イジング模型
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イジング模型(Ising model、イジングモデルとも言う):イジング(E. Ising、ハイゼンベルクの弟子)が、1925年に提案した強磁性の模型(モデル)。
ハイゼンベルク模型をより簡単化したもので、そのハミルトニアンは、
である。σiは(結晶)格子点i上のスピン。自由度は上向き(+1)と下向き(-1)のみである。Jは最隣接スピン間の相互作用によるエネルギー(交換相互作用エネルギー)である。は最隣接格子点のみ和を取ることを意味する。ここで、隣り合う格子点上のスピン同士が、お互い上向き(+1 × +1)または下向き(-1 × -1)の場合(スピンが平行)、
、互いに逆向き(上向きと下向き:1 × -1または-1 × 1←スピン反平行)の場合、
となる。
イジングの提案の段階で、一次元(格子系)での厳密な解は求められていて、相転移を起こさないことが示されていた。その後、1944年ラルス・オンサーガー(L. Onsager)が二次元イジング模型の厳密解を求めた。これは相転移を起こし、この結果は、相転移現象の記述、理解のために大変重要な役割を果たしている。
三次元に関しての厳密解は、2006年現在求められていない。
厳密解が求められるのは、特殊な場合で多くの場合、平均場近似、繰り込み群、級数展開(低温展開、高温展開)の手法などと、これらを用いた数値計算手段を使って近似的に解かれる。
この模型(モデル)は、合金の規則‐不規則(秩序‐無秩序)転移や、異方性の大きな磁性の問題などに適用されている。