学都仙台
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学都仙台(がくとせんだい)とは、仙台市および仙台都市圏への教育機関や学生の集中度の高さを、仙台市役所が表現する際に用いるキャッチコピー。ここでは仙台市の主要産業の1つとしての教育産業を取り上げる。
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[編集] 概要
仙台は、高等教育機関に通う学生を85,000人以上抱えており、人口に対する学生比率が、政令市等の中では京都市、福岡市、東京23区に次いで4番目に高く、仙台市の行政や地元マスメディアは「学都仙台」を自称している。また、人口に対する大学院生比率も京都市に次いで2番目に高い上、高等教育機関の教員も4,000人近く住んでおり、日本の学術を支える重要な都市の1つとなっている(2003年5月1日現在の幼稚園から大学までの教育機関在校生数は約22万人[1])。
しかし、東北大学においては、その入学者における地元占有率(東北大では東北地方出身者の割合)が、他の旧帝大のそれと比べて低く、また、仙台市や東北地方にいい就職先が少ないため、卒業者のほとんどが他の地方に流出し、いわゆる「brain drain(頭脳流出)」が激しい。また、工業基盤が薄い仙台市では、研究成果も他の地方に流出し、地場で産業化される例は極めて少ない。近年では、人材と研究成果の流出を抑えるため、産学官共同のベンチャーキャピタルが設立されたが、まだ大きなビジネスに育っていない。
仙台でも、人口増加・経済成長時代に、通勤・通学の便を無視し、広い敷地を求めて郊外に移転した大学・高校があったが、少子化で学生の取り合いをしている現在、および、将来においては、高校・大学の学生の通学や教員の通勤の足として鉄道があるかどうかという事が、学校にとって重要な問題の1つとなりつつある。そのため、鉄道沿線に学校を移転新築したり、近くの路線に請願駅建設するよう申請する高校や大学が出てきている。さらに、建設中の仙台市営地下鉄東西線も、仙台市民の公共交通機関として期待される一方で、計画沿線にある学校の通学通勤路線としての役割も期待されている。
[編集] 大学・短大・高専
- 学都仙台コンソーシアムも参照
- 大学数:10校。学生数:47,742人(2004年度)
- 東京23区および政令市の中で、学生数は8番目、人口に対する学生比率は京都市・福岡市・東京23区に次いで4番目に多い。
- 短大数:4校。学生数:1,173人(2004年)
- 高専数:1校。本科学生数:792人(2006年)、専攻科学生数:55人(2006年)
[編集] 国立大学
東北大学は、1907年(明治40年)に東北帝国大学として開学して以来、数多くの研究実績をあげた。東北大学金属材料研究所(通称:金研 きんけん)は、本多光太郎による鉄鋼の研究において多大な成果を残している。東北大学電気通信研究所は、光通信の発祥の地であり、八木・宇田アンテナやマグネトロンの発明などで知られる。また人材育成面でも2002年ノーベル化学賞受賞者の田中耕一(東北大学工学部卒)を初めとして、数多くの優秀な人材を輩出している。近年では「産・学・官」の連携による新たな産業造りの構想もある。
東北大学医学部は、1736年(元文元年)に仙台藩によって設立された藩校である明倫養賢堂(養賢堂)にその源流を持つ。明倫養賢堂では、1760年(宝暦10年)に医学教育が開始され、1817年(文化14年)に仙台藩医学校を分離設置。 1822年(文政5年)には仙台藩学校蘭科が開設され、日本初の西洋医学講座を実施した。その後、幕末から明治期にかけて何度も改組・改称を繰り返したが、1907年の東北帝国大学設立後、1912年(明治45年)に同大学に包摂され、最終的に同大学の医学部となる。
宮城教育大学は、戦前は宮城師範学校と称した。戦後に東北大学に合併されるも、1965年に分立した。東北大学と同じ青葉山にあり、附属学校の養護学校も同敷地内にあるが、それ以外の附属学校(幼稚園・小学校・中学校)は中心部の少し北側の上杉にある。
[編集] 公立大学
- 宮城大学
- 大和キャンパス
- 太白キャンパス
県立宮城大学の所在地は黒川郡大和町となっているが、大和町の中心部である吉岡地区から遠く離れ、仙台市泉区との境界線上にある。この境界地区には、文教・先端工業・スポーツ関連施設・大規模住宅団地によって構成される「泉パークタウン」があり、一体的な職住近接地区を形成している。境界の仙台側には、諸々の研究所、仙台ロイヤルパークホテル、仙台白百合学園(幼・小・中・高)、宮城県図書館などがあり、その隣に宮城大学が並びたっている。
太白キャンパス(太白区旗立)は、2005年度より旧・宮城県農業短期大学が、宮城大学食産業学部に改組・合併されたことにより設置された。
[編集] 私立大学・短期大学
2004年、東北文化学園大学は経営破綻し、大学としては初めて民事再生法の適用を受けた。また、宮城学院女子大学は2001年に、仙台白百合女子大学は2003年に短大を閉学し、大学のみとなった。
[編集] 国立高等専門学校
仙台電波高専は1943年に設置された東北無線電信講習所が官立無線電信講習所仙台支所、官立仙台無線電信講習所、国立仙台電波高等学校を経て1971年に電波高等専門学校に昇格したものである。
また、1963年に開校した宮城工業高等専門学校は東北大学富沢分校跡地を仮校舎としたが、本校舎を名取市内に建設し、移転している。
この両者は数年後に統合される予定である。
[編集] 大学院
- 院生数:7,481人(2004年度)
- 東京23区および政令市の中で、院生数は5番目、人口に対する院生比率は京都市に次いで2番目に多い。
上記の大学の多くには大学院が設置されている。以下にトピックになっている大学院について列記する。
- 大学院重点化による 「大学院大学」
- 東北大学
- 大学院のみが仙台にある大学
- 東北芸術工科大学・大学院仙台スクール
[編集] 高校
宮城県の公立高等学校は入学試験(学力検査)で「合格したら必ず入らなければいけない」という独自の規定がある(かつての国立高校と国立高専を除く)。このため例えば、私立高校を第一志望とし、公立高校を第二志望として入学願書を提出し、私立高校に合格した場合、事前に公立入試辞退届を出すか、公立高校の入学試験においてわざと不合格にならない限りは、受験者の意思に関らず公立高校に必ず進学しなければならないとされている。しかしながら、この規定は入学確約書と同様に法的には有効であるとは考えられない。
宮城県では1949年より県立・市立高校の普通科に限り学区制を導入しており、仙台市においては、泉区・宮城野区・青葉区が仙台北学区、若林区・太白区が仙台南学区となっている。ただし、青葉区の中心商業地(一番町~仙台駅西口一帯 = 五橋中の通学区)、および、宮城野区の仙台駅東口地区(= 宮城野中と東華中の通学区)は北学区に含まれず、南学区に含まれる。このため、住む地区によって進学できる高校は限られる。ただし、学区外受験も受験者の3%以内で許可されている。この仙台市内における南北の学区制は、
- 北学区:男子校2、女子校1
- 南学区:男子校1、女子校2
と定員比率上問題があるとされている。このため、北学区の女子が南学区の女子校(二女、三女)を受検する場合に限って定員の25%に限って許可する措置がとられている。学区制については、宮城県の教委審議会が学区制の廃止を目指す答申素案をまとめるなど、現在、そのありかたについて検討が行われている。
全国的にも珍しく、別学の公立高校や私服の公立高校が多い。高度経済成長期までは私立も公立も別学校のみであった(東北学院榴ヶ岡高校が移転時に共学化に対応した校舎であったにも関わらず1995年まで男子校だったのはこのため)。これは1960年代に全国的に吹き荒れた学園紛争が大きく影響している。仙台では仙台一高に全共闘が組織されて校内に県警機動隊が導入された。
仙台市内の公立学校の教育レベルは、かつて、全国のなかでも最低水準と言われていた。これは、高度経済成長時代、すなわち、第一次ベビーブーマーが高校進学する年齢になった際、仙台市の人口の急上昇と高校進学率・進学者数の急上昇が起き、その受け入れ先として仙台の場合は新設の公立高校が主な役割を果たしたためである。このとき、公立高は学区制を敷き、それまで仙台一高と宮城一女の2校しかなかった進学校を、北学区は仙台二高と宮城一女、南学区は仙台一高と宮城二女として計4校まで増やした(→宮城県のナンバースクール)。つまり、単に高校を増やしただけではなく、進学校を増やす政策をしたため、進学校の公立高校優位を実現した。一方、私立高校も定員増や学科の新設を行ったが、東京などとの違い、大学進学率向上や有名大学進学を目標とした難関私立学校への脱皮を目指さなかった。このような勢力図のため、学歴偏重主義の否定が始まった80年代以降、公立進学校は公立であるが故に難関大学進学を声高に目標とはせず、仙台の教育レベルの低下を招いた(「一億総中流意識」が浸透した80年代には、学歴が豊かさを生まなくなったため、学歴否定が社会の趨勢となった)。
第二次ベビーブーマーが高校を卒業し終わり、少子化の影響が見え始めた90年代以降、学校運営上、学生数の確保を狙う私立高校が、次々と男女共学化と難関大学進学への投資などを行い始めた。公立の進学校の側では、このままだと私立に進学校の地位を奪われてしまいかねないという危機感が出て、浅野史郎宮城県知事のリーダーシップにより、県立高校全ての共学化が決定されるに到った。しかし、高校の数を減らさずに1クラス分程度の定員減で共学化する政策を提案したため、伝統維持(特にナンバースクール)や校風がなくなるなどの理由により共学化反対の声が大きくなった。例えば、宮城三女高では生徒総会で99%が反対の意を示している。
2005年12月に県議会は2度目となる共学化推進決議を全会一致(4名棄権)で可決し、選挙で共学化の見直しを掲げていた村井知事(県議時代は共学推進の立場だった)も「県議会の意向を尊重する」として、承諾した。これに基づいて県教委も改めて共学化を推進することを確認した。これによって、2010年まで全県立校が共学化される見通しとなった。
- ※下記学校一覧において、私服校には★印を付記
[編集] 県立
仙台北学区
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仙台南学区
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[編集] 市立
仙台市立の高等学校の正式名称は、「○○高等学校」となっており、「仙台市立」は付けない。一部サイトや書籍などでは「仙台市立」を冠しているがこれは厳密に言えば間違いである。しかしながら、私立高校との混同を避けるためにあえて通称として冠している場合もある。似たような例として北海道内の市町村立高校は何れも「北海道○○高等学校」が正式名称になっている。
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[編集] 私立
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学校により学科・コースにより男子のみ、女子のみとする募集もあり、必ずしも全てにおいて共学校になっているわけではない。
[編集] 中学校・小学校
2次にわたるベビーブームの結果、児童・生徒数は激増して、市内の小学校は1970~80年代には開校ラッシュに沸いたが、1990年以降、増加は沈静化して通学区域の関係で開校されることはあっても、児童増による開校は少ない。中学校は1996年を最後に開校されていない。また、少子化の影響で70~80年代に開校された小学校でマンモス校と呼ばれた学校では、大きすぎる故の問題を抱えていたが、現在はピーク時の半分~三割以下の児童数となっている所が多く、1学級30人未満でクラス編成をしており、逆に少なさが問題となっている。これは住宅団地にある学校の共通の課題となっている。仙台市は今後も減少する児童・生徒に合わせて「仙台市立小・中学校の一定規模、適正配置に関する基本的考え方及び具体的方策」をまとめて、統廃合することを答申。過疎地以外での小・中学校の廃校が現実味を帯びてきている。
仙台市の場合も他都市と同様、学区制が導入されているが、他都市と比較して越境入学や転校が容易な傾向にある。例えば、A小学校出身で、B中学校の学区内に住んでいても、出身小学校の卒業生が多く進学するA'中学校に変更して入学することが可能である。また、事情により市内の別の学区に引っ越した場合でも、申請すれば中学校卒業まで引っ越す前の学校に通うことが可能である。この他、希望の部活動が学区内の中学校にない場合に申請して近隣の別の中学校に進学したり、いじめや不登校の解決のために引っ越さずに学区外の別の中学校に進学することも可能である。
また、市内全ての公立小・中学校は、2学期制を実施している。全市規模で2学期制を導入したのは仙台市が全国で初めてである。全国的な教育レベルの低下に伴い仙台市の公立学校も学習内容が削減されているが、2学期制の導入により、仕事量の多くなる期末が3回から2回に減って教員の労働環境が改善されたため、本来の児童・生徒への教育に時間を割くことが出来るようになり、往年のような全国ワーストの教育レベルではなくなった。
前述のとおり2学期制・秋休みを導入しているため、長期休暇の期間は以下のように定められている。
- 夏休み:7月20日ごろから8月24日ごろまで
- 秋休み:10月中旬の2日間であるが、一部の中学校では市新人大会の日の振替休日を秋休みの前後に組んで5日~7日間のところもある。
- 冬休み:12月23日ごろから1月7日まで
- 春休み:3月25日ごろから4月7日まで
[編集] 国立
いずれも男女共学。
[編集] 市立
仙台市立の小中学校は、小学校123校、中学校65校と多いため、以下のリンクに分割した。以下、区ごとに市内全小・中学校の一覧を示す。
- ※小・中学校一覧
[編集] 私立
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聖ドミニコ学院中学校と常盤木学園中学校はいずれも生徒数減のため休校中である。あくまで休校であるため書類上は現在も存在する学校であるが、一般的には現存しない学校、廃校として意識されている。
[編集] その他の学校
[編集] 専門学校等
[編集] 大学校
- 中小企業大学校・仙台校
[編集] ナショナル・スクール、インターナショナル・スクール
- 東北朝鮮初中高級学校
- 東北インターナショナル・スクール(幼・小・中・高。東北高等学校・泉キャンパス内)
[編集] フリースクール・サポート校
- 民間フリースクールは宮城県内に約20カ所
- 宮城県教育委員会による不登校の児童生徒支援施設「けやき教室」は県内8カ所
- 宮城県内の不登校児童生徒数は、小学校が397人、中学校が2015人(2004年度)
- NPO法人が運営する「仙台インターナショナルスクール」(フリースクール + 幼稚園)が、2006年1月に資金繰り悪化で開校4ヶ月余で休校となった。
[編集] 学習塾・予備校
仙台市は公立優位の土地柄のため、中学受験はあまり活発ではなく、高校受験に重きを置いている学習塾・予備校が多い。しかし、首都圏の私立中学や仙台都市圏内に数校存在する私立中学、中等教育学校に対応したコースを併設している学習塾や予備校も少なからず存在する。
以下、仙台市内にある程度の規模を持つ学習塾・予備校について挙げる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 学都仙台コンソーシアム
- 日本を学ぶ(仙台市)(仙台市内の教育機関分布図およびリンク)