寄生獣
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『寄生獣』(きせいじゅう)は、岩明均によるSF漫画作品。講談社・月刊アフタヌーンに1990年1月号から1995年2月号にかけて連載され、作者の代表作となった。
目次 |
[編集] 概要
全10巻のコミックが発行され、2003年には完全版全8巻で新しく発売されている。1993年第17回講談社漫画賞一般部門受賞、1996年第27回星雲賞コミック部門受賞。
スプラッタ的な残酷描写が続くため、モンスターホラーのような印象を与えがちだが、一人の少年の数奇な運命を通して生命の本質を描きつつ、それ故に見えてくる人の尊さと浅はかさを訴えた内容は各方面から絶賛された。マンガ評論も手がける哲学者の鶴見俊輔は、この作品を「人生二度目の衝撃」とまで評した。また評論家の加藤典洋は大学でテキストとして使用していた。
英訳版においては左開きに対応させるため原作の左右を反転させている。よって右手となるべきところが左手になったため、「ミギー」も「Lefty」(「左利き」の意)と改められている。
2007年現在、清水崇監督によるハリウッド実写映画化が予定されている。
[編集] あらすじ
ある日、空から多数の正体不明の生物が飛来してきた。その生物は人間に寄生して全身を乗っ取り、他の人間を襲い、捕食するという性質を持っていた。寄生後も見た目は人間そのものであった彼ら「パラサイト」は、人間社会に徐々に紛れ込んでいった。
世界中でミンチ殺人事件が頻発し、メディアが注目し始めた頃、ごく平凡な高校生・泉新一は、パラサイトの襲撃を受ける。間一髪で脳の乗っ取りは免れたものの、パラサイトは新一の右腕に寄生してしまう。右手にちなんで「ミギー」と自ら名乗るパラサイトと人間の奇妙な共生生活の幕開けである。パラサイトによるものと思しき事件が頻発するにつれて、新一は真実を知る者としての責任を感じるようになる。しかし、新一と自らの安全の確保にしか興味の無いミギーは、どちらにも与する気はなかった。
そんな中、彼が通う高校に、パラサイトの教師「田宮良子」が赴任してくる。彼女はパラサイトの仲間「A」と共に、新一を観察すべくやってきたことを話した上で、戦う事はお互いにとって有益でないと判断し、その場は引き下がった。しかし暴走した「A」は学校を襲撃し、新一と対決。苦戦の末「A」を倒した新一だったが、パラサイト同士の「お互いを引き寄せる」力からか、なおも自らの意思に沿わない戦いを強いられることになり……。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 主要登場人物
- 泉 新一(いずみ しんいち)
- 本作の主人公。ひ弱で真面目、ごく平凡な高校生であったが、右手に宿ったパラサイト、「ミギー」により数奇な運命を辿ることになる。家族はルポライターの父・一之と、専業主婦の母・信子。兄弟はいない。
- 母の体を乗っ取ったパラサイトに心臓を貫かれ、瀕死の重傷を負った時ミギーの尽力により助かるが、その際パラサイトの体組織が全身に混ざってしまった副作用で、世界記録を更新できるほどの俊足・数メートルの壁を跳び越える跳躍力・人一人投げつけてコンクリート壁を崩すほどの怪力・異常な動態視力など常人離れした身体能力や五感を身につけた。その能力はミギーが眠っていても独力で充分以上にパラサイトに対抗できるほどである。
- しかし同時に精神にも影響があり、自身の感情にパラサイトのような冷徹さが生まれていたのを自覚したため、物語の終盤までそれに苦しむ事になった。
- ミギー
- 新一の右腕にとりついたパラサイト(本来は右腕から新一の身体に侵入して、脳を奪おうとして失敗)。好奇心旺盛で読書家。宿主の身体から直接養分を摂取しているため、独自に捕食活動を行う必要はないが、その分だけ新一が大食漢になっている。
- 後になって自己犠牲とも取れる行動を起こすが、寄生当初は他のパラサイトと同じく感情に乏しく、宿主と自分以外の生死には極めて冷淡かつ淡白で、人間を盾に取る作戦を立てる等、人間社会の常識に外れる思考から、新一との間には大きな壁があった。共存関係にある新一に対しては食事や健康を気遣い、新一の置かれている状況や精神状態に応じて考えを変更するなど柔軟な思考も持ち、一時の感情や自己満足に流されて行動しようとする新一を諌める事もあった。そのやり取りの中で徐々に感情に近いものを理解するようになっていき、互いに信頼し合えるようになる。宇田に「きれいな言葉遣いをしている」と評されるが、これについて新一は、図鑑など主に本で言語を学んだ結果ではないかと推察している。
- 瀕死の新一を救うため体内に潜り込んで治療を行った際、パラサイトとしての性質に突然変異を来し、一日のうち四時間だけ、同属を察知する能力さえ働かない「完全な眠り」に陥るという弱点ができてしまった。
- 後藤との戦いの後、自らの意志で無期限の「眠り」につく、と新一に別れを告げる。ただし、墜落死しかけた里美を新一が助け損った時に、あわやというところで彼女を助けたのはミギーであると思われ、もしかしたら完全に眠りについてはいないのかもしれないと考えられる。
- 村野 里美(むらの さとみ)
- 新一の同級生で、ガールフレンド。性格は大人しく、控えめ。微弱なパラサイト感知能力がある。通ってる高校は二度パラサイトの襲撃を受けており、二度目の時には正体を現した島田秀雄が目の前で多くの同級生達を惨殺したのを目の当たりにし、恐怖で身動きできなくなっているところを超人的な能力を身につけた新一に助け出されている。ミギーが寄生したことによる新一の心理や行動の変化を敏感に察知し、当初は彼の急な変貌を理解できず悩んだりもしたが、物語の最後まで彼を信じ続けた。
- 田村 玲子(たむら れいこ)
- パラサイトの中でも特に高い知能を持つ個体。それがために頭部を乗っ取った「田宮良子」の名前と社会的立場をそのまま受け継いで、新一達の通う高校の新任数学教師として現れた。後に身分を隠すため、名前を「田村玲子」と変えた。
- パラサイトの生殖能力を確認するために、Aとセックスして子供を妊娠したり、新一とミギーを「貴重なサンプル」として観察を続けたり、最強のパラサイトである後藤を作ったりと、研究者的な探究心をみせる。緻密な戦略立案と、多彩な攻撃形態により、後藤にも「良い戦いができる相手」と言わしめるほどの戦闘能力を持つ。通常一匹のパラサイトにつき一パターンの攻撃形態だが、田村玲子は二パターン以上の攻撃形態を同時に使えるようである。
- 徐々に「自分達は何のために生まれてきたのか?」ということを考えるようになり、その追究の一環としてAとの間にもうけた子供を出産、育て始める。広川剛志に興味を覚え、彼が提唱したパラサイト組織の設立のために協力するが、実際のところはパラサイトが生まれた目的の追求が第一であり、組織の目的にはあまり協力的ではなく、傍観者的立場である。やがて人間のように「笑う」という感情表現を身につけ、さらに子供を産み育てるという経験の結果、パラサイトにはあり得ない意外な行動に出る。
- 「A」
- 田村玲子(当時は田宮良子)が新一に紹介したパラサイト。特に名前を持たず、田宮良子が便宜的に「A」と呼んだ。新一の存在に強い危機感を覚え、彼の通う高校に単身乗り込む。新一とミギーの連携プレーにより返り討ちにあい瀕死の状態になり、田宮良子の体に同居しようとしたが、彼女が仕組んだと思われる教室の爆発により爆死した。
- 加奈(かな)
- 新一の隣町に住む北高の女生徒、いわゆるスケバン。登場時には光夫と付き合っていたが、徐々に新一に興味を抱くようになる。パラサイト同士が存在を確認できる「信号」を感知する特殊な能力を持っていたが、その能力の自覚はなかった。新一に宿るミギーへの反応を、新一との「運命の赤い糸(恋愛感情)」と思い込むようになり、自分の想いを新一に伝えたい一心から、やがて微弱ながらパラサイトと同じ「信号」を発する事ができるようになってしまう。「信号」について説明するため彼女の住む町を訪れた新一を捜し当てようと、「家から出るな」と新一に念を押されたにも関わらず出歩いてパラサイトの捕食現場に遭遇、その攻撃で致命傷を負い、一足違いで駆けつけた新一の腕の中で息を引き取る。
- 光夫(みつお)
- 加奈の彼氏。北高の生徒で体が大きく喧嘩も強い。新一たちの通う西高とよく喧嘩をしていた。加奈が新一に心変わりしていくのに苛立ち、新一に嫉妬をぶつけていた。自分の知らないところで加奈が殺され、葬儀の席で号泣する。
- 宇田(うだ)
- 伊豆のホテルの従業員。離婚を原因に飛び降り自殺を図ろうとしていたところにパラサイトの襲撃を受ける。驚いた拍子に崖から転落してしまったものの、寄生を試みたパラサイトが母体の生命維持に努めた為に命を繋ぐ。母を乗っ取ったパラサイトを追って伊豆を訪れた新一と知り合い、その後も同じ境遇の友人として連絡を取り合っている。涙もろい性格で、自身のパラサイトには「ジョー」と名づけている。
- ジョー
- 宇田に寄生するパラサイト。寄生した際、海へと転落した宇田の生命を救う事を優先した結果、脳を奪うことに失敗し、現在は顔下半分から胸部にかけて寄生している。ミギー同様、宿主の身体から直接養分を摂取しているため、独自の捕食活動を必要としない。当初は宇田から「パラサイト」と呼ばれていたが、後に世間でその呼称が一般化したことから「ジョー(下顎)」と名づけられる。テレビドラマや映画が好きで、その影響で読書家のミギーに比べ、言葉遣いはかなりくだけている。
- 泉 信子(いずみ のぶこ)
- 新一の母。夫婦水入らずで伊豆に旅行した際、人間部分が拒絶反応を起こし別の肉体を求めていたパラサイトに一瞬で斬首され、首から下をパラサイトに乗っ取られる。
- パラサイトはその時に居合わせた泉一之を始末しようとするが一之は崖から転落。一之の死を確認するため泉家宅へ行き、新一と遭遇する。「母がパラサイトに寄生された」という現実を拒絶している新一の心臓を刺し貫き、瀕死の重傷を負わせる。この事が新一達の体質変化へのきっかけを作った。
- 母の仇をとろうと追ってきた新一と対決し、最後はジョーに倒され、信子の首無し死体は海に消えた。
- 泉 一之(いずみ かずゆき)
- 新一の父。フリーのルポライター。新一の右手がパラサイトであることには気付いていない。目の前で妻がパラサイトに乗っ取られ、自身も負傷させられる。自分の遭遇した事件について警察から事情聴取を受けた時、パラサイトの存在を世に知らしめることを望むが聞き入れられなかった。
- 平間(ひらま)
- パラサイト対策の特命捜査を指揮する刑事で階級は警部補。作品の途中で警部に昇進する。新一とパラサイトの間に何らかの関係があると考えており、倉森を殺害して誘拐された子供を奪い返した直後の田村玲子を尋問・射殺した後、東福山市役所でのパラサイト殲滅作戦(以下、市役所戦)における「外環(包囲部隊)」の指揮官となった際には、パラサイト駆除のために新一に助言を請い、またその現場に新一を呼び出した。
- 島田 秀雄(しまだ ひでお)
- 新一を観察するために田村玲子が高校に送り込んだパラサイト。人間と同じ食事を摂るなどパラサイトと人間との共存を目指しているなどと語り(しかしこれは嘘で、実際には夜ごとにナンパした女を食い殺していた)、新一と明確に敵対せず接近を目論んだ。「体の操作が上達する」という理由でスポーツを好む。
- 後に正体を見破った同級生・裕子が突発的に投げたビンから強酸を浴びて錯乱状態になり高校内で暴れ、多数の生徒と警官を殺害した後、新一によって倒される。その死体は専門機関の手に渡り、日本における初めてのパラサイトのサンプルとなった。
- 裕子(ゆうこ)
- 新一の通う高校の美術部員で、島田秀雄の同級生。兄は犯人の似顔絵描きをする警官で、パラサイト殺人に関する泉一之への事情聴取に同席していた。島田の無表情さに興味を抱いて観察している内に、島田がパラサイトである事を知ってしまう。島田に人肉食をやめるよう説得を試みるが逆に襲い掛かられ、その時護身用に準備していた強酸のビンを投げつけた事が、高校大量殺戮事件の引き金となった。
- 広川 剛志(ひろかわ たけし)
- パラサイト一味の主格の一人。地球を汚し他の生物を圧迫する人間を憎み、この思想に興味を持った田村玲子が仲間に引き入れた。パラサイトの食事の安定供給(広川の目的としては人口抑制)のための組織を結成、その活動の一環として東福山市長選に出馬して当選を果たす。当選後は市長の立場を利用し、組織的にパラサイトの「食堂」の管理を行うことになる。
- パラサイト一味との関係が露見し市役所が制圧されかけた時、彼は憎んだ人間を指して、本作のタイトルである「寄生獣」と呼んだ。
- 草野(くさの)
- パラサイト組織では幹部的役割を持つとみられる。邪魔者は手段を問わずに即刻排除するという強引で性急な考え方の持ち主で、組織にとって障害となった新一と倉森の抹殺を企てたものの、その実行者が後先を考えずに倉森の家族を殺害、倉森本人と新一の殺害に失敗した事を知るとまるで人間のように怒りの感情を発露した。彼らの無謀な行動を咎めた田村玲子を危険視し仲間と共に抹殺しようとしたが、仲間共々返り討ちにあった。
- 後藤(ごとう)
- 田村玲子が作り上げた無敵の生物。通常、人間一人の身体に一匹のパラサイトが宿るところ、彼の場合は一体に五匹(のちにミギーを含め六匹)のパラサイトが宿っている。
- 五匹のパラサイトのうち一匹が通常のパラサイト同様、頭部に寄生しており、「統率者」として他のパラサイトを自在に操っている(その際頭部は全身の制御に専念しなければならないため、自らが変形・攻撃等をしている余裕は無い)。後藤というのは、その統率者としての一匹のパラサイトを指す場合もあり、別の統率者である三木(後述)と交代する事もある。運動性がいまひとつの三木とは違い、一瞬にして体の他のパラサイトを統率する事ができる。
- 母体である人体の大半がパラサイトに置き換わっているために、かなりの自由度でその姿を変える事ができる。体はパラサイトの鎧で守られており、走行しているトラックとの激突にも耐え、ショットガンや銃の直撃を受けても致命傷を与えることは不可能。ただ、ミギーの指摘によると、全身くまなくパラサイトの鎧で固めるとかえって動きが鈍くなる為、体のどこかに鎧の隙間が存在するはずだという。
- 極めて高い戦闘能力を発揮し、市役所戦において人間の肉眼では追いつけない俊敏さで自衛隊の一部隊を単身で壊滅状態に追いやった。また、その体験によって「戦いこそが自分の存在意義である」と自覚するようになる。
- 三木(みき)
- 通常は後藤の右腕部を務めるパラサイト。その名前は「右手」に由来する。メインの統率者である後藤(の頭部)に代わって頭部(統率者)をこなすことが可能だが(その際はメイン統率者の後藤が代わって右腕部を務める)、完全に制御することはできず、そのため運動性はいまひとつである。一見、陽気で明るい性格でお調子者のようだが、それは人間の「表情」を意識して真似ようとした結果である。実際には人間としての感情を身につけているわけでなく、そのため微妙な機微を察することが出来ずに、意図して作った表情は過剰且つ場違いとなる事が多い。その違和感は人間とパラサイトの間の本質的な違いに通じている。
- 後藤に代わる新一・ミギーへの刺客として現れ、最初は刃物化した両腕による攻撃で新一たちに脅威を感じさせた。だが、戦っていくうちに徐々に露呈した制御力不足という弱点を突かれて敗北、後藤と交代する。
- 倉森(くらもり)
- 興信所の調査員。シャーロック・ホームズに憧れてこの職を選んだ。妻ひとり子ひとりのさえない父親であったが、田村玲子に新一の調査を依頼されたことがきっかけで、その運命を大きく狂わされる。新一たちにこれまでの事情を聞かされ、深入りしないよう警告されたが、逆に田村玲子にも興味を示して探りを入れたため、広川一味に危険視されて、自身が偶然難を逃れた代わりに妻と娘を殺害される。その復讐を果たそうとして結局は田村玲子に殺されたが、平間に(一部は伏せながらも)新一から得たパラサイト・広川一味の情報を提供し、これは後のパラサイト大量駆逐作戦へと繋がった。
- 山岸(やまぎし)
- 陸上自衛隊二佐。市役所戦における「内環(掃討部隊)」の指揮官。パラサイト判別のために市役所中の人間を1階ホールに集めた際、指示に反して他階へ移動した広川市長以下パラサイト一味を駆逐すべく、一部隊を率いて追討する。そしてほぼ全てのパラサイトを殲滅したが、最後に残った後藤ただ一匹に自分を含め追討部隊を全滅させられた。
- 美津代(みつよ)
- 田舎に住む老婆。街で水商売をしていたが、夫の要望で田舎に移り住み、夫の死後は一人暮らし。住んでいる村には新一が訪れる前後から産業廃棄物が不法投棄され、問題になっていた。後藤との戦いに敗れた上ミギーを失い負傷して逃亡していた新一を数日匿った。彼女から借りた鉈を手に、新一は後藤との最後の戦いに臨んだ。
- 浦上(うらがみ)
- 人間を惨殺する事に快感を覚える猟奇殺人犯。多数の犯行によって指名手配・逮捕されて死刑判決を免れない身。人間とパラサイトを、見ただけで判別することができる。その能力を見込まれ収監中の身ながら捜査活動(同じ能力の保有者の判別等)に利用されるが、市役所戦に駆り出された際、後藤の出現による混乱に乗じ逃走。これ以上逃げきれないと観念した時、興味を抱いていた新一と接触を図る。
[編集] パラサイトとは
どこからか飛来した、毛のようなもので包まれたボール状の物体から生まれた生物(その描写から宇宙からの飛来物であると解釈した読者が多かったが、作者としては地球上のどこかで発生したというイメージだったとの事)。
寄生前の幼生の見た目は大きなヒルやミミズに似ている。また幼生はとがったドリル状の頭部を持っており、寄生のために人間の身体にとりつく際にはこれが長く鋭く変形する。鼻や耳など頭部の孔からの他、皮膚を食い破って体内に侵入し、その人間の脳を目指して進んで行く。そして脳に到達するとそこから急速に頭部と同化する。
寄生された頭部は骨や元の脳が無くなり、首の辺りまでが完全にパラサイトの組織に置き換わる。宿主の脳を「食べて」成熟することで脳の代わりとして機能し、肉体すべてをコントロールすることができるようになる。脳の取り込みに成功したパラサイトには「クモが誰に教えられてもいないのに巣の張り方を知っている」ごとく、「寄生した宿主と同じ種を捕食する」という本能が最初に目覚める。
[編集] パラサイトの性質
パラサイトには人間並み、もしくはそれ以上の知能があるが、寄生してから日が浅い者は人間社会の一般常識に馴染めず問題を引き起こすこともある。
寄生部分は一瞬でゴムのように変形でき、また一瞬で鋼鉄のように変質する事ができる。パラサイトの知能が高いこともあって、作中では解り易い例えとして「考える筋肉」と表現されている。寄生体は母体の潜在能力を、損傷をものともせず最大限に発揮できる。また、微弱ながら特殊な脳波のようなものを常に発信しており、これによって付近にいる同属の存在を感知することができる。この「信号」は受信の有効半径が約300メートルで、発信元の個体の判別についてはパラサイト同士でも難しいとされているが、予め発信パターンを仲間内で決めておけば簡単な通信手段に使うこともできる。
母体から離れたパラサイトはその体を維持できずにほどなくして死んでしまう。しかし一時的であれば母体から離れて活動することができる。訓練によって複数に分裂することができるようにもなるが、この場合身体の大きさに比例して知性が落ちていく。 因みにこの性質を利用して、髪の毛を引き抜いて人間とパラサイトを判別するという方法が考え出された。 また、毒物や炎などを突然近づけられると表面と内部との間で動きがずれたり、瞬間的な錯乱状態に陥ることがある。
母体に直接損傷を与えると比較的簡単に死に至らしめられる。ただし極限まで引き出される身体能力と寄生部分の攻撃力の高さから、常人が直接戦うことは無謀に近い。また、寄生部位が薬品や火傷などにより損傷していない限り、例え胴体と切り離しても再び結合したり、他の肉体を奪って生き永らえることができる。しかしその場合、元よりも複雑な構造の部位(例えば「右手」から「頭部」)への移動は「操り方が分からない」という理由で不可能のようである。
パラサイトには寄生する宿主の個性や環境が影響する場合がある。性格に個体差はあるが、基本的には人間の感情を理解できず自己中心的で冷酷であり、自分の生存を守るためなら例え同属であっても他者を殺す事をためらわない。しかし時が経つにつれ、人間のように感情を表す者や他者を守るため自分の命を犠牲にする者も現れた。
侵入時のアクシデントによって頭以外の部位に寄生する場合もある。ミギーやジョーは脳への寄生に失敗した例である。彼らは宿主とは独立した意思を持っており、また脳を「食べた」パラサイトと違い「母体となった種を捕食する」という本能が目覚めていない。 人間以外の生物に寄生することもあり、作中ではイヌに寄生していたが、本来は人間に寄生するように本能づけられている。イヌに寄生したパラサイトであっても人語を理解し、話すこともできる。
頭部に寄生したパラサイトは「母体となった種を捕食する」という本能を持つが、基本的に消化器や内臓は宿主のものを流用しており、その種本来の食事でも生きていくことができる。
生殖能力が無く、新しい世代を作れない。寄生体の男女が人間部分同士で交尾を行っても、その結果によって生み出されるのは、頭部がパラサイトに置き換わっていない、通常の人間の子供である。
[編集] コミックス
[編集] 単行本
- 第1巻 1990年7月23日刊行 ISBN 4063140261
- 第2巻 1991年1月23日刊行 ISBN 4063140296
- 第3巻 1991年7月23日刊行 ISBN 4063140369
- 第4巻 1992年1月23日刊行 ISBN 4063140407
- 第5巻 1992年8月22日刊行 ISBN 4063140458
- 第6巻 1993年1月23日刊行 ISBN 4063140547
- 第7巻 1993年7月23日刊行 ISBN 4063140644
- 第8巻 1994年2月23日刊行 ISBN 4063140768
- 第9巻 1994年11月22日刊行 ISBN 4063140954
- 第10巻 1995年3月23日刊行 ISBN 4063141071
[編集] 完全版
- 第1巻 2003年1月23日刊行 ISBN 4063346641
- 第2巻 2003年1月23日刊行 ISBN 406334665X
- 第3巻 2003年2月21日刊行 ISBN 4063346803
- 第4巻 2003年2月21日刊行 ISBN 4063346811
- 第5巻 2003年3月17日刊行 ISBN 4063346927
- 第6巻 2003年4月23日刊行 ISBN 4063346978
- 第7巻 2003年5月23日刊行 ISBN 4063347222
- 第8巻 2003年6月23日刊行 ISBN 4063347346
[編集] 関連書籍
- リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』(紀伊國屋書店、1991年) ISBN 4314005564
- 『寄生獣』作品中、田村玲子が大学で学ぶ講義で言及される他、中盤以降の背景に置かれている。
- 佐倉統『生命をめぐる冒険 進化・ミーム・コンピュータ』(河出書房新社、1998年) ISBN 4309250955
- 『寄生獣』論から人工生命や情報などのテーマを説き起こした論考。
- 熊田一雄『“男らしさ”という病? ポップ・カルチャーの新・男性学』(風媒社、2005年) ISBN 4831110679
- 『寄生獣』が読者に強烈なインパクトを与える背景を社会学的に考察した論考が収録されている。
- 青土社『現代思想』2006年12月号 ISBN 4791711572
- 杉田俊介「自立と倫理・カントとともにある『寄生獣』、『寄生獣』によるカント」 p152~p170
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