惑星をつぐ者
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『惑星をつぐ者』(ほしをつぐもの)は週刊少年ジャンプで定期連載していた漫画である。著者は戸田尚伸。連載期間は1996年同誌41号から49号まで。単行本はジャンプ・コミックス(集英社、全1巻)。
わずか9週で連載を終了したマイナーな漫画作品だが、寺沢武一の『コブラ』を髣髴させるスペースオペラとも言うべき世界観と、少年誌に似つかわしく無い独特の濃い絵柄、洗練されたストーリーで、知る人ぞ知る名作として今でもファンの人気は非常に高い。
打ち切りなのか、当初の予定通り9週終了の予定だったのかは不明だが、短い期間で連載が終了したにも関わらず、消化不良に陥ることなく綺麗に完結しているのも特徴。なお、正式タイトルは『惑星をつぐ者~Inheritor of the planet~』。
目次 |
[編集] ストーリー
銀河系とは別の銀河、知られざる宇宙(アンノウン・スペース)の物語。この宇宙には様々な異星人が存在し、それぞれの存亡を賭け宇宙に進出していた。人類もその一種だったが、肉体の弱い人類はこの宇宙で滅亡しつつあった。想像を絶する異星の環境は人類にとって余りにも厳しく、人類がこの宇宙で生き延びる方法は2つしか無い。一つは厳しい自然と闘いながら細々と生きるか、奴隷として異星人に仕えて生き延びることだった。
灼熱の惑星ダロウスで奴隷として働いていた青年マットは、荒野に行き倒れていた一人の男を助ける。男の名はバラダット・ナイブス。かつて自分の母星である惑星マリスの全住民を皆殺しにした全宇宙規模の賞金首だった…。
[編集] 登場する惑星
- マリス
地球人に酷似した人類が生活していた惑星。この星の住民で、同じ人類だったバラダット・ナイブスによって数週間かけて全住民は皆殺しにされてしまった。
- ダロウス
2つの太陽によって照り付けられている灼熱の惑星。そのため人類はボディスーツを着ていなければ動くことすらできない。バルカル種族に支配されており、人類は奴隷として働かされている。しかし体の丈夫な男には家族を持つ権利が与えられ、女があてがわれる。ただし、それはバルカル種族にとっては家畜を増やすのと同じ事らしい。
- リリウス
氷に閉ざされた惑星。恒星から20光年も離れた軌道を回るため、マイナス180度の極寒の世界となっている。ナイブスとクレイム種族のアンブロウが戦った惑星で、寒さに強い獣型異星人のベザー種族が生息している。
- エイジア
広大な土地を持つが、その9割が砂漠で占められた死の星。昼と夜の100度以上の温度差が土地を極度に膨張、収縮させるため今も恐るべきスピードで砂漠化が進んでいる。巨大な節足動物のみがかろうじて生息できるが、流刑になった罪人達の人類種も生息している。ただし、そのためには体温を一定に保つ特殊なスーツ「テンパードスーツ」を着込み、毒性を含む酸素を浄化するフィルターをくわえていなければならない。夜になると恐ろしい寒さになるため、生命維持カプセルのような物の中で眠ることで生き延びている。Jによって高度な科学技術を与えられ、野垂れ死ぬ所を救われた人類種はJを神として崇めている。地下深くには巨大な氷の洞窟が眠っている。
[編集] 登場人物
- バラダット・ナイブス
本編の主人公。元々は惑星マリスの科学者で、どんな環境にも適応できる特殊細胞(タフブースター)の開発者。特殊細胞を自らの肉体に植えつけることにより驚異的な肉体と、かつてグール種族が使っていた伝説の武器自在剣(スパイラル・ナイフ)を手に入れる。ただし、特殊細胞の実験自体は失敗に終わったため、特殊細胞を植え付けられた人間はいずれ肉体が崩壊していくことになるが、ナイブスの体の中でのみ特殊細胞は正常に作動する。
特殊細胞の実験の失敗と、それを「人類の希望」として全人類に植え付けたJにより惑星マリスの全住民は暴走を起こしナイブスに襲い掛かったため、やむを得ずナイブスは家族を含めた全住民を数週間かけて皆殺しにした。その際、特殊細胞はもう一人の適合者「J」によって持ち出されており、呪われた研究結果である特殊細胞の存在を全宇宙から抹殺するため、Jを追うことになる。人類種では数少ない全宇宙規模の賞金首。
- J(ジェイ)
惑星マリスの生き残りで、ナイブスと同じく人類種の科学者。惑星マリスの大虐殺の際、特殊細胞を宇宙に持ち出し逃亡した。後に自らの体に特殊細胞を植え付け、超人的な肉体と精神力を得た特殊細胞の数少ない適合者。自分以外の人間は全て道具でしか無く、意に適わない人間は全て抹殺するというエゴイストで、特殊細胞を使い全宇宙を支配しようと考えている。自在剣は使えないが、分子の結合・分解を操り、さらに他の生物や物質の分子結合を解くことができる。その原理を利用し、空気中の様々な分子を結合させ硬質化させてマシンガンのように撃ち出すことができる。
- シェリー
ナイブスの恋人で、Jの妹。正体はナイブスの研究を盗むためにJが送り込んだスパイだったが、二人が真剣に愛し合ってしまったために計画は失敗。Jに特殊細胞を植え付けられ、ナイブスの腕の中で肉体を崩壊させながら死んでいった。
- アンブロウ
「血の戦士」と呼ばれる戦闘系異星人クレイム種族の賞金稼ぎ。自分の血液を武器とし、わずかでも自分の血を標的に付着させれば反応を追うことができる。リリウスでの戦いでナイブスの武器自在剣の秘密を暴きながらも、実は二刀流だったナイブスに切り刻まれ敗れた。メロウスとは親友だったらしい。
- スピッドロウ
全宇宙で恐れられる宇宙海賊。意外なことに正体は人類種だが、実は肉体の八割以上が機械で占められた混合人間(ハイブリッドマン)である。最後の戦いでJに体を切り刻まれたが、それでも無事に生きていた。機械オンチらしい。
- メロウス
全宇宙最強の獣型異星人グール種族で、本家「自在剣」を操る4つ眼のグール戦士の最後の生き残り。スピッドロウと行動を共にしており、親友のアンブロウを殺したナイブスの命を狙っている。
- ゾーイ
スピッドロウの宇宙艇に同乗する人類種の女性で、スピッドロウの機械オンチを補佐する形で乗り込んでいると思われる。最後の戦いにおいて、氷の洞窟に袖なしの服にスパッツという薄着でも平気だったことから、彼女も混合人間である可能性がある。
- マット
灼熱の惑星ダロウスで労働者として働く人類種の青年で、行き倒れていたナイブスを助ける。体が丈夫なため、家庭を持つことが許されているようで、ユカという恋人がいる。水が必要なユカのために水を盗みに行くが、見つかって捕まってしまい、処刑寸前のところをナイブスに助けられる。
- ユカ
マットの恋人。過去に水を盗んだ罪で両目を火で焼かれたため、視力を失っている。風熱病に侵されていたが、ナイブスの持っていた薬によって回復した。
- ダロフィー
砂漠の惑星エイジアに住む少年。生まれつき感覚が鋭く、一見すると人類種のようだが頭部には触覚が生えており、染色体にも通常の人類種とは違う変化がある。つまり、この変化は遺伝していくため、生かしておくことは人類種を支配するというJの野望にとって脅威になると判断されたため、命を狙われることになるが…。
- 名も無き者
砂漠の惑星エイジアでナイブスが見た夢の中に現れた者。姿形は持っておらず、時間も距離も意味を成さない次元を超えた空間に存在する。自らの力で種族を進化させようという希望を失わないナイブスに自在剣を授けたらしいが、正体は不明。太古の昔から宇宙を見守ってきたなど劇中の描写から察するに「神」だと思われるが…。
[編集] 登場する異星人
- 人類種
地球人と酷似した外見を持った種族で、現在では肉体の弱さから滅びつつある。作品中は「地球」という言葉が一度も出てこないことと、様々な惑星にも似たような外見を持った人類種が存在することから地球人ではないらしい。
- バルカル種族
全宇宙で最も暑さに強い異星人で、人類の百分の一の水量で活動でき、熱や紫外線にも強い強靭な肉体を持つ。灼熱の惑星ダロウスの僅かな水を管理することで人類種を奴隷のように扱っている。銃弾は効かないらしい。
- ベザー種族
犬と熊を合わせた様な外見を持つ獣型の異星人。リリウスの極寒に耐えられる数少ない異星人で、群れを作らず単独で狩猟を行う。大きな体格に似合わず臆病な性格で、金属を集める習性がある。また、動物に酷似した姿をしているが、会話が可能なほどの知能を持っている。
- クレイム種族
「血の戦士」と呼ばれる戦闘系異星人。自らの血液を武器とし、わずかでも自分の血を標的に付着させれば反応を追うことができる。登場したのは賞金稼ぎのアンブロウ1人だけだが、外見は黒い全身タイツを身に纏った人類種のような感じである。
- グール種族
全宇宙最強の獣型異星人。余りにも獰猛で戦闘を好みすぎたが故に数が激減したとされるが、恐らく同士討ちを始めたと思われる。突如驚異的な精神力を持ち、「自在剣」を操る四つ眼のグール種族が誕生したが、その力を過信し宇宙を支配するために使ったため、メロウスを残し絶滅した。何とも例えがたい外見をしており、上下左右に開く口とほとんど体毛の生えていない漆黒の肉体に長い尻尾を持っている。
- ギーマ種族
他種族の精神力食って生きる寄生種族。外見はアンモナイトにソックリである。精神力を喰うため自在剣は効かない。
[編集] 関連項目
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