楽都仙台
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
楽都仙台(がくとせんだい)とは、仙台市および仙台都市圏での音楽イベントの多さ、および、プロやアマチュア音楽家・演奏家などの多さを、仙台市役所が表現する際に用いるキャッチコピー。仙台では、高等教育機関が仙台都市圏に集中し、学生・教員が多い様を言う「学都仙台」のキャッチコピーが戦前から用いられてきたが、それと同音である。双方のキャッチコピーとも市民に浸透しており、様々な場面で「楽都仙台」の文字を見る。
目次 |
[編集] 経緯
仙台の別称として「杜の都」が全国的に浸透しているが、これは明治後期、あるいは大正時代からそう呼ばれているという。他方、仙台市は、明治政府による中央集権体制の下、東北地方の拠点都市とされ、陸軍の司令部・軍隊・軍事施設が集中し、軍需品物流や将校・兵隊の消費活動、さらに、戦中には軍需工場によって潤った。そのため、市当局は仙台をして「軍都」と呼ぶことがあった。また、江戸時代には明倫養賢堂、明治時代には東北帝国大学設置やその他の高等教育機関が相次いで創立された仙台は、学生や教員が集まるようになり、自らを「学都仙台」と呼んだ。
戦後、日本軍は武装解除され、仙台の「軍都」としての機能は自衛隊などに縮小されたが、「学都」としての機能は更に拡充し、現在は、大学院・大学・短大・専門学校などに約8万人の学生が在学している。また、教員の数や高校以下の教育機関も鑑みると、教育は仙台の主要産業であることになり、市当局は「学都仙台」とのキャッチコピーを現在も使用し、一般市民にも浸透している。
仙台市では、1980年代からホールや文化施設が拡充し、プロのミュージシャンのコンサートツアーの開催地に選ばれることが多くなった[1]。また、定禅寺ストリートジャズフェスティバル in SENDAIに代表される街角野外の音楽イベントも多数開催されるようになり、市民が気軽に音楽に触れる機会が多くなった。そのような音楽が仙台にもたらす経済効果が大きくなってきたため、市当局は「学都仙台」と同音の「楽都仙台」のキャッチコピーを使用するようになった。
なお、プロスポーツ球団が3つ(ベガルタ仙台・東北楽天ゴールデンイーグルス・仙台89ERS)あり、その他、スポーツの国際大会や全国大会が開かれることによる経済効果も大きくなっているが、これを言い表すキャッチコピーはない。他方、約80とも言われる劇団がある仙台であるが、市民全体に影響を及ぼしていないため、市当局では「劇都仙台」とのキャッチコピーを用いて経済効果を高めようとしている。
[編集] 「楽都仙台」を構成するもの
「楽都仙台」という言葉は、市当局が用いるとき、企業が用いるとき、市民が用いるときとで、多少の意味の違いがある。
市当局が「楽都仙台」と言うときは、市(または仙台市市民文化事業団を通して)の税金投入がある音楽系団体やイベントの総体を指している。そのため、「楽都仙台」で第一に上がるのは仙台国際音楽コンクールや仙台クラシックフェスティバルである。企業の場合は、冠公演などで後援している仙台フィルハーモニー管弦楽団が第一に上がる。市民の認識では、定禅寺ストリートジャズフェスティバル in SENDAIなど、無料の街角屋外ライブイベントが「楽都仙台」を代表している。
なお、年間を通じて経済効果が最も大きいのは、イベント運営会社(プロモーター)が主催して仙台で行われるプロのミュージシャンのコンサートツアーの数々であるが、これは1つ1つの集客数が小さいため、「楽都仙台」と言ったときに引き合いに出されることは少ない。
[編集] 市民が主催する音楽イベント
仙台は、「市民ボランティアが主体となって開催する」「街を舞台装置とした」「無料の」「屋外音楽祭」が多いのが特色となっている。定禅寺ストリートジャズフェスが、期間中約71万人(2006年)の観客数を集め、最大のイベントとなっている。音楽以外がメインのイベントでも、ステージが設置され、バンド演奏が行われることがある。以下に、勾当台公園・定禅寺通り・一番町などが主会場の無料の屋外音楽イベントを記載する。
- 5月 定禅寺ストリートジャズフェスティバル Spring Preview(GW中)
- 6月 とっておきの音楽祭
- 7月 伊達ロックフェスティバル(7月と9月 年2回開催)
- 7月 ジャズ・プロムナード in SENDAI(7月最終週末)
- 8月 スターライト・エクスプロージョン(仙台七夕と同時開催)
- 9月 定禅寺ストリートジャズフェスティバル in SENDAI(9月初旬)
- 9月 伊達ロックフェスティバル(9月下旬)
- 10月 みちのくYOSAKOIまつり(10月初旬)
- 11月 仙台ゴスペル・フェスティバル(11月中旬)
- 12月 ビッグバンドJAZZ・クリスマスコンサート(SENDAI光のページェント期間中)
- 12月 学都×楽都コラボレーション(SENDAI光のページェント期間中)
[編集] 仙台市主催の音楽イベント
- 仙台国際音楽コンクール(3年毎の開催。有料。観客数1万人程度)
- 仙台クラシックフェスティバル(せんくら2006)
- 2006年10月初開催。有料だが、一部無料のものが含まれる。観客数3万人程度。
10月1日~11月30日に行われる音楽や演劇等の公演を「仙台市芸術祭」という名称で仙台市が後援しており、その期間に無料の野外コンサートや有料の屋内コンサートも開かれる。また、市と地元企業とで、劇団四季を対象としたミュージカル専用劇場を仙台駅東口に設置することが決まった。
[編集] 企業が主催する音楽イベント
企業が主催する音楽イベントとして、|Date fm主催の「スターライト・エクスプロージョン」、NTTドコモ東北主催の「学都×楽都コラボレーション」、商店街主催の「ビッグバンドJAZZ・クリスマスコンサート 」がある。全て無料の屋外音楽イベントであり、地元のミュージシャンや学生バンドも出演するので、「市民が主催する音楽イベント」の項目にも記載した。
その他、冠公演の形で仙台フィルハーモニー管弦楽団(仙台フィル)のコンサートを主催する例が多い。無料のものと有料のものがある。仙台フィルは、クラシック音楽専用につくられた仙台市青年文化センター・コンサートホールを本拠とするプロのオーケストラで、宮城県内を中心に各地で定期演奏会やコンサートを行っている。
[編集] プロモーターが主催する音楽イベント
- MEGA☆ROCKS
[編集] 「楽都仙台」の経済効果
「楽都仙台」は、仙台市のシティセールスのコンテンツの1つとして位置付けられている。仙台市としては、自治体ウェブサイトなどを通じて市主催の音楽イベントを中心に広く紹介をしている。
キョードー東北、ノースロードミュージック、GIPなどが有力なプロモーターで、仙台のみならず、東北地方各地でコンサートなどの興行を行っている。その興行領域の広さとメジャーアーティストの興行権から、これらの企業が損益分岐点を超えると考える都市や都市圏にコンサートが集約する傾向があり、近年では仙台・郡山・盛岡、特に仙台への集約が進んでいる。
このような集約により、仙台のみならず、周辺各県のタウン情報誌のイベント情報欄には、仙台市および仙台都市圏で行われる音楽・エンターテインメント情報(楽都仙台のコンテンツ)が載せられ、場合によっては隣県のテレビ・ラジオなどのマスメディアを用いて県外からの集客も行われている。タウン情報誌の音楽イベント欄における開催都市比率は、山形市のタウン情報誌で仙台9割・山形1割程度、福島市のそれで仙台8割・郡山2割程度となっており、県外から仙台への交流人口増大をもたらしている。