緑のカーテン
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緑のカーテン(みどりのかーてん)とは、植物を建築物の外側に生育させることにより、建築物の温度上昇抑制を図る省エネルギー手法。またはそのために設置される、生きた植物を主体とした構造物。
環境技術としては屋上・壁面緑化にあたるもので、「緑のカーテン」という呼称は、主に個人や市民ベースの省エネルギー運動の範囲での比較的小規模な構造物を指すことが多い。また、大規模な壁面緑化には、外壁に直接植栽する手法などもあるが、「緑のカーテン」と言った場合にはつる性植物などを窓を覆うように繁茂させたカーテン状の構造物のみを指すことがある。
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[編集] 歴史
歴史的には、遮光・目隠しの効果を有するものが古くから用いられてきた。日本では、夏の風物詩でもあるすだれ、店舗や家庭で使われる暖簾といったものがあり、外国でもカーテン、ブラインド等が存在する。特にブラインドについては、エジプトの初期王朝から使われていた。
しかし、これらはすだれを除き室内に用いられることが一般的であり、素材は加工品かつ無生物であるため、日光が当たり続けると熱を持ち、輻射が起こるという欠点がある。こうした欠点を補う方法として、外断熱であり、生きた植物体を使用することにより気化熱による継続的な温度抑制が期待できる緑のカーテンが利用される。家庭をはじめ学校や公的機関でも用いられている。
[編集] 概要
夏季高温時において、太陽光の遮断と断熱、および植物葉面からの蒸散による気化熱を利用して、建築物の温度上昇を抑えることを主な目的とするが、居住環境整備としての遮光や目隠し、植物の鑑賞も目的の内である。また、温暖化対策の一環として、植物の生体活動による大気中の二酸化炭素の減少を期待する向きもある。太陽光が建築物内部に入射することを抑えるため、窓を覆うように設置されるのが基本であるが、建物全体を覆えば、外壁の蓄熱を防止したり、日射による急激な温度変化や酸性雨、紫外線がもたらす外壁の劣化予防にも繋がる。
植物は主につる植物が用いられ、支柱に絡ませたり外壁やネットに這わせたりして栽培する。秋には葉を落とす落葉性の植物が用いられることが多い。常緑性の植物も利用できるが、その場合は冬季も遮光効果を発揮してしまうという難点がある。遮光の目的から、葉がよく茂り高く這い登るツタやキヅタなどの植物が多く選ばれるが、家庭や学校では、鑑賞や生育観察、収穫等の目的を兼ねてアサガオやキュウリ、トマトなども使われる。最近では、比較的病害虫に強く栄養価も高いことなどからゴーヤーも用いられている。
[編集] 注意点
- 支柱や外壁の強度が不足していると、途中で折れたり破損する場合がある。また、夏場の台風によって飛ばされ、周囲に被害を及ぼすことがある。
- 生育期間中は昆虫が多く集まることがあり、マンション等では近隣の迷惑になる場合がある。また、やむを得ず農薬を使用しなければならない際にも同様。
- エアコンの室外機周辺に設置した場合、火災の原因になったり植物の生育が悪くなったりすることがある。