破している。
[編集] エピソード
日本軍の参謀育成の為、教官として招かれたドイツ陸軍参謀将校のメッケルから才覚を高く評価され、日露戦争開戦を聞いたメッケルは「日本にコダマ将軍が居る限り心配は要らない。コダマは必ずロシアを破り、勝利を勝ち取るであろう」と述べたという。兒玉の能力を語るエピソードである。
晩年、浅草の凌雲閣（通称十二階）で開催された日露戦争展で、小柄な兒玉をナポレオンに準えて語り合う二人の陸軍将校の傍に歩き寄り「兒玉はそれほどたいした男ではありませんよ」と囁きかけながら立ち去り、「何を言うか」と振り向いた彼らが兒玉と分かり驚く様を見て楽しむと言うというお茶目な面もあった。
乃木とは旧知の間柄であった。ある時（千葉県佐倉東京鎮台第二連隊長時代）、演習で乃木（同第一連隊長）の指揮する部隊を兒玉の部隊が奇襲によって大いに破った時、部下に「気転の利かぬ野狐を七分小玉で打ち上げた」と歌わせ、乃木をからかったという。「気転」は乃木の名「希典」の音読み、「野狐」は「ノギ（乃木）ツネ」。「七分小玉」は小さな花火のことで、身長の低かった兒玉が「一寸に満たないほど小さい兒玉」と自分自身をもじったものであるとされる。兒玉は乃木の軍事的才能の限界を認識しながら、一方で軍人精神と明治人の美意識の体現者として尊敬の念を持っていたともいわれる。日露戦争終結後、旅順攻略における人的被害の大きさから陸軍部内でも乃木を非難する声が上がったが、兒玉は一貫して乃木を擁護したという。兒玉の葬儀に際しては、激しい降雨をおして棺に付き添う乃木の姿が見られたと伝えられる。
神奈川県藤沢市江ノ島および山口県周南市にある兒玉神社は、彼を祀ったもの。
[編集] 陸軍幼年学校との関連
上記の華々しいばかりの戦績に加え、戦後直後に急逝したために、日露戦争後急速に軍備拡張・軍国主義化していく日本と距離をおかれた印象があり、一般的に評価は好意的である。しかし、近年発刊された「陸軍幼年学校体制の研究」（吉川弘文館）等によれば、兒玉が明治25年に執筆・報告した「欧州巡回報告書」が陸軍幼年学校と深く関わりをもつことが指摘されている。彼はドイツにおける軍人教育が皇帝への絶対的な臣従を旨としていることに感銘を受け、日本においてもそれを推進すべきであると主張したのである。
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[編集] 系譜
- 児玉氏
源太郎━━┳秀雄＝忠康 ┣貞雄 ┣友雄 ┣常雄 ┣国雄 ├ヌイ ┣ヨシ ┣仲子 ┣八郎 ┣九一 ┣モト ┗ツル
[編集] 参考文献
- 「史論 児玉源太郎―明治日本を背負った男」中村謙司 光人社 ISBN 9784769813149
- 「知将児玉源太郎―ある名補佐役の生涯」生出寿 光人社 ISBN 9784769803171
- 「天辺の椅子―日露戦争と児玉源太郎」古川薫 文芸春秋 ISBN 9784167357115
[編集] 外部リンク
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