アフターバーナー
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アフターバーナー (afterburner, A/B) は、ジェットエンジンの排気にもう一度燃料(ケロシン)を吹きつけて燃焼させ、高推力を得る装置。
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[編集] 原理
ガスタービンエンジンの理論空燃比は、だいたい空気 : 燃料 = 15 : 1である。しかし、この混合比で燃焼させるとタービンブレードが融けるほどの高温となるため、実際は60 : 1程度の薄い(リーンな)混合比で燃焼させている。そのため、燃焼室とタービンを通過してきた排気には、吸気時の約75%の酸素が残っている事となる。この十分に酸素を残した高温の排気に燃料を噴射、燃焼させ推力増加を狙ったものがアフターバーナーである。
アフターバーナー無しの状態に比べ、50%程度の推力向上が期待できるが、得られる推力に比べ燃料消費が非常に大きい。例えばF-15はミサイルなどの武装を一切積まずに巡航速度で飛べば数時間は飛行可能だが、アフターバーナーを全開にし続けると15 - 20分で燃料を使い切ってしまう。
ガスタービンエンジンはその構造上、単独では急激な出力の増減ができないため、このように非効率的な補助装置の存在も許される。発電や船舶、車両での使用においては、クラッチの切り離しや減速歯車の使用で対応できるため、この特性はさほど問題とならないが、航空機、特に戦闘機で空中戦を行う場合においては加速の鈍さは致命的な弱点となる。この弱点を補うためにアフターバーナーが装備されている。
推力増大の割合に比して装置の規模・機構が簡便であることも利点のひとつであり、コンコルドがターボファンエンジンでなくターボジェットエンジンとアフターバーナーの組み合わせを選んだ理由はこの点にあるともいわれる。
[編集] 装備状況
主に戦闘機と超音速爆撃機が使用しており、旅客機ではコンコルドとツポレフ Tu-144が装備していた。
アフターバーナーは大量の燃料を消費するため、主に高推力が必要なときのみ使用される。旅客機や爆撃機の場合は離陸時と超音速飛行への遷移時に、戦闘機の場合はそれに加え、戦闘機動時にも用いられる。
また最近ではジェットエンジンや機体そのものの技術の革新に伴い、ロッキード・マーティン社のF-22戦闘機のように、アフターバーナーなしでの超音速飛行を可能にした飛行機も存在する。
[編集] 名称について
アフターバーナーという名称は、本来GE社のターボジェットエンジンに装備されているもののみを指し、この装置の用語としてはオーグメンター(augmentor, 推力増強装置)を用いるのが正しい(MIL規格に明記されている)。
また、ロールス・ロイス社のジェットエンジンにおいてはリヒート(reheater, reheat jetpipe, 再燃焼装置)、プラット&ホイットニー社はオグメンタ(augmentor,(推力)増強装置)という言葉が用いられている。