次亜塩素酸ナトリウム
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次亜塩素酸ナトリウム | |
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IUPAC名 | 次亜塩素酸ナトリウム |
別名 | 次亜塩素酸ソーダ アンチホルミン(水溶液) |
組成式 | ClNaO |
式量 | 74.44 g/mol |
形状 | 無色固体 |
結晶構造 | |
CAS登録番号 | [7681-52-9] |
密度と相 | 1.07-1.14 g/cm3, 固体 |
水への溶解度 | 29.3 g/100 mL ( ℃) |
融点 | 18 ℃(5水和物) |
沸点 | 101 ℃(分解) |
出典 |
次亜塩素酸ナトリウム(じあえんそさんナトリウム、sodium hypochlorite)は次亜塩素酸のナトリウム塩である。化学式は NaClO で、次亜塩素酸ソーダとも呼ばれる。強アルカリ性である。希釈された水溶液はアンチホルミンとも呼ばれる。
水酸化ナトリウムの水溶液に塩素を通じて得られる。不安定なため、通常は水溶液として貯蔵、使用される。水溶液は安定で長期の保存が可能だが、時間と共に自然分解し酸素を放って塩化ナトリウム水溶液に変化していく。また高温では分解が促進されるが、同時に不均化も起こる。
塩素のような特異な臭気(いわゆるプールの臭いとか漂白剤の臭いとか言われる臭い)を有し、酸化作用、漂白作用、殺菌作用がある。家庭用に販売されている液体の塩素系漂白剤、殺菌剤(洗濯用、キッチン用、ほ乳ビンの殺菌用など)はほぼすべてが、この次亜塩素酸ナトリウムの水溶液、またはそれに少量の界面活性剤(中性洗剤の主成分)等を加えた製品である。
また、水溶液はアンチホルミンという名称で食品添加物としても使われる。殺菌剤としては野菜、果実などの消毒にも用いられるが、ゴマに対する使用は禁じられている。これは黒ゴマを漂白し、より高価な白ゴマとして販売されることのないようにするためとされる。
生成方法としては、上記の反応のほかに、海水を電気分解する方法もある。この方法は主に、臨海にある工場施設において用いられ、配水管などに海洋生物が付着するのを防ぐために使われる。
目次 |
[編集] 危険性
[編集] 酸との反応
家庭用の製品の「混ぜるな危険」などの注意書きにもあるように、漂白剤や殺菌剤といった次亜塩素酸ナトリウム水溶液を塩酸などの強酸性物質(トイレ用の洗剤など)と混合すると、黄緑色の有毒な塩素ガスが発生する。2004年には死者も出ているので取り扱いには注意が必要である。
[編集] 爆発事故
次亜塩素酸ナトリウムから、不均化反応により容易に塩素酸ナトリウムが生じる。これが乾燥した結晶は爆発性を持つため、事故が起こる原因となる。
1980年代に三重県四日市市内で爆発事故が相次いだ。次亜塩素酸ナトリウム水溶液をタンクに移替える時にホースがはずれ、その溶液を浴びた職員が濡れた衣類を洗わずにそのまま干して乾かしてしまった。そのズボンを着て歩き始めたときに摩擦をきっかけに爆発が起こり、その職員が重体になったというものである。
これについては、セルロースを主体とする布地に次亜塩素酸ナトリウムをしみこませて 40–50 ℃ に保って乾燥させると起こることが確かめられた。不均化により1/3が塩素酸ナトリウムに変わったのである。塩素酸塩は火薬の原料としても知られている。