沼津方式
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沼津方式(ぬまづほうしき)とは、ごみを燃えるごみ・埋め立てごみ・資源ごみの三種類に分別収集する方法のこと。1975年(昭和50)4月、静岡県沼津市で初めて実施されたことからこう呼ばれる。ごみ収集の減量と、処分コスト低減が期待できる他、資源リサイクルを行いやすい。
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[編集] 概要
同方式以前は、ごみの捨て方に無頓着で、収集されたごみの多くは燃えるごみ・燃えないごみ・資源ごみが同じ袋に入れられて出されていた。これらのごみは集積場に集められた後、自治体の処分場で手作業で分類されていた。このため人件費や設備費は膨大な物となり、高度経済成長期の日本にあっては、年々増大するごみの量に、遅かれ早かれ自治体のごみ収集業務破綻が危惧される事態となった。
多くの自治体が同種の問題で悩む中、沼津市では既に組織化されていた市に属する住民自治会の啓蒙活動を行った上で、市民参加によるごみの分別収集方式を開始した。当初は幾分の混乱もあったとされるが、同市の住民自治会が、特定の企業に属する工場従業員や同業種にと比較的偏りがあった事から、住民間の結束も強く、比較的スムーズに受け入れられたという話もある。
また分別収集においては、埋め立てごみと資源ごみにおいて、集積場の分別指導に住民自治会の総代をボランティアとして動員するなどして、住民自身の管理に任せた事もあり、住民の分別する意識を高めた事も、成功の要因として挙げられる。今日ではリサイクル資源の種類や、ごみの処分方法の多様化に併せて、資源ごみと埋め立てごみ、更には燃えないごみに関しても、細かい分類基準を設けて、ごみの分別を進めると共に、ごみを出す際の意識を高め、ごみの減量に貢献している。
[編集] 分類
2004年現在、細分化された沼津市のごみ分類は概ね以下の通りである。
- 燃えるごみ
- 燃えないごみ
- 食品・菓子・日用品等のプラスチック類の包装材(袋やパッケージ等)
- 埋め立てごみ
- 資源ごみ
なお2005年に若干改定され、食品のパッケージでも洗いにくい合成樹脂製品(調味料のチューブなど)や食品用ラップフィルムは、洗わないで燃えるごみ(生ゴミ扱い)として廃棄して良いこととなっている。これは燃えないごみとして出した場合に、食品の匂いが残っていたり、あるいは洗わないで食品が付着したままの物を出す人がいて、カラスや野良猫・ネズミなどにゴミが食い荒らされる事も多かったためである。この辺りには、一部レトルト食品のパッケージなども含まれるようだ。
[編集] 問題点
同方式は、分別収集することで、ごみの減量化と処分コスト低減に繋がる訳だが、あまりに細分化し過ぎると混乱を招く事が多い。特に分類が細分化された地域では、同方式未実施地域や分別基準が緩やかな地域からの転入者に解り辛いという問題が挙がっている。特に同沼津市を含む地方町村では、1990年代以降、急速に外国籍の居住者が増えいった事情もあり、言葉の壁もあって、分別方法が伝え難い等のトラブルも発生している。
- なお同市では、新しい転入者に図入りのパンフレットを配布して分別の徹底を呼び掛け、また町内自治体の協力者がごみ集積場にて分別方法の相談を受け付け、その場で分類を手伝う等して対応しているが、中には深夜に未分別の物や家電リサイクル法の施行で回収されないテレビ・冷蔵庫といった「不当なごみ」を放置して行く住人は、個人の地元帰属意識やモラルの低下に伴って、年々増加傾向にある。その一方で、地元自治会の参加者に高齢化が押し寄せ、ボランティア頼みな末端の集積場では、満足な対応や管理が難しくなって来ているのも、同問題を複雑な物としている要因として挙げられる。
また分類済みの資源ごみは、しかるべきところに持ち込むと現金で買い取られるために、しばしば一儲けを目論んで深夜にトラックで乗り付け、資源ごみを持ち去る者もあり、中には買い取り額の高い資源だけを物色して、集積場を荒らすケースも多い事から、東京都世田谷区では2003年12月より、資源ごみの持ち去り行為に罰金を科す地域条例を施行した。本来は地元自治体の行っているごみ収集事業の貴重な収入源であるため、そのような行為は窃盗罪が成立する。