操車場 (鉄道)
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操車場(そうしゃじょう)とは鉄道における車両基地の一種で、貨物列車などの組成・入換えなどをおこなう場所。ヤードともいう。到着線についた貨車は順に転送線に送られ、多数の分岐器を経て目的の仕訳線に送られる。大きな操車場にはハンプと呼ばれる人工の丘があり、重力を利用して貨車を仕訳線へ送る。
出発地・到着地の異なる貨車からなる貨物列車では、固定編成による拠点間直行輸送の貨物列車とは異なり、貨車は途中で何度か入れ換え作業を行なわなければならない。この作業は出発地、到着地の他、長距離の輸送においては途中の操車場で行なわれる。
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[編集] 操車場の分類
操車場は平面ヤード、ハンプヤード、重力ヤードの3種類に分類できる。
[編集] 平面ヤード
ここでは仕訳線は平面上に並び、操車場の両端で一つに集まっている。貨車は機関車によって目的の仕訳線に押し込まれる。アメリカ合衆国には中規模な平面ヤードが多数あり、Settegast, Decatur, East Jolietのような大規模な操車場でも平面のものがある。
ヨーロッパでは、イタリアにはVerona Porta Nuova、Foggia、Villa San Giovanniといった主要な操車場でハンプを持たないものがある。その他のヨーロッパの大規模な平面ヤードとしては、スイスのOltenやルーマニアのValea lui Traian(計画ではハンプヤードだったが結局ハンプは築かれなかった)がある。アルゼンチンではVilla Mariaを除く操車場はすべて平面ヤードであり、中には30以上の仕訳線を持つものもある。
[編集] ハンプヤード
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これは最も大規模な操車場であり、入れ替えの効率は最も高く、一日数千両におよぶこともある。この種の操車場の中心はハンプと呼ばれる人工の丘である。貨車は押上線という線路を通って機関車によりハンプ上に押し上げられる。ハンプの頂上で一両ずつ、または数両をまとめて編成から切り離され、重力によって仕訳線群の中の目的の線に送られる。
ハンプから仕訳線群に滑り下りる貨車の速度は、貨車の状態(積荷の量、貨車自体の重量、軸数)や仕訳線の状態(すでにどれだけの貨車が入っているか)に応じて制御されなければならない。ハンプヤードはリターダという速度制御機構の有無によって2つに分類できる。古いリターダのないヤードでは、ヨーロッパでは鉄道員がレールに敷いたブレーキてこを操作することで、アメリカ合衆国では鉄道員が貨車にのって操作することでブレーキをかけていた。より新しい操車場では、仕訳線への分岐の直前に置かれたリターダによってブレーキの強さを細かく調整することにより貨車の速度を制御している。リターダには空気圧で操作するもの(アメリカ合衆国、フランス、ベルギー、ロシア、中国など)と油圧で操作するもの(ドイツ、イタリア、オランダなど)がある。
ヨーロッパの操車場では仕訳線は通常8本ずつ一組になり、各組ごとに一つのリターダがある。アメリカ合衆国では仕訳線は通常9本で一組となる。
世界最大の操車場はアメリカ合衆国ネブラスカ州North PlatteのBaileyヤードであり、これはハンプヤードである。その他のアメリカ合衆国の大規模な操車場にはElkhart Youngヤード、Clearing(シカゴ)、Argentine(カンザスシティ)、Englewood(ヒューストン)、Waycross Riceヤードなどがある。ヨーロッパ、ロシアおよび中国では、重要な操車場は(すでに閉鎖されたものを除けば)すべてハンプヤードである。ヨーロッパ最大のハンプヤードはドイツ、ハンブルグ近郊のMaschenであり、これはBaileyヤードよりわずかに小さいのみである。ほとんどのハンプヤードでは仕訳線群は一つのみだが、非常に大きなハンプヤードでは方面別に複数の線群を持つものもある。Maschen、Clearing、Baileyヤードなどがその例である。
しかしながら、貨物輸送の鉄道から道路への移行や、鉄道貨物のコンテナ化により、ハンプヤードは減少傾向にある。例えばイギリス、デンマーク、ノルウェー、日本およびオーストラリアでは、すでにすべてのハンプヤードが閉鎖されている。
[編集] 重力ヤード
これはハンプヤードとよく似ているが、操車場全体が斜面上にある点が異なる。重力ヤードは通常地形の問題からハンプヤードを設けることが困難な場所に設けられる。ほとんどの重力ヤードはドイツとイギリスにあり、他のヨーロッパの国にも少数がある。アメリカ合衆国では重力ヤードは古いものがごく少数あるのみであり、現在使用されているものはないと推測されている。現在使用されている重力ヤードのうち最大のものはドイツのニュルンベルグ貨物駅である。重力ヤードは能力ではハンプヤードに匹敵するが、より多くの人員が必要となるため経済性で劣る。
[編集] 参考文献
- International Railway Journal (IRJ), New York. Special editions about hump yards in various countries: issues II/66, II/70, VI/75, II/80.
- RHODES Dr. Michael: The Illustrated History of British Marshalling Yards. Sparkford: Haynes Oxford Publishing & Co, 1988. ISBN 0-86093-367-9. Out of print.
- KRAFT Dr. Edwin: The Yard: railroading's hidden half. In: Trains (vol. 62) 2002. Part I: VI/02, pp. 46...67; part II: VII/02, pp. 36...47.
- WEGNER Robert: Classification yards. Map of the Month. In: Trains IV/2003, pp. 42/43.
- RHODES (Dr.) Michael: North American RAILYARDS. St. Paul (USA): Motorbooks International (MBI Publishing Company) 2003. ISBN 0-7603-1578-7.
[編集] 関連項目
- 1984年2月1日国鉄ダイヤ改正(日本における貨物操車場の廃止)
- 日本の貨車操車場
[編集] 外部リンク
- Refuge Sidings Exchange Sidings and Marshalling Yards(英語、操車場の配線図の例がある。)
- Yard Duty(英語、操車場のシミュレーションゲーム)