千住火力発電所
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千住火力発電所(せんじゅかりょくはつでんしょ)は、かつて隅田川沿いに存在した東京電力の火力発電所。住所は東京都足立区千住桜木町35。日本初の蒸気タービン発電所でもあった。
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[編集] 概要
東京電力の前身となる東京電灯が、1905年(明治38年)に現在の荒川区南千住第二中学校の位置に建設した発電所が始まりで、関東大震災後の1926年(大正15年)に電力の需要増加に合わせて足立区に移転した。
当初25,000kwの出力を持っていたが、順次増設されて最終的には75,000kwの発電能力を持つまでに至った。しかし当初は予備発電所で、本格稼動するようになったのは戦時中からであった。
燃料は石炭であったが発電所の立地が悪かったため貨車による乗り入れができず、千住の停車場まで運んだ石炭は筏に積み替えられ、川船頭により筏にのって運ばれる姿が当時は見られたという(なお、この利権はマルキン(浅草高橋組)の系列になる御所組の山田が握っていたとされる)。
戦後になって石炭の質が低下したことから、1953年(昭和28年)にはボイラー1つが重油使用に切り替えられた。しかし施設老朽化と石油を使用する新発電所が各地に建設されたため、1963年(昭和38年)5月に稼動を停止し、1964年(昭和39年)には取り壊された。
現在、跡地は東京電力足立支社となっている。また、煙突の一部が足立区立元宿小学校で滑り台に使用されている。
[編集] お化け煙突
千住火力発電所は巨大な4本の煙突を持っていたが、この煙突は付近住民などからは「お化け煙突」と呼ばれ親しまれていた。その理由としては、
- 既述のように、建設当初は予備的な発電所であってめったに稼動しなかったため、煙突から時たま煙を吐く姿が「お化け」のようで、火葬場が連想された。
- 見る方向によって、煙突の数が1~4本と変化するから「不思議な煙突」ということで。
の2説があった。
2.については、煙突が菱形に配置されており、また中心に2本並列していた煙突と前後にあった煙突が重なり合って1本に見えることから、真横から見ると1本、斜めから見ると2本ないしは4本、真正面から見ると3本になったと言われる。また常磐線・京成本線からもこの煙突は良く見えており、2本から4本へ(その逆も)変化する姿も眺められたという。
[編集] お化け煙突の模型
お化け煙突の模型と、貴重な映像及び写真が、東京浅草のテプコ浅草館で見られる。模型を見る位置によって煙突の本数が変わるようすが擬似体験できる。
[編集] 煙突の概要
- 構造設計者:内藤多仲
- 材質:鋼板製、内部は耐火煉瓦張り
- 高さ:83.82m
- 内径:
- 項部:4.57m
- 底部:5.44m
- 外径:
- 頂部:4.81m
- 底部:6.40m
- 重量:622t
- 鋼板:166t
- 煉瓦:456t
[編集] 千住火力発電所が登場する作品
[編集] 映画
- 『煙突の見える場所』(1953年、新東宝・ベルリン国際映画祭国際平和賞受賞)
- お化け煙突のためにあるような映画だ。タイトルバックに煙突の航空写真、そして車窓から見た煙突の本数が変わる様子など、この作品ですべて分かる。
- 『女が階段を上がる時』(1960年、東宝)
- 客の家を訪れたバーの雇われマダム(高峰秀子)の背景として4本のお化け煙突が登場する。
- 『いつでも夢を』(1963年、日活)
- まだ木造の西新井橋の向こう、荒川越しにお化け煙突が登場する。
- 『見上げてごらん夜の星を』(1963年、松竹)
- 町屋付近の隅田川越しにお化け煙突が登場する。
- 『九ちゃんの大当りさかさま仁義』(1963年、東映)
- 映像としては登場しないが、主人公の坂本九たちが度々「お化け煙突の見えるアパートに住んでいる」と口にする。それだけ有名だったことが分かる。
[編集] 小説
- 『無邪気な人々』(1952年、椎名麟三)
- 『おばけ煙突の見える路地』(1998年、たかだしずえ)
- 『おばけ煙突』(1976年、つげ義春)
[編集] 漫画
- 『おばけ煙突』(1958年、つげ義春)
- 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(秋本治)
- 「おばけ煙突が消えた日の巻」(1988年、週刊少年ジャンプ18号掲載・59巻収録)
- 「希望の煙突」(2004年、週刊少年ジャンプ18号掲載・141巻収録)
[編集] アニメ
- 『おばけ煙突のうた』(1993年、早乙女勝元原作・アニメ絵本あり)
- 『エスパー魔美』(1987年~1989年、テレビ朝日系列)
- 『鉄人28号 (2004年版アニメ)オープニング』(2004年、テレビ東京)