PISA
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PISAは、OECDによる国際的な生徒の学習到達度調査のこと。Programme for International Student Assessmentの頭文字を採ったもの。OECD加盟国の多くで義務教育の修了段階にある15歳の生徒を対象に、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシー、問題解決を調査するもの。国際比較により教育方法を改善し標準化する観点から、生徒の成績を研究することを目的としている。調査プログラムの開発が1997年に始まり、第1回調査は2000年、以後3年毎に調査することになっている。2000年調査の結果、および第2回2003年調査の結果については、国際報告書をもとに日本国内向けに翻訳した形で国立教育政策研究所が編纂し、ぎょうせいから出版されている。調査データファイルがすべて公開されておりOECDホームページより入手可能である。
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[編集] 調査の経緯
2000年の調査には、32ヵ国(そのうちOECD加盟国28ヵ国を含む)約26万5,000人の生徒が参加した。(前年の1999年には予備調査が実施された。)2002年には、同一内容で、OECDに加盟していないものの調査に協賛する国々11ヵ国で実施されている。2000年の第1回調査のメインは、読解力であった。
2003年の調査では、OECD加盟国30ヵ国を含む41ヵ国、27万5,000人の生徒が、参加した。(前年の2002年には予備調査実施。)しかし、イギリス(イングランド)が調査に充分な数の生徒を集めることが出来なかったため、テストは実施されたものの、統計処理による国際比較の中には含まれていない。(スコットランドは国際基準を満たしていた。)この第2回のメインは数学的リテラシーで、実際に役立つ現実の生活場面を想定した問題が出された。また問題解決能力も今回初めて出題された。
2006年の調査では、56ヵ国が参加し科学的リテラシーを中心に行われた。2009年には、再び読解力がメインとして取り上げられる予定。
[編集] 調査方法
調査開始時において、15歳3カ月から16歳2カ月の生徒がテストされる。学年は考慮されない。自宅学習者は除き学校教育に参加している者のみが対象。しかし2006年には、いくつかの国で学年を基準にしたサンプルが用いられた。このことは年齢と学年がどのように相互作用するかについての研究を可能にするだろう。
生徒達は各2時間の自記式試験を行う。試験の一部は複数選択肢式の問で、一部は全記述式である。全部で6時間半の試験があるが、生徒達はすべての問を答えるわけではなく一部である。また生徒は、学習習慣や、学習動機(motivation)、家族など彼らの属性に関する問にも答える。また学校の管理者は、学校の基本属性の特徴や財政基盤等に関する問に記入する。
[編集] 結果
各年度の結果を分析するには通常1年ほどの時間が必要である。第1回PISA2000の結果は2001年 (OECD, 2001a) と2003年 (OECD, 2003c)、そして各テーマごとの分析結果も出されている。PISA2003の結果は(OECD, 2004), (OECD, 2004d)の2巻が出ている。
2003年の各分野の上位は以下である。
数学 | 読解力 | 科学 | 問題解決 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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2003年は、読解においてフィンランドが1位であり、韓国、カナダがそれに続く。科学において、フィンランド、日本、香港と韓国は概ね同じスコアである。問題解決において、韓国が1位、フィンランドと香港は2位。日本のスコアは概ね高く、統計的誤差範囲を考慮すれば1位の国との差がない分野が多い。世間で言われているほど学力が低下しているわけではない。
[編集] 調査結果の影響
2003年のPISAで日本の順位が下がったことが、学力低下の証拠として日本国内で大きく報道され学力低下論争にもつながった。しかし、2003年調査は前回と対象国が異なる上、日本の成績自体は、前回調査と比べ統計的に差はない。OECDや教育学者による分析結果では、日本は依然として1位グループに入るとされており、日本の順位が下がったことを「学力低下」とする議論は、科学的に正確とはいえない。順位低下に見えるのは調査参加国が増えたためであり、日本が得点を上げた項目も多く、その他の得点低下は、ごくわずかな統計的な誤差範囲であり低下とはいえないのである。しかし、この順位低下は、学力低下の証明として批判に用いられることになった。この背景に、日本の教育学者は、教室内の観察や学校制度の記述のみを行う者が多く、大規模な統計分析を得意とする人材が少ないという事実があることも否定できない。日本の教育学者は、国際的調査の結果を的確に評価できず、結果が恣意的に利用をされることを防ぐことができなかった。
日本の生徒の到達度は世界トップクラスにあると、OECD統計局の担当責任者が日本で公演した際に評価し[要出典]、またそれは統計的にも認められる結果であった。しかし、当時の中山文科相は傾向としては「学力低下」の方向にあると危機を訴え、学習指導要領全体の見直し、教員の指導力向上、全国学力調査(全国すべての小学5年生と中学2年生が参加)などの改善策を表明した([1]参考)(詳しくは「学力低下」の項を参照)。
なお、これまで2回実施されたPISAで高い平均点を取ったフィンランドには、日本を含めた世界各国からの教育関連使節団が訪ねているが、当地で行われている教育手法は、日本では学力低下の原因と非難を受ける「総合的な学習の時間」と同じであるとの指摘もある。
[編集] 外部リンク
- 文部科学省 PISA2003調査
- 国立教育政策研究所
- 比較・競争とは無縁 学習到達度「世界一」のフィンランド
- OECD_PISA公式サイト(英語)
- PISA website
- PISA 2006 Finland
- Learning for Tomorrow's World: First results from PISA 2003
- Finland's LUMA programme