えせ同和行為
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えせ同和行為(えせどうわこうい)は、同和、部落関係を名乗る個人あるいは団体が、世間の「部落問題はこわい、面倒だ、できれば避けたい」という意識を利用して、企業団体に対し、同和問題への取り組みなどを口実とした賛助・献金を要求したり、企業・行政機関等の業務に差別問題を当てつけて抗議を行い、示談金名下にゆすり・たかり等の不当要求をする行為である。
また、同和利権に絡み、公共事業等への不正な参画を目指す行為も同義として扱われることもある。これらの犯罪行為を行う団体は暴力団と密接に関わっていることが多いため、警察などの監視対象となっている。
対企業・行政暴力の一。
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なぜ問題なのか
えせ同和行為とは、要するに、「同和はこわい」という意識を逆用して利益を引き出す恐喝(犯罪行為)である。この「同和はこわい」の考え方は、同和問題に対する知識不足や無理解、時折刑事事件で糾弾者が有罪にもなったようないきすぎた糾弾、えせ同和行為自身、等が生み出していた。えせ同和行為の横行は、部落全般への偏見を助長し、部落問題の解決への道を妨げる原因にもなると指摘されている。
また、先述したように、人権問題とは何のゆかりもない暴力団が関わっている可能性があるため、「えせ同和行為」に屈して金銭を払うことは、暴力団に活動資金を献上することにもつながりうる。
現実には、えせ同和行為は刑法における「強要」「恐喝」のほか、態様によっては「暴力団員による不当な行為の処罰に関する法律(暴力団対策法)」違反や、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)」違反に問われ、処罰の対象となる。
具体的な手口および対策
実際に報告されている「えせ同和行為」の手口としては、
- 「同和問題に対する取り組みが足りない」などの難癖をつけて、高額な図書(同和文献)や機関紙の購入、機関紙への名刺広告の出稿、同和問題勉強会への会費や協賛費の支出を迫る。
- 一方的に「差別を受けた」「これは差別問題だ」と言いがかりをつけ、「誠意を見せろ」と示談金を要求する。
- 同和団体の関係をほのめかし、「××社をこの工事に参加させろ」などの利益誘導を要求する。
などが挙げられる。
真面目に同和問題に取り組んでいる団体からも、差別的言動があった事の告発などを元に「これは差別ではないか」、「同和問題解決に対する努力を」などの抗議が来ることはあり得るが、これらの抗議と「えせ同和行為」はある点で明確に区別される。すなわち、それが不当な要求や利益誘導につながるかどうか、である。
もしも不当な要求があった場合、「恐喝」という犯罪行為にあたるので、要求には絶対に応じず、法務局や警察に通報するなどの対処を取ることが望ましい。その際、要求内容を録音、映像などで記録しておけば証拠になる。
よくある誤解
なお、「えせ」は「似非」、すなわち「まがいもの」の意味を持ち、その為部落問題とは直接関係のない個人・団体が「同和団体」を騙ることと誤解されることが多い。しかし、「えせ」は行為を実行する団体の素性が「まがいもの」ではなく、行為そのものが正当ではない不当な「まがいもの」である事を指す。
つまり、許永中のケースのように被差別部落の者ではない者達による不当な要求はもちろん、飛鳥会、芦原病院、崇仁協議会恐喝事件、ハンナン、のケースのように真に被差別部落の者達によって構成される団体や個人による要求や糾弾であっても、不当な要求とそれを実現する手段であったとすれば、それら一連の行為はえせ同和行為となる。
すなわち、えせ同和行為として排除すべき対象は、同和問題を口実にして、不当な利益や義務もないことを要求する行為である。それらの不当行為自体が問題となるものであり、行為者がいかなる団体に所属しているかは直接関係ない。