アサガオ
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アサガオ | ||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||
Ipomoea nil | ||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||
アサガオ | ||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||
Japanese morning glory |
アサガオ(朝顔、英:Japanese morning glory、学名:Ipomoea nil、シノニムPharbitis nil )は、ヒルガオ科の一年性植物。つる性。日本で最も発達した園芸植物。古典園芸植物のひとつでもある。
葉は広三尖形で細毛を有する。真夏に開花し、花は大きく開いた円錐形で、おしべ5、めしべ1を有する。
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[編集] 歴史と文化など
奈良時代末期に遣唐使がその種を薬として持ち帰ったものが初めとされる。朝顔の種の芽になる部分には下剤の作用がある成分がたくさん含まれており、漢名では「牽牛子(けんごし)」と呼ばれ、奈良時代、平安時代には薬用植物として扱われていた。和漢三才図絵には4品種が紹介されている。
遣唐使が初めてその種を持ち帰ったのは、奈良時代末期ではなく、平安時代であるとする説もある。この場合、古く万葉集などで「朝顔」と呼ばれているものは、本種でなく、キキョウあるいはムクゲを指しているとされる。
江戸時代には品種改良が大きく進んで観賞用植物となり、木版の図譜類も多数出版された。この時代には八重咲きや花弁が細かく切れたり、反り返ったりして本来の花型から様々に変化したものが生まれ、世間の注目を浴びた。世界的に見ても、これほど花型が多種多様に変化した園芸植物は他にない。これを現在では「変化朝顔」と呼び、江戸、上方を問わず非常な流行を見た。特に珍しく美しいものは、オモトや菊などと同様、非常な高値で取り引きされた。朝顔は一年草であるのが「出物」と呼ばれる変化は種子ができないか非常に結実しにくいため株の維持ができず、変化が発現しなかった株により遺伝的に伝えて行くしかない。したがって沢山の種をまき、小苗の内に葉の特徴から変化を有している株を選び出す必要がある。そのためメンデル以前に遺伝の法則が経験的に知られていたという。そのため、現在も変化朝顔は遺伝学の研究材料としても用いられていて、早くから遺伝子の配列が知られていた。なお、「大輪朝顔」も「正木」と呼ばれる結実する変化朝顔の一種である。
これとは別に、熊本藩では武士たちによる園芸が盛んで、朝顔も花菖蒲や菊、芍薬、椿などと共に愛好されており、盛んに育種されて独自の系統が生まれた。この花は変化朝顔とは違い、本来の朝顔の花型を保ち、大輪であり、「肥後朝顔」と呼ばれる。これが後世の大輪朝顔の祖先の一つになった。これら熊本の六種類の園芸植物は現在「肥後六花」と総称され、熊本に伝えられている。
なお、夏の風物詩としてそのさわやかな花色が広く好まれ、鉢植えの朝顔が牛が牽く荷車に積載されて売り歩かれるようになったため、江戸時代には、朝顔は牽牛花とも呼ばれたという俗説があるが、誤りである(前述の通り、はるかに以前からこの名称は存在していた)。
珍奇な品種は愛好家たちが門外不出として秘蔵していたが、普通の品種は植木市や天秤棒を担いだ朝顔売りから購入することができた。こういった一般販売用の朝顔は、江戸では御家人などが内職として栽培していた。これが発展して、明治時代初期から入谷朝顔市が始まった。
江戸時代には「黄色の朝顔」も作られたとされるが、現在は「黄色の朝顔」は知られていない。このため、「黄色の朝顔」は、「黒色の朝顔」と並び、「幻の朝顔」と呼ばれる(ただし、昭和40年代に再現が試みられ成功し、NHKのニュース番組でも報道されたが、その後は絶えた模様である。黒色に近い品種は存在する)。
明治時代以降も変化朝顔は発展して、「東京朝顔会」などの愛好会が生まれ、もてはやされた。この頃にはあまりな多様性よりも花型の洗練が追求され、対象となる花型が絞られた。当時の名花は石版画や写真として残されている。やがて花型の変化ではなく、花径の大きさを追求する「大輪朝顔」が発展し始める。通常の朝顔の花は曜と呼ばれる花弁が互いに融合した漏斗状の形をしており曜の数は5枚であるが、「大輪朝顔」では曜の数が6~9枚程度に増える「州浜性」という肥後朝顔にもみられる変化の現れた品種が導入され、選別や他の系統との交配により次第に発展し、「青蝉葉系」と「黄蝉葉系」が生まれた。前者は成長が早いため「行灯(あんどん)作り」、後者は「盆養(切り込み)作り」「数咲き作り」という仕立て方で咲かせるのが本式である。戦後は大輪朝顔が主流を占めるようになり、直径20センチメートル以上にもなる花を咲かせることのできる品種も現れた。もちろんそのためには高度な栽培技術が確立されたことも重要である。変化朝顔は維持が難しいためごく一部でのみ栽培されているが、最近再び注目されつつある。
また別の動きとして、アフリカ系アサガオを介したマルバアサガオなど近縁種との交雑品種も生まれ、近年の朝顔はますます多彩になっている。
高温を好む植物で短日性のためイギリス等の高緯度地域での栽培は難しく、欧米ではあまり品種もないが、庭園用の多花性品種として、鮮紅色中輪の「スカーレット・オハラ」などが作出されている。なお近縁種のマルバアサガオは比較的早くから欧米で栽培され、花色の変異も色々見られる。さらに「ヘヴンリー・ブルー」などのソライロアサガオは近縁の別種である。ソライロアサガオやマルバアサガオはまとめて「西洋朝顔」と呼ばれることもある。
[編集] 象徴
アサガオを市区町村の花としている自治体の一覧。
[編集] アサガオが登場する故事成語など
- 朝顔の花一時(あさがおのはないっとき)
- 朝顔に釣瓶取られて貰い水
[編集] 生薬
種子は「牽牛子」(けんごし)と呼ばれる生薬で日本薬局方にも収録されている。粉末にして下剤や利尿剤として薬用にする。煎液にしても効かない。
朝顔の種は、煮ても焼いても炒っても効能がある。
[編集] 近縁種
近縁種には、同じく園芸植物として改良されているソライロアサガオIpomoea tricolorや、マルバアサガオIpomoea purpurea、などがあり、英語でMorning gloryと総称する。
また、ノアサガオIpomoea indicaは本州南岸以南に分布する野生種である。多年生のツル植物で、古い茎はやや木質化する。沖縄では低地の森林や藪にごく普通に生育している。
[編集] 花言葉
「明日もさわやかに」「はかない恋」「貴方に私は絡みつく」。
[編集] その他
[編集] 関連事項
- ヒルガオ
- ヨルガオ
- ユウガオ(ウリ科)
- チョウセンアサガオ(ナス科)
- ツクバネアサガオ(ペチュニア、ナス科)
- チューリップ・バブル(17世紀、オランダ)
- 真源寺(入谷鬼子母神。7月に朝顔市を行なうことで有名。)