Tu-144 (航空機)
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Tu-144 | ||
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概要 | ||
用途 | 旅客機 | |
乗員 | 3名 | |
乗客 | 140名 | |
初飛行 | 1968 | |
運用開始 | 1975 | |
製造者 | ツポレフ | |
寸法 | ||
全長 | 65.7 m | |
全幅 | 28.8 m | |
全高 | 12.85 m | |
翼面積 | 438.0 m² | |
重量 | ||
空虚 | 91,800 kg | |
最大離陸 | 195,000 kg | |
動力 | ||
エンジン | クズネツォフ NK-144A×4 | |
推力(A/B on) | 18,150 kgf×4 | |
性能(目安) | ||
最大速度 | マッハ 2.35 | |
航続距離 | 約6,500 km |
Tu-144(ツポレフ144;ロシア語:Ту-144トゥー・ソーラク・チトィーリェ)は、ソ連のツポレフ設計局で設計・製造された超音速輸送機(SST)である。
NATOコードネームでは「チャージャー (Charger)」と名付けられた。しかしTu-144はその外観がコンコルドに非常に似たものであったことから、登場当初から「ソ連のスパイ活動によるコピー説」が西側では広く普及しており、そのためこの機は一般に「コンコルドスキー (Concordski または Konkordski)」と呼ばれていた。
目次 |
[編集] 概要
ソ連では、新たなる超音速旅客機の開発のためにまず、超音速戦闘機のMiG-21を用いた2機の試験機が製造された。この機体はMiG-21Iアナロークと名付けられたが、三角翼の通常型MiG-21に対し、機首までなだらかに延長された主翼が特徴であった。この機体は通常のMiG-21を上回る良好な飛行性能を示したが、ツポレフでは試験によって得られたデータを基にTu-144本体の開発に着手することとした。
製造されたTu-144は、カタログ性能面ではコンコルドをほぼ全ての面で凌駕していたが、整備体制や保守体制が十分でなく就航期間中に何度かの墜落事故を起こしている。1973年6月3日には、SSSR-77102号機がパリ航空ショーでの展示飛行中、パリ郊外のルブルジェ空港北側の村落に墜落し、乗員6名および地上の住民7名が犠牲となっている。
当時のソ連ではSSTの必要性がなく開発目的が不明瞭であった為、数年間にわたって使用されたのみで引退した。
派生型としてTu-144S(量産型。このタイプより、機首両脇に可動開閉式のカナード翼が付いた)・Tu-144D(後に開発中止)が存在する。
[編集] 構造上の問題(Tu-144S)
ジェットエンジンは大きくエアインテイク(空気取入れ部)・エンジン本体・ノズル(排気口)で構成されている。音速以下の速度での飛行時には、エンジン本体が推力の大半を発生させる。一方、超音速飛行時には、エアインテイク内部のディフューザと呼ばれる部分(*)が推力の大部分を発生させる。
Tu-144は、このディフューザ部に主車輪を引き込む構造になっていた。これが効率的な推力発生の妨げとなった。しかも、通常の大型機ではひとつのメインギア(主脚)につき4車輪のボギーとするのがふつうであるのに対し、それぞれ8個もの車輪を付けていた。一方、コンコルド(及びTu-144の初号機タイプ)の主車輪はディフューザ部ではなく専用収納口(エンジン位置と主脚位置が別個であった為、容易に可能であった)に収納される。このような機体構造設計上の欠陥が運航の終了を早めた要因とされている。
当時の旧ソビエト連邦では、大推力エンジンと言えば(コンコルド搭載エンジンに比べ非力ゆえに)より長大な風路確保を念頭に置いた(即ち、エンジンの奥行きサイズもコンコルド搭載エンジンよりもかなり長くなる)タイプのターボジェットエンジンしか開発出来ず、前述のディフューザ部分の問題の要因(Tu-144主翼の翼平面形が端に行くほど奥行きが短くなるダブルデルタ翼形状である以上、長大サイズのエンジンは相応の奥行きサイズが確保可能である中心方向側主翼箇所を前提に配置せざるを得ない。結果、これらの事情を踏んでコンコルドより機体中心方向寄りとされたエンジン配置箇所と、当時は構造設計上どうしても位置を変えられずコンコルドとほぼ等しくせざるを得なかった主脚配置箇所との競合が避けられなくなった)を生じさせた。他、コンコルドであれば、(離陸時と)超音速加速時のみ稼動で済んでいたアフターバーナーを、超音速巡航時には終始稼動させる必要が生じた。結果として燃料消費量が膨大なものとなり、ランニングコストが非常に割高な機体である事が判明してしまった。
[編集] 運航停止後のTu-144
一部のTu-144は運航停止からソ連崩壊後の数年間は、ツポレフの工場で放置されていた(他、モニノ航空博物館やジンスハイム自動車・技術博物館(ドイツ)にて雨晒しで野外展示されている機体もある)。
しかし、次世代超音速旅客機開発の為のデータ収集を目的とするロシア・アメリカ共同プロジェクトのためRA-77114号機が現役に復帰し、NASAによって1996年から数年間に渡ってアメリカで試験運用された。この現役復帰にあたっては操縦系統等にデジタル技術を取り入れ大幅な改造を行っている。そのため、このTu-144は非公式にTu-144LLと呼ばれている。
これらのデータを元に、現在ツポレフ設計局はTu-244と呼ばれる後続機を開発・設計しており、使用するエアラインが名乗り出れば即時に具体的な形にできるとしているが、詳細は不明である。
また、近頃Tu-444という小型超音速旅客機のプロジェクトが発表された。詳細はリンク先を参照のこと。
[編集] 関連項目
[編集] Tu-144の模型・ミニチュア
- サイズ:1/360 プラモデル「TUPOLEV TU-144 CHARGER AUTHENTIC 1:360」(株式会社サニー) ※ 絶版
- サイズ:1/350 週刊デル・プラド・コレクション 世界の航空機100年物語 No.18「Tupolev Tu-144」付録ダイキャストモデル(デル・プラド) ※ 倒産につき、絶版
- サイズ:1/700 食玩プラスチック・モデル タカラ 世界の翼2 Tu-144(タカラ) ※ アエロフロート(通常塗装)タイプと NASA研究機タイプ の2種類。
[編集] 外部リンク
[編集] 日本語
[編集] 英語
- NASAの手によって行われた飛行試験の模様を撮影した写真およびその報告
- Tupolev
- Aircraft Museum - Tu-144
- The FriedrichFiles - Tupolev Tu-144
- 野外展示されている現在の機体1 - 野外展示されている現在の機体2
- ジンスハイム自動車・技術博物館 公式HP
- TU-144 SST - Flying Forever on the Internet
[編集] ロシア語
- Туполев Ту-444
- Ту-244 сверхзвуковой пассажирский самолет
- Ту-144ЛЛ(NASAとの共同研究紹介)
- Ту-144С(墜落破片画像など)
- Ту-144Д(クレーンによる機体運搬風景など)
- Ту-144(開発時の風洞実験画像など)
- ツポレフ博士 肖像画・プロフィール
- Туполев Ту-144
注
*ディフューザ:速度エネルギを圧力エネルギに変換する部分。流れの速さによってディフューザとなる形状は異なる:
- 亜音速流れ:断面積が拡大していくような経路(ダイヴァージェント)がディフューザ
- 超音速流れ:断面積が縮小していくような経路(コンヴァージェント)がディフューザ
超音速飛行時には、ディフューザ部直前までに、超音速流がいったん亜音速流にまで減速されている。そのため、ディフューザ部は亜音速流れとなる。つまり、断面積が拡大していくような管状の経路となっている。(↑戻る)
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