大阪港
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大阪港(おおさかこう)は、大阪府大阪市にある港湾で、国の指定特定重要港湾および中枢国際港湾。1868年に開港。主に、港区、大正区、此花区、住之江区に位置しており、一部西区を含む。明治以降、日本で初めて国でなく都市自身が建設・運営をおこなう近代港湾で、日本最大のフェリーターミナルを擁する外国・内国航路の拠点港である。
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[編集] 歴史
- 6世紀頃 難波津(なにわのつ)、住吉津(すみのえのつ)として成立、国際港として栄える。
- 平安時代から鎌倉時代、 渡辺津(わたなべのつ)が淀川河口、船場付近で栄える。
- 安土桃山時代、 大坂の町割が豊臣秀吉によって作られる。
- 江戸時代にかけて、北前船、菱垣廻船などが寄航する、日本最大の港として栄える。
- 大坂は淀川を数キロさかのぼった場所にあるため、大型船は市内まで入らず木津川や淀川などの下流部や河口に停泊し、そこから市内へ小型船で貨物を運搬していた。
- 1683年(天和3年) 河村瑞賢、曲がりくねって浅い淀川の水運と治水のため、安治川を開削。
- 1704年(宝永元年) 大坂城の北で淀川に合流していた大和川、堺の北で大阪湾に出るよう付け替え。安治川などへの土砂流入が減る。
- 1831年(天保2年) 再度浅くなった安治川の浚渫を行う。出た土砂により天保山が築かれる。
- 1868年(慶応4年) 開港。安治川をさかのぼった西区の川口に外国人居留地が、富島などに港湾が築造される。
- 1873年(明治6年) オランダ人技師G.A.エッセル、ヨハニス・デ・レーケ来日、大阪入り。淀川改修と天保山付近への新港築港計画を作るが実現せず。
- 1876年(明治9年) 外国船最後の入港。安治川の狭さと浅さにより大型船が入れず、国際港機能は神戸港へ移る。
- 1885年(明治18年) 大阪市内で大洪水、衛生状態が悪化。淀川付け替えと国際貿易港の建設の声が高まるが、政府はデ・レーケ案のうち新淀川開削を優先。
- 1897年(明治30年) 大阪港第1次修築工事開始。当時の市予算の30倍の予算で、大阪市営のプロジェクトとして近代築港工事が開始される。
- 1903年(明治36年) 築港大桟橋と、花園橋から築港への市電が開通(公営電気鉄道では日本初)。
- 1916年(大正5年) 財政難と難工事により、築港事業中断。
- 築港が放置されるが、第一次世界大戦景気で大阪港の利用が増え、築港の完成を望む声が高まったため、民間企業の資金協力・工事代行(完成後は出資業者が優先使用)により事業が続行された。
- 1929年(昭和4年) 築港事業(大阪港第1次修築工事)完成。続いて大阪港第2次修築工事開始。南港などが構想されるが、後に戦争で中断。
- 1938年(昭和13年)~1939年(昭和14年) 貨物取扱量等が日本で最大となる。
- 1945年(昭和20年) 太平洋戦争により壊滅的な被害を受ける。さらに枕崎台風で高潮、浸水。
- 1947年(昭和22年) 大阪港第2次修築工事を改め、大阪港復興計画開始。
- 1948年(昭和23年) 海外貿易再開。
- 1950年(昭和25年) ジェーン台風で高潮、浸水被害。
- 1951年(昭和26年) 重要港湾、続いて特定重要港湾に指定される。
- 1952年(昭和27年) 港湾法施行、大阪市が大阪港の港湾管理者となる。
- 1958年(昭和33年) 南港(咲洲)地区の埋立造成工事開始。
- 1961年(昭和36年) 中国との民間貿易再開。
- 1967年(昭和42年) サンフランシスコ港と姉妹港提携。
- 1971年(昭和46年) 南港地区にフェリーターミナル開業。
- 1972年(昭和47年) 北港処分場の埋立工事開始。
- 1973年(昭和48年) 日本最初のコンテナ船専用岸壁開業。
- 1974年(昭和49年) メルボルン港と姉妹港提携。
- 1979年(昭和54年) 南港地区に魚つり園、海水遊泳場開業。
- 1980年(昭和55年) ル・アーヴル港と姉妹港提携。これを機に大阪港の紋章を制定。
- 1981年(昭和56年) 上海港と友好港提携。
- 1983年(昭和58年) '83大阪世界帆船まつり開催、南港地区に大阪南港野鳥園開業、バルパライソ港と姉妹港提携。
- 1985年(昭和60年)南港地区に国際展示場インテックス大阪開業、上海との間に国際フェリー就航、釜山港と姉妹港提携。
- 1987年(昭和62年) 大阪港開港120年並びに大阪北港ヨットハーバーの完成を記念してメルボルン港をスタートとする太平洋縦断ヨットレース「メルボルン/大阪ダブルハンドヨットレース」開始(以後4年置きに開催)。
- 1990年(平成2年) コンテナ化が進まず機能低下していた天保山地区で、アメリカの旧式港湾再開発手法にならい海遊館やサントリーミュージアムで構成される天保山ハーバービレッジが開業。
- 1994年(平成6年) アジア太平洋トレードセンター(ATC)開業、帆船「あこがれ」就航、舞洲スポーツアイランド開業、サイゴン港と姉妹港提携。
- 1995年(平成7年) 阪神・淡路大震災の影響で、室戸汽船などの神戸入港の船が一時利用した(室戸汽船はその後、売り上げ増加により正式に利用するようになった)。
- 1997年(平成9年) 大阪港築港100周年記念帆船レースSAIL OSAKA '97開催。
- 2000年(平成12年) 南港ウォーターフロントになにわの海の時空館開館、帆船「あこがれ」世界一周航海達成。
- 2005年(平成17年) 指定特定重要港湾の一つに指定される。
[編集] おもな施設
[編集] 築港
最初に完成した港。現在は一部の定期客船・クルーズ客船や在来貨物船を除き、船の出入りは少ない。港湾関係の庁舎や税関などはほとんどが築港にある。安治川を横断する大阪市営渡船の乗り場が天保山公園脇にある。天保山埠頭に隣接してショッピングゾーン「天保山ハーバービレッジ」がある。
利用する施設にもよるが、主なアクセスは鉄道なら大阪市営地下鉄大阪港駅、道路なら阪神高速道路天保山出入口が近い。
- 主な施設
- 天保山埠頭(最寄り駅は大阪港駅)
[編集] 北港
付近は大正時代から重化学工業地帯として開発され、工業港として整備された。現在は倉庫などが並ぶほか、沖に舞洲・夢洲の埋立地が建設されコンテナ港となっている。また舞洲はスポーツ施設やキャンプ場も人気がある。かつて誘致活動が行われた「大阪オリンピック」はこの二つの埋立地が会場・選手村となる予定だった。
主なアクセスは、鉄道なら桜島線(JRゆめ咲線)桜島駅。または、阪神本線野田駅(大阪市営地下鉄千日前線野田阪神駅、JR東西線海老江駅と隣接)およびJR大阪環状線・ゆめ咲線(桜島線)西九条駅から大阪市営バス81系統。道路なら阪神高速道路5号湾岸線北港西出入口。
- 主な施設
- 北港ヨットハーバー
- ライナー埠頭
- コンテナターミナル
- 舞洲埠頭(輸入青果品を主に取り扱うほか、舞洲スポーツアイランドが整備されている。)
[編集] 南港
昭和初期に住之江沖に計画された埋立地には国際空港を作る構想もあった。埋め立ては戦後本格化し、コンテナ埠頭やフェリーターミナルのほか、団地やビジネス街、商業施設、公園、博物館などもオープンしている。しかし、新たに追加された埋立地に計画された「コスモスクエア」の整備計画(大阪ワールドトレードセンタービルディングなど)は、バブル期に過大な規模にまで拡大された結果、テナントの撤退や土地の分譲不能など思惑がはずれ、事業者である大阪市や港湾局の重大な負担と化している。
主なアクセスは、鉄道ならニュートラム南港ポートタウン線および地下鉄中央線。道路なら阪神高速道路4号湾岸線南港中出入口 、南港南出入口。また築港方面から大阪港咲洲トンネル、住之江方面からは南港大橋が利用できる。
- 主な施設
- 国際フェリーターミナル(最寄り駅はコスモスクエア駅)
- 大阪南港フェリーターミナル(最寄り駅はフェリーターミナル駅)
西日本各地へのフェリー航路が乗り入れており、その数は日本一である。大阪市交通局(ニュートラム)のフェリーターミナル駅に直結する。但し「かもめフェリーターミナル」へは同駅から徒歩30分のところにあるため市バス利用が便利。無料の連絡バスは無いので注意を要する。(沖縄定航埠頭へは船会社がシャトルバスを出しており、乗船受付も南港フェリーターミナルで行われている。)
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- 大阪南港フェリーターミナル
- F1 関西汽船
- - 神戸港(六甲アイランドフェリーターミナル) - 松山港 - 大分港(上りのみ) - 別府港
- - 別府港
- - 小豆島・坂手港(季節便)
- F2(なし)
- F3 四国オレンジフェリー(四国開発フェリー)
- F4 名門大洋フェリー
- - 新門司港
- F5 名門大洋フェリー
- - 新門司港
- F6 大阪高知特急フェリー ※2005年6月30日をもって廃止
- - 甲浦港(隔1日寄港)- 高知港
- ドリームシャトルのりば(キャプテンライン)
- - ユニバーサル・シティ・ポート
- F1 関西汽船
- 沖縄定航埠頭 ※乗船受付は「大阪南港フェリーターミナル」にて。
- かもめフェリーターミナル
- 大阪南港フェリーターミナル
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- ATCオズ岸壁
- 帆船あこがれ専用岸壁
- ATCオズ岸壁
[編集] 港湾環境保全
海面の浮遊ゴミ撤去など大阪湾の環境保全は進んでいるが、古くからの工業都市である大阪から流れ出した有害物質はヘドロとなって水底に堆積しておりダイオキシン類の底質環境基準を超過が大規模な範囲で発表されている。