兵頭二十八
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
兵頭 二十八(ひょうどう にそはち、本名、斉藤 浩、1960年 - )は、日本の“軍学者”・よろずライター[1]。軍事・防衛関連の研究・評論を中心としつつその他様々なテーマでも言論活動を行う。
目次 |
[編集] 活動
「特定アジア勢力およびそのシンパによる英語インターネット圏に流布する“反日プロパガンダ”は諸外国の“侮日”を招来し、日本国の生存を危うくさせる域にまで達した」との見解をもつ。従来の保守派は国内だけで反日勢力と論争していたが、反日プロパガンダは既に諸外国に対して大々的に行われており、この状況を打開する必要がある、と論じる。このため、反日プロパガンダに対し確かな史料でもって英文で反駁する「史実を世界に発信する会(英語名 Society for Dissemination of Historical Fact)」と「篤志つうじ倶楽部」の設立を提案した。なお、休止状態が続いている「篤志つうじ倶楽部」の補助・後継として「英訳日本の歴史館」が発足した。内容は「篤志つうじ倶楽部」と同様、民間の愛国ボランティアによる英訳を掲示板に書き込んでいくというものである。
保守系論壇誌『正論』『諸君!』に頻繁に寄稿。定期連載は、『正論』のコラム「cross line」及び『表現者』の「近代未満の軍人たち」。
[編集] 主張
[編集] 核武装
軍事的合理性という観点から日本国の核武装の必要性を主張(核武装論)している。アメリカの「核の傘」によって核抑止は事実上成立しているとの説や、アメリカと核兵器のシェアリングをすれば足りる(日米共同核保有論)という意見は非常に疑わしいとしている。
[編集] MD(ミサイル・ディフェンス)
日本国が導入しようとしている『日本版弾道ミサイル防衛(BMD)』はまったく無益であると断じる。BMD構想は日本に核武装をさせず費用と技術を日本から奪おうとするアメリカの策謀だとし、またマッハ20で飛来するミサイルを撃墜するなど技術的にも不可能だと論じる。
[編集] 憲法
現在有効とされている「日本国憲法」の成立は国際法上無効であり、かつ「日本国憲法」を貫く精神は日本人の国防意識に甚大な悪影響を与えるものだとして、「改憲」でも「護憲」でもない「無効憲法の破棄宣言」を政府に求めている。
[編集] 靖國神社
靖國神社には戊辰戦争で官軍側として戦死した無名の下級兵卒が祀られておらず、その後の戦役においても合祀の基準が明確でないことから、靖國を全国民的な愛国顕彰施設(戦死した英霊が漏れなく全員祀られている)とするためには霊璽簿によって戦死者が合祀される方式を改める必要がある、と主張している。
[編集] 文民統制について
戦前の日本政府に軍部の統制ができなくなったのは統帥権問題の他に、外国には必ずある政府直属の武装警察が日本には存在せず(アメリカの場合はさらに州兵及びSWATなど警察、またミリシアが存在)、政府に逆らう軍人を文民の武力で抑止できなかったからだと主張している。
[編集] 侵略の定義
別宮暖朗(エコノミストを経て現在は歴史評論家)説の影響を受け、侵略国とは「作戦計画に基づいて先制攻撃をかけた側」とする。大日本帝国も締結したパリ不戦条約に違反したかどうかが問題であり、「戦場がどこか」「民族自決の大義」などでは判定されないと指摘。よって1928年以降の日本軍の先制攻撃で始まった満州事変、太平洋戦争は日本の侵略となるが、1937年8月の支那事変(日中戦争。国民党軍の上海の日本租界への計画的先制攻撃――第二次上海事変――により開戦)は蒋介石-中華民国の侵略であり、まず非難されるべきは中国側の重大な条約破りであるとする。中国に対しては日本が全面的に悪いとし、一方で真珠湾攻撃を自衛とする日本の多くの論者は、侵略の定義を誤っていると主張している。
[編集] 市民と町人の違い
古代ギリシャ、ローマでは「市民」とは重装歩兵として戦争に行く人々の事であり、戦争に行く義務が無い人々は奴隷と呼ばれていた事、西洋中世城塞都市では城壁防護が市民の義務であった事を指摘。それに比べて日本の大都市の町人は、戦争は武士がやるものと考えており、自分の権利を戦い守るという発想自体がない事が、「マック憲法」を無効にできない大きな原因であると主張している。
[編集] 著作
[編集] 単著
- 『日本の陸軍歩兵兵器』(銀河出版, 1995年)
- 『日本の防衛力再考』(銀河出版, 1995年)
- 『ヤーボー丼――いかにして私たちはくよくよするのを止め、核ミサイルを持つか』(銀河出版, 1997年)
- 『たんたんたたた――機関銃と近代日本』(四谷ラウンド, 1998年)
- 『有坂銃――日露戦争の本当の勝因』(四谷ラウンド, 1998年)
- 『イッテイ――13年式村田歩兵銃の創製』(四谷ラウンド, 1998年)
- 『日本海軍の爆弾』(四谷ラウンド, 1999年)
- 『日本の高塔――写真&イラスト』(四谷ラウンド, 1999年)
- 『武侠都市宣言!――戦後「腐れ史観」を束にして斬る』(四谷ラウンド, 2000年)
- 『「日本有事」って何だ――「超カゲキ」vs「常識」問答』(PHP研究所, 2000年)
- 『軍学考』(中央公論新社[中公叢書], 2000年)
- 『日本のロープウェイと湖沼遊覧船――Japanese Ropeways and Excursion Lake-boat』(教育システム, 2000年)
- 『パールハーバーの真実――技術戦争としての日米開戦』(PHP研究所, 2001年/PHP文庫, 2005年)
- 『「新しい戦争」を日本はどう生き抜くか』(筑摩書房[ちくま新書], 2001年)
- 『地獄のX島で米軍と戦い、あくまで持久する方法』(四谷ラウンド, 2001年)
- 『日本人のスポ-ツ戦略――各種競技におけるデカ/チビ問題』(四谷ラウンド, 2002年)
- 『沈没ニッポン再浮上のための最後の方法――軍学者が語る!』(PHP研究所, 2002年)
- 『学校で教えない現代戦争学――文民のための軍事講座』(並木書房, 2002年)
- 『「戦争と経済」のカラクリがわかる本――アングロサクソン「常勝」の秘密』(PHP研究所, 2003年)
- 『ニュースではわからない戦争の論理』(PHP研究所, 2003年)
- 『ニッポン核武装再論――日本が国家としてサバイバルする唯一の道』(並木書房, 2004年)
- 『あたらしい武士道――軍学者の町人改造論』(新紀元社, 2004年)
- 『精解五輪書――宮本武蔵の戦闘マニュアル』(新紀元社, 2005年)
- 『日本有事――憲法を棄て、核武装せよ!』(PHP研究所, 2006年)
[編集] 共著
- (宗像和広)『陸軍機械化兵器』(銀河出版, 1995年)
- (宗像和広)『日本の海軍兵備再考――なぜ帝国はアメリカに勝てなかったか?』(銀河出版, 1995年)
- (宗像和広/三貴雅智/小松直之)『並べてみりゃ分かる第二次大戦の空軍戦力』(銀河出版, 1997年)
- (板橋しゅうほう)『ヘクトパスカルズ』(文藝春秋 <コミック>,1997年)
- (宗像和広)『日本陸軍兵器資料集――泰平組合カタログ―ミリタリー・ユニフォーム8』(並木書房, 1999年)
- (別宮暖朗)『戦争の正しい始め方、終わり方――小さな戦争が大きな戦争を食い止める…』(並木書房, 2003年)
- (別宮暖朗)『技術戦としての第二次大戦――日本vs中ソ米英篇』(並木書房, 2005年)
- (籏谷嘉辰)『日本刀真剣斬り――陸軍戸山流で検証する』(並木書房, 2006年)
- (別宮暖朗)『大東亜戦争の謎を解く――第二次大戦の基礎知識・常識』(光人社, 2006年)
- (別宮暖朗)『東京裁判の謎を解く───極東国際軍事裁判の基礎知識』(光人社,2007年)
[編集] 来歴
出身地は長野県長野市。高校卒業後いくつかの職を経て1982年、陸上自衛隊に入隊(任期制自衛官)。東部方面隊に配属となる。2年後、北部方面隊にて任期満了、除隊。1988年神奈川大学外国語学部卒業、1990年東京工業大学大学院理工学研究科社会工学専攻博士前期課程修了[2]。学位は理工学修士(東京工業大学)。卒業後はライターとなる。函館市に在住。
[編集] 註
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 兵頭自身の寄稿する「兵頭二十八の放送形式」コーナーあり
- 絶版書籍のオンライン販売
- 兵頭が委員を務める
- 兵頭が発案した「篤志つうじ倶楽部」の補助・後継を担う掲示板