灰羽連盟
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『灰羽連盟』(はいばねれんめい、Ailes Grise)は、安倍吉俊の同人誌である『オールドホームの灰羽達』を元に構成されたテレビアニメーション作品である。
2002年10月から同年12月までフジテレビで放送された。全13話。
目次 |
[編集] 概観
登場人物たちの深い心理描写、独特の不思議な世界観、セピア調の抑えた色彩、美しく雰囲気のある背景、透明感あふれる音楽などで高い評価を受けた。精神的なテーマを扱い、悲しく重い内容を含みながらも、これらのバランスの良く高品質な描写で視聴者を引きつけ、やがて温かい結末へ向かう。
当初放送事情(下記参照)もあり、一部の人々の間でしか知られない作品であったが、放送終了後数年が経過してもなお、口コミ等で評判が広まり、新たなファンが増えつつある。海外での評価も高く、多くの海外メディアでも取り上げられた。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
高い空からまっすぐに落ちていく少女。やがて彼女は水に満たされた繭の中で目を覚ます。古びた建物の一室で彼女を迎えたのは背中に飛べない灰色の羽を持つ、「灰羽」と呼ばれる少女達。繭の中で見ていた空を落ちる夢から、少女はラッカと名づけられる。
円形の壁に囲まれたグリの街、灰羽の暮らすオールドホーム、そこでの仲間たちとの穏やかな日々。戸惑いながらも少しずつその生活に馴染んでいくラッカ。しかしやがて、短い夏の終わりに1つの別れが訪れる……。
[編集] 登場人物
- ラッカ (声 - 広橋涼)
- この物語の主人公。灰羽暦1年の生まれたての灰羽。灰羽達が暮らす施設「オールドホーム」に住む。気弱で大人しい性格。生まれてくる時、空から落ちてくる夢を見たことから「落下」と名付けられた。静電気体質なのか、髪が光輪に引っ張られている。
- レキ (声 - 野田順子)
- 灰羽暦7年の灰羽。灰羽達が暮らす施設「オールドホーム」に住む。面倒見が良く、灰羽達が住むグリの街の歴史や灰羽のしきたり等に詳しい。趣味は絵を描くこと。名前は生まれてくる時小石(=礫(れき)」が敷き詰められた道を歩いている夢を見たことから付いたと言われていたが、実は……。
- クウ (声 - 矢島晶子)
- 灰羽暦2年のオールドホームの仲間。年長組の中では最年少である為、誰かの役に立ちたいと強く願っていて、何かとラッカの世話を焼く。明るく天真爛漫で変わり者。物語の中盤で起こった出来事が、物語に大きな転機をもたらす。空を飛んでいる夢を見たことから、名前は「空」。
- カナ (声 - 宮島依里)
- 灰羽暦3年のオールドホームの仲間。街の時計屋で働いている。協調性がなく、いい加減な性格に見えるが、仕事に関しては非常に真面目。魚のように泳いでいた夢から、名前は「河魚」。
- ヒカリ (声 - 折笠富美子)
- 灰羽暦4年のオールドホームの仲間。街のパン屋で働いている。眼鏡をかけている。真面目で優しいが、間の抜けた所がある。ラッカの光輪を使ってドーナツ状のパンを作った。光が見えていた夢から、名前は「光」。
- ネム (声 - 村井かずさ)
- 灰羽暦9年のオールドホームの仲間で最年長。街の図書館で働いている。おっとりとした性格でよく眠っている。レキとの付き合いは長く、その性格もよく把握しているが、昔はある理由からレキのことを嫌っていた。夢の中でも眠っていた為、名前は「眠」。
- ダイ (声 - 比嘉久美子)/ショータ(声 - 浅野真澄)/ハナ(声 - 徳永愛)
- オールドホームに住む子供の灰羽。子供達は年少組と呼ばれている。ダイは大工になりたいことから、ハナは花屋になりたいという将来の夢から、ショータはショートケーキが好きなことから(本人は夢に出てきたと言い張る)、その名がつけられた。
- クラモリ (声 - 久川綾)
- レキやネムが生まれたばかりの頃、二人の面倒を見ていた先輩灰羽。
- ヒョウコ (声 - 鈴木千尋)
- 廃工場に住む男性の灰羽。由来は「氷湖」だが、ヒョコと呼ばれている。灰羽であることを隠しているのか、普段は帽子を被っている。レキとは昔馴染みだったが、ある理由から疎遠になっている。
- ミドリ (声 - 水野愛日)
- 廃工場に住む女性の灰羽。名前の由来は不明。ヒョウコのことが気になる様子。
- スミカ (声 - 半場友恵)
- 街に住む人間。ネムと共に図書館で働いているが、寿退職が決まった。昔は壁の外に行きたいと想っていたらしい。
[編集] 独特の用語
- 灰羽
- 人間とは違う存在だが、背中に灰色の羽と頭の上に光輪と呼ばれる輪を持っている以外は、外見上の違いはない。それは一般的に天使と呼ばれる姿に似ているが、作中で天使という言葉が使われたことはない。グリの街の人口に比べると、その数はとても少ない。灰羽には次のような特徴がある。
- ・胎児としてではなく、どこからか現れて芽吹いた大きな繭から生まれる。
- ・生まれたときの外見年齢はまちまち。
- ・繭から生まれて一日ほどで背中に灰色の羽が生える。光輪は仲間から授けられる。
- ・名前は繭の中で見た夢から決めるが、子供の場合はその限りではない。
- ・子供でなければ職を持って働き、同胞の役に立つことが使命とされる。
- ・守らなければならない独特の掟がある。
- グリの街
- 物語の舞台となる街。周りを高い壁に囲まれていて、街の外に出ることはできない。唯一存在する門からトーガと呼ばれる人々がやってきて、その交易品だけが壁の内と外をつないでいる。
- 灰羽連盟
- 街の灰羽たちの生活を支援する組織。グリの街のはずれにある寺院が本部になっている。連盟の話師がトーガとの交易の仲立ちをしていて、その利潤を灰羽手帳の発行やその他灰羽の生活支援に利用している。
- 話師
- 灰羽連盟の長。独特の手話を操り、トーガとの交渉を行う。話師と会う時は、その許しがない限り言葉を発してはいけない。
- トーガ
- グリの街にやってくる交易人。言葉を話すことを禁じられている為、話師と手話で意思疎通を行う。
- オールドホーム
- 「人間の使い古し以外を使用してはならない」という灰羽の掟にしたがって、ラッカたちの住居となっている建物。かなり年季が入っている(ヒョウコたちの住む廃工場も同様。なお、灰羽が働く場所も、ある程度の年代を経たものでなければならない)。
- 廃工場
- ヒョウコやミドリたちが住んでいる。年少組以外は女の子しかいないオールドホームとは違い、ネムいわく「共学」。環境があまりよくないようで(廃工場の灰羽達は不良っぽく表現されている)、廃工場で生まれた子供たちはオールドホームに預けられている。
- 灰羽手帳
- 「お金を扱ってはいけない」という灰羽の掟に従って、灰羽達に金銭の代わりに用いられる通貨。買いたい物があったら、ページに購入したものを記入して、それを切り取ってお金の代わりに渡す。灰羽連盟がその発行や清算を行っている。ちなみに、DVD5巻の初回限定版には灰羽手帳型カードアルバムがおまけでついてくる。
- 壁
- グリの街を囲む壁。街の一番高い建物からも、壁の外は見えない。灰羽を悪いものから守ると言われている。その一方で、灰羽が壁に触れると災いが起こるとされている。
- 鳥
- 壁を越えられる唯一の存在。「灰羽が繭に入る時に忘れたものを運ぶ」と言われている。作中には鴉のような鳥が登場したが、この世界に他の種類の鳥がいるかどうかは不明。
- 鈴の実
- 過越の祭の際に、知人らに鈴の実を贈る事で、思いを伝える為に使われる。季節になると、街には鈴の実を売る市が立つ。実の色によって意味が違い、感謝や別れなどの意味を表す。
- 赤の実=お世話になりました。(感謝)
- 緑の実=おめでとう。(祝意)
- 茶の実=ごめんなさい。(謝罪)
- 白の実=ありがとう、さようなら。(感謝、惜別)
- 黄の実=好きです。(愛情)
- 罪憑き
- 一部の灰羽に見られる症状で、羽に黒い染みができる。羽の外見は「老人の木」から採れる染料を使えば、目立たなくすることが出来る。
[編集] 放送リスト
- #1 「繭・空を落ちる夢・オールドホーム」
- #2 「街と壁・トーガ・灰羽連盟」
- #3 「寺院・話師・パンケーキ」
- #4 「ゴミの日・時計塔・壁を越える鳥」
- #5 「図書館・廃工場・世界のはじまり」
- #6 「夏の終わり・雨・喪失」
- #7 「傷跡・病・冬の到来」
- #8 「鳥」
- #9 「井戸・再生・謎掛け」
- #10 「クラモリ・廃工場の灰羽達・ラッカの仕事」
- #11 「別離・心の闇・かげがえのないもの」
- #12 「鈴の実・過ぎ越しの祭り・融和」
- #13 「レキの世界・祈り・終章」
[編集] スタッフ
- 原作・脚本・シリーズ構成: 安倍吉俊
- 助監督・設定補佐: 大森貴弘
- キャラクターデザイン: 高田晃
- デザインワークス: キムヒロミチ
- 美術監督: 片平真司
- 色彩設計: 遠藤菜緒美
- コンポジットディレクター: 長牛豊
- 録音演出: 本山哲
- 音楽: 大谷幸
- 制作: RADIX
- 監督: ところともかず
- 製作: 光輪密造工房・フジテレビ
[編集] 関連商品
- DVD
- 灰羽連盟 COG.1
- 灰羽連盟 COG.2
- 灰羽連盟 COG.3
- 灰羽連盟 COG.4
- 灰羽連盟 COG.5
- COG.1のみ一話、以降三話ずつを収録。
- 灰羽連盟 TV-BOX
- 低価格版。全話を片面2層・3枚組でDVD-BOX化した。RONDO ROBE SELECTION TVシリーズ。
- CD
- 灰羽連盟サウンドトラック「ハネノネ」
- シンプルな編成の生楽器による、大谷幸の楽曲。大谷自身がピアノで参加している。OPテーマ「Free Bird」のフルバージョンとEDテーマ「Blue Flow」のTVサイズ、最終話のED「LOVE WILL LIGHT THE WAY」も収録。全19曲。
- 灰羽連盟イメージアルバム「聖なる憧憬」
- エンディングテーマ「Blue Flow」
- 画集
- グリの街、灰羽の庭で ―安倍吉俊灰羽連盟画集
- DVDやCDなどの関連商品・アニメ本編・同人誌などで発表されたものに描きおろしや未発表作品、ラフ画を加え、本編のストーリーに沿って再構成している。
[編集] 原作
本作品は以下の同人誌で発表された内容を基礎にしている。
- 1998年冬 灰羽連盟(イラスト集)
- 2000年夏 オールドホームの灰羽達 1巻(漫画)
- 2001年夏 オールドホームの灰羽達 2巻(漫画)
- 2002年夏 灰羽せいかつ日誌(設定集)
- 2002年冬 オールドホームの灰羽達 番外編(漫画)
但し、これらの同人誌のストーリーはアニメ版のストーリーのごく一部である。 また、本作品の脚本集は同人誌として刊行されている。
[編集] 特記事項
- 本作品の世界観は、村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の『世界の終り』にかなり多くの点での共通点が指摘されうる(街に入ったときに記憶を失うこと、鳥だけが越えられる意思を持つ壁に囲まれた街、森へ立ち入ることへの禁忌など)。安倍氏は、アメリカにおいて『Animerica』のインタビューに対し、本作品が上記の小説の影響を受けていることについて言明している。
- 放送当時(2002年)のフジテレビのアニメ放映環境は迷走しており、本作品もその巻き添えを受けて、二話連続で放送された週が四回もあった。(深夜アニメの項目を参照)
[編集] 関連事項
- ZABADAK(安倍氏が影響を受けており、本作品のタイトルにも反映されている)
- serial experiments lain
- NieA_7
- TEXHNOLYZE
[編集] 外部リンク
フジテレビ 木曜26時後半枠 | ||
---|---|---|
前番組 | 灰羽連盟 | 次番組 |
藍より青し | L/R -Licensed by Royal- | |
AT-X 月曜10:00/21:00、木曜16:00/2:00(30分1話) | ||
かみちゅ! | 灰羽連盟 | うた∽かた |
カテゴリ: アニメ作品 は | フジテレビ系アニメ | 深夜アニメ | 2002年のテレビアニメ