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旅客機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ヨーロッパのエアバス製 A340。長距離路線に就航している代表的な旅客機のひとつ。
ヨーロッパのエアバスA340。長距離路線に就航している代表的な旅客機のひとつ。

旅客機(りょかっき、りょかくき)とは、主に旅客輸送するために製作された民間用飛行機のこと。個人所有の小型機や企業が使用するビジネスジェットなどは含まない。貨物の輸送が主用途である貨物機とも一般には区別されるが、貨客混載で運用される(コンビ conbi、コンビネーション combination)場合や、旅客輸送仕様と貨物輸送仕様とを切り替えられる(コンバーチブル convertible)ものもある。旅客機は通常、あらかじめ決められた時刻表に従って定期的に運航され、乗客は運賃を支払って搭乗する。不定期に運航されるチャーター便の機材として使用されることもある。

目次

[編集] 旅客機の性能

輸送用飛行機の性能は、速度・航続距離・大きさ・搭載量等で示される。

[編集] 機体の大きさと航続距離

現代の旅客機のうち、100人以上の乗客を乗せる機体は、ほとんどが燃費の良いターボファン・ジェットエンジンを採用している。これらの機体の巡航速度は全てマッハ0.8~0.9の範囲にあり差が無い。大きく異なるのは重量・座席数・航続距離で、ターボファンジェット機の範囲内でも10倍程度の差があり、下記に例を示す。

  • ボンバルディアCRJ100:全幅21.2m、全長26.8m、全高6.2m、最大離陸重量21.5t、乗客50、航続距離1,800km
  • ボーイング747-400:全幅65.1m、全長70.7m、全高19.3m、最大離陸重量360~390t、乗客400~450(国際線)/560以上(日本国内線)、航続距離13,330km(ペイロード39,460kg)/10、370km(ペイロード65,250kg)

[編集] ペイロードと旅客数と航続距離

旅客機では、飛行機の重さは運行自重+ペイロード+燃料で計算される。

  • 運行自重:乗客を快適に迎え入れる全ての設備、人員の重量で、機体(エンジン潤滑油や油圧機器の作動油も含む)+ クルー(パイロットや客室乗務員)+ 乗客へのサービス機材(食料やトイレの水)。
  • ペイロード:旅客とその手荷物や貨物などの『運賃をもらって乗せる物の重量』で、旅客機の儲けの目安となる。
  • 燃料:ジェット燃料はガソリンではなく、灯油に近いケロシンと呼ばれる石油精製物。燃料は胴体と主翼の燃料タンクに搭載されるが、最近は尾翼にも燃料タンクが設けられている機種がある。尾翼燃料タンクの目的はタンク容量増大のほかに、燃料を随時ポンプで機体前後に移動させて機体の重量バランスを取り、舵面操作によらずに迎え角を調整する(トリム調整という)目的がある。

現在の大型旅客機は客室の床下に大きな貨物室を有し、乗客の手荷物以外に大量の貨物を運搬することが可能。そこでできるだけたくさんの乗客と貨物を積んで遠くへ飛べば儲けが大きくなる。しかし通常の飛行機は燃料タンクを満タンにして乗客と貨物を満載すると重すぎて離陸できない。そこで上記ボーイング747-400のデータのように長距離を飛ぶ場合はペイロードを軽めにして燃料を多く積み、短距離を飛ぶ場合は燃料を少なくして できるだけたくさんの旅客と荷物を積むことが望ましい。

大阪国際空港に着陸する全日空の777-200型機
大阪国際空港に着陸する全日空の777-200型機
  • 別の例:ボーイング 777-200 の場合、運行自重139 t、最大ペイロード51 t、燃料は約80t搭載でき総合計は270 tとなる。しかしこの機体は総重量が229 t以上では離陸をしてはいけないと決められている。(この限界値を最大離陸重量229 tと呼ぶ)270t - 229t = 41t 分は飛行する路線によってペイロード⇔燃料の重量を調整して飛行する。短距離の路線では最大離陸重量以下で飛行する場合も多い。また、空港の着陸料は、最大離陸重量を元に決定されるため、短距離路線専用の機材では、意図的に本来の最大離陸重量より少ない重量で登録することも多い。

なお、最大着陸重量は、主として脚の強度上の理由から最大離陸重量(登録上ではなく性能上の)よりかなり少ない。従ってフルタンク時の緊急着陸では燃料投棄(ダンピング)あるいは上空旋回等での燃料消費が必要となる。

[編集] 座席数

ボーイング737-500の客室
ボーイング737-500の客室

同じ機体でも、エアラインによって、あるいは飛行する路線によって座席数が大きく異なる場合がある。例えば国際線を飛ぶ大型旅客機は 座席をゆったりと配置し、座席が水平にリクライニングするファーストクラス、シートが深くリクライニングする(近年は水平にリクライニングするものも多い)ビジネスクラス、観光バス並みの座席配置のエコノミークラスの3クラスの座席がある。これに対し日本の国内線ではエコノミークラス主体+少し広めの特別席を持つ上級クラスの2クラス構成が多い。上記のボーイング777-200の場合3クラスでは305~328席だが、最大詰め込めばモノクラス440席の設定が可能。2004年現在国内エアライン3社の該当機の座席数は2クラスで380人前後である。

なお各エアラインは、自分の手持ちの機材をやり繰りしながら各路線の繁忙・閑散に対応しており、長距離用の機体を国内線に融通する事はよくある。

  • エコノミークラス症候群:長時間じっと座っていることによる下肢の血流うっ滞で血栓が形成されることがある。これは肺塞栓をはじめとした致命的な障害の原因ともなる。フライトの長時間化が進んだ1980年代から問題となりはじめた。エコノミーの座席に限らず、長時間の座位が原因となる。
年代ごとと座席数でみた、大型旅客機の表
年代ごとと座席数でみた、大型旅客機の表


[編集] 機種名について

現在の旅客機は、最初に設計された機体を元に順次改良が施されており、派生機種名を持つものが多い。たとえばボーイング767は最初に設計された機体は767-200と呼ばれ、その後下記のような派生型がある。

  • 767-200ER:200の燃料容量を増やし最大離陸重量を引き上げた機体。
  • 767-300:200の胴体を48.51m→54.94mへ延長した機体。
  • 767-300ER:300の燃料容量を増やし最大離陸重量を引き上げた機体。
  • 767-400ER:300の胴体を延長し(54.94m→61.40m)、主翼も延長した(全幅47.57m→61.4m)機体。

767-200と767-400は、性能外観ともにかなり違う。逆にボーイング747は生産開始後35年経ち派生型も多いが、SPを除けば大きさや外観に大差は無い。 一方、エアバスや旧マクダネルダグラスでは、ボーイングや,旧ダグラスであれば枝番の変更ですます程度の変更でも新機種としての名称を与えているケースが多い。たとえばA-320の短胴型が318,319、長胴型が321といった具合である。 本項では、特に必要と考えられる場合にのみ派生機種名まで示した。

[編集] 現代の旅客機

長距離国際線と中距離国際線・国内線に充当される機体は『ワイドボディ機』と呼ばれ、幅方向に座席が7~10列並び、客室内通路が左右2本あるのが特徴。また短距離国内線以下の路線には、座席が6列以下で通路が中央に1本だけの『ナロウボディ機』が充当され、更に需要の少ない路線には乗客数70人以下のコミューター機が使用される。

下記に目的別の代表機種を列記した。長距離を飛ぶ機体のほうが大型であり、距離が短くなるにつれて順次小さくなっているが、もちろん例外も多い。

ボーイング747-400
ボーイング747-400

[編集] 長距離国際線

大洋を越えて長距離を飛ぶことを要求される機体。一般に乗客数300人以上の大型機である。従来 万一のエンジン故障を想定してエンジン3基以上を有することが必要条件であったが、近年のジェットエンジンの信頼性向上によって、双発でも十分な安全性が確認できたので、長距離双発機も開発されている。旧来の規則では双発機ではエンジンが1基止まった場合60分以内に緊急着陸可能な空港がある航路のみを運行できる規則であったが、一定の規制の下にこの制限を緩和する措置が出来た。「ETOPS(Extended-range Twin-engine Operation Performance System、双発機運用における範囲拡張)」と称し、機種により最大207分まで認められている。これによりほとんどの航路での双発機の就航が可能となり、双発機のシェアが激増した。しかし、冬季のシベリアなどでは、緊急用空港が使用不能となることが多くこの場合ETOPSによる双発機は運行できない。この点でわずかながら3発以上の機種にも優位性は残っている。

[編集] 中距離国際線・国内線

ワイドボディの双発機が主体で、乗客数200人~400人の機体が使われる。客の少ない路線には更に小型のボーイング737等の機体を(ペイロードを減らして)流用することもある。

エアバスA320
エアバスA320

[編集] 短距離国内線

本来、100~200人乗り程度で『ナロウボディ機』を使用する路線である。しかし日本国内の札幌・東京・大阪・福岡・那覇を発着する便は、需要が非常に多いにもかかわらず飛行場が満杯で増便できない関係上 上記のワイドボディ機が使用されている。

[編集] コミューター機

コミューター機DHC-8
コミューター機DHC-8

需要が比較的少ないが、航空機での輸送が欠かせない路線には20~75人乗りのコミューター機が使用されている。日本国内でも高速道路の無い地区や離島への便に使用されている。一部の例外を除き双発のターボプロップ機である。

[編集] 航空機メーカー

現在大型旅客機メーカーは旧ソ連(ソ連崩壊後はロシアが継承している)以外にはボーイングエアバスの2社しかない。両社は旧西側諸国に生き残った唯一のライバルとして、受注競争では互角の状態にある。他にコミュータークラスの旅客機メーカーが数社存在する。

[編集] 過去に存在したメーカー

ロッキード社はトライスターの販売失敗(結局赤字だった)で1983年に旅客機の生産を終了。現在でも後身のロッキード・マーティンは世界最大級の軍用機メーカーである。
名門ダグラス社は1980年代にマクドネル社と合併した後、1997年ボーイング社に吸収された。
世界初のジェット旅客機デハビランド コメットを開発したが、度重なる空中爆発事故を起こしてしまった。

[編集] 旅客機の歴史

ライト兄弟が人類初の動力飛行の成功したのは1903年12月17日である。最初の頃の飛行は冒険に近く、一般の人の旅行に使われるレベルではなかった。航空機の信頼性が向上し、旅客機として商売が成り立つようになるのは、第一次世界大戦後のことである。

なお、旧ソ連でもイリューシンツポレフなどで旅客機が製造され、共産主義各国で使用されたが、今の所ここでは割愛する。

[編集] 贅沢で優雅な乗り物:1930年代

旅客機は、ヨーロッパ諸国が第一次世界大戦の痛手から立ち直り、同時に航空機の信頼性・安全性が認められた1930年代から、本格的に利用され始めた。この頃旅客機を利用する乗客は、地位と財力を併せ持った一部の人に限られ、座席もファーストクラス(一等)しか無かった。飛行中に提供される食事は必ず提供される直前に調理または加熱され、白いテーブルクロスのかけられた食卓で銀製の食器を使用するなど(マーチンM130)、現在のファーストクラスをはるかに上回る贅沢さであった。なおこの時代、大洋を横断する路線には万一の際の着水を想定して飛行艇が使用された。

  • ハンドレページHP42:初飛行1930年、巡航速度160km/時、乗客24~38名。複葉4発の陸上機で8機製作された。豪華さ以外に運行上の事故ゼロの安全性を誇った。
  • ユンカースJu52/3M:初飛行1932年、巡航速度245km/時、乗客15~17名。単葉の3発機。派手さは無いが堅実な設計で、第二次世界大戦まで輸送機としても生産され総生産数は約5000機。
  • マーチンM130:初飛行1934年、巡航速度262km/時、乗客14~30名。パンアメリカン航空太平洋横断路線用に3機購入した4発飛行艇。近距離では乗客30名を乗せるが、海を越えるときは定員を14名として、ゆったりした旅を提供した。サンフランシスコ-マニラ間は島伝いに5日かかり、乗客は毎夜各島のホテルで宿泊し翌朝再度搭乗した。その豪華な旅は『チャイナ・クリッパー』の名と共に語り草になっている。
ロッキード・コンステレーション
ロッキード・コンステレーション

[編集] 長距離国際線の確立:1940年代

第一次世界大戦後アメリカ国内で航空旅行の需要が増大し、新しい機材の開発が活発に行われより速く・より快適な機体が作られた。この時代まで旅客機は酸素マスクの必要無い低空を飛んでいたが、高空でも快適な環境を提供できる与圧室が実用化され、空気の乱れの少ない高空を高速で飛ぶことができるようになった。旅客機は第二次世界大戦中もアメリカ国内で輸送機として大量に生産・使用され、4発大型機の安全性が確認された。その結果 大洋横断路線にも陸上機が大量に進出し、4発陸上機による長距離国際線が確立された。これ以後 旅客機としての飛行艇は生産されなくなった。

中華民国の航空会社である民航空運公司の時刻表の表紙(1950年代)
中華民国航空会社である民航空運公司の時刻表の表紙(1950年代
  • ダグラスDC-3:初飛行1935年、巡航速度345km/時、乗客21名。アメリカ大陸横断用の高速機として設計された双発機。戦時中の輸送機型を含めて1万機以上生産されたベストセラー機。
  • ボーイング モデル307 ストラトライナー:初飛行1938年12月31日、巡航速度352km/時、乗客37名。同社の爆撃機B-17(モデル299)の主翼等を流用して設計された4発機。旅客機として世界で最初に与圧室を実用化した豪華な機体。
  • ロッキード 049 コンステレーション:初飛行1943年、巡航速度526km/時、乗客40~80名。巡航速度が同時代の日本の零式艦上戦闘機より速い4発機。完全与圧と高速で快適な旅を提供した。上下にゆるくS字型をえがいた胴体と3枚の垂直尾翼が特徴。
  • ダグラスDC-6:初飛行1947年、巡航速度494km/時、乗客50~100名。ダグラス社最初の実用4発与圧機。DC6はその後DC-7に進化し、コンステレーション→スーパーコンステレーションと激しく競争した。
  • ボーイング モデル377 ストラトクルーザー:初飛行1947年7月8日、巡航速度480~544km/時、乗客52~60名。爆撃機B-29の主翼等を流用した4発機。胴体は2階建てで飛行中にお酒を楽しめるバーもあった。ジェット時代への過渡期であった上、エンジントラブルが頻発したため生産数は56機と少なかった。

[編集] ジェット旅客機の誕生:1950年代

ジェット機は第二次世界大戦中にドイツとイギリスで戦闘機として実用化された。プロペラ機の2倍近い速度が出せるジェット旅客機は、戦後まずイギリスで中型機コメットとして誕生した。プロペラ機特有の振動から開放された快適さと高速で画期的な飛行機とされたが、与圧室の強度不足から相次いで空中爆発事故を起こしたり、乗客36名(当時の4発プロペラ機の半分)など中途半端な機体であった。本格的ジェット時代はアメリカのボーイング707の誕生によって開かれた。その後ジェットエンジンは燃費の悪いターボジェットから燃費の良いターボファンジェットに進化し、航続性能も大幅に改善された。

  • デハビランド・コメット:初飛行1952年、巡航速度720km/時、乗客36名。世界初の実用4発ジェット旅客機。世界初のジェット旅客機だったが、金属疲労が原因の墜落事故が多発した。これらの問題を解決したコメット4が1958年に就航したが、下記ボーイング707などの本格ジェット旅客機に主役の座を奪われた
  • ボーイング707:初飛行1957年12月20日、巡航速度973km/時、乗客140~200名。従来のプロペラ4発機の2倍の速度と2倍の搭載量を持つ真に画期的な4発ジェット旅客機。エアラインにとっても『確実に儲かる』機体であった。
  • ダグラスDC-8:初飛行1958年、巡航速度マッハ0.82、乗客140~200名。ボーイング707に対抗して作られた4発ジェット旅客機で、707と激しく競争した。設計が後になった分 新しい技術が使われている。特に脚が長く、派生型では胴体の大幅な延長が可能だった。
  • コンベア880:初飛行1959年、ボーイング707やDC-8の対抗機として開発された。初代ジェット旅客機の中では、最速のスピードを誇っていた。最大乗客数は110名程度。後継機として、コンベア990がある。
  • シュド・カラベル:初飛行1955年、巡航速度805km/時、乗客80名。ヨーロッパ大陸内をこまめに飛び回る双発ジェット機として作られた。機体の一部や主翼などはコメットと共通、エンジンも英国製だが、三角形の客室窓やエンジンの配置にフレンチらしさが溢れるカワイイ機体。エンジン後部マウント式旅客機の1号機。

[編集] 旅客機の大衆化時代:1960年次以後

第二次世界大戦後の欧米や日本では、安定した石油価格という条件下で経済成長が進んだ。これまで一部の金持ちや会社の重役の出張にしか使われなかった旅客機の運賃が、一般庶民でも利用できるような価格まで(相対的に)低下してきた。この結果大洋航路の大型客船は輸送主体の使命を終え、のんびり回遊のクルーズ船として生き残っている。また中・短距離の路線に進出した旅客機は鉄道と競合し、一時欧米では長距離列車無用論が唱えられるほどであった。現在は新幹線TGVに代表される高速列車と旅客機は各地で競合しており、乗客にとって歓迎すべきサービス合戦を行っている。 ボーイング747に代表されるワイドボディ機の大量進出は、国際線のエコノミークラスの運賃を劇的に低下させ、庶民が簡単に海外旅行を楽しめる時代を作り出した。 この時代、超音速旅客機も各国で開発され、英仏が共同で開発したコンコルドのみが実用化されたものの、この機体の運行も終了した。

  • フォッカー・F27フレンドシップ:初飛行1955年、巡航速度480km/時、乗客56名。オランダの名門フォッカー社が製作した短距離用双発ターボプロプ機。全日空が25機を導入し日本の空を飛び回った。高翼で窓からの見晴らしが良く、乗客からは好評だった。
  • 日本航空機製造YS11(わいえすいちいち):初飛行1962年、巡航速度474km/時、乗客64名。日本が戦後独力で開発した唯一の旅客機。地方空港でも使いやすいように離着陸性能に重点を置いて設計された双発ターボプロップ機。日本航空機製造はYS-11を作るために設立された会社だが、結局赤字のまま生産は182機で打ち切られた。昭和40年代以降、長く日本の地方を結ぶ航空路線で活躍。衝突防止装置設置の関係で、日本の路線からは引退したが、機体の設計は優秀・頑丈で、現在でも充分飛行可能。
  • ボーイング727:初飛行1963年、巡航速度964km/時、乗客189名(最大)。中・短距離路線に登場した本格的ジェット旅客機。エンジン3基を全て機体後部に集めたリアジェット方式で、非常にスマートに見える機体。離着陸性能を良くするため、主翼前縁にはクルーガー・フラップとスラットが付き、後縁にはトリプル・スロッテッド・フラップ(3枚にすだれのように開くフラップ)という強力な高揚力装置を有する。
  • ボーイング747ジャンボ:初飛行1969年、巡航速度910km/時、乗客350~594名。空軍の大型輸送機計画でロッキードC-5Aの後塵を拝したボーイング社が、その技術を利用して(+パン・アメリカン航空の強い要請を受けて)製作した4発ジェット機。客室内に平行した2本の通路を有するワイドボディ機の第1号で、慣性誘導装置等の最新鋭の機器を搭載して登場した。大きなキャパシティーでたくさんの乗客を一度に運び、長距離国際線のコストを大きく下げた立役者。
  • ダグラスDC10:初飛行1970年、巡航速度876km/時、乗客206~380名。旅客機の名門ダグラス社が生産した3発ワイドボディ機。エンジンは2基が主翼に、1基が垂直安定板の中間に設置されているのが特徴。派生型として米空軍向け空中給油機KC-10があり、後継機はMD-11.
  • ロッキードL-1011トライスター:初飛行1970年、巡航速度マッハ0.85、乗客255~326名。DC-10と同時期に同様な条件で設計された3発ワイドボディ機。中央エンジンは胴体後端に設置されデザイン的にはDC-10よりすっきりしている。日本への売り込みに際し政治家を利用したロッキード事件等のスキャンダルもあった。トライスターの販売は伸びず、赤字のまま250機で生産が打ち切られた。
  • エアバスA300:初飛行1972年、巡航速度875km/時、乗客250~300名。ヨーロッパ域内を乗客300名を乗せて飛ぶことを想定して設計された双発ワイドボディ機。この機体を生産するためにヨーロッパ各国が出資してエアバスインダストリィー社が設立された。機名はAirbusの300人乗りに由来するが、以後に開発された機体は乗客数に関係なく、300番代の続き番号である。エアバス社はこの後順次発展して、現在ではボーイング社と並ぶ旅客機の世界二大メーカーのひとつになった。
  • エアバスA380:2006年就航予定の世界最大の旅客機。全面2層化の客室と床下貨物室を有する。最初に就航する標準型A380-800は、3クラスで乗客550人前後、オールエコノミーで854人まで可能と公表されている。

[編集] 関連項目

Wikimedia Commons
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