エビータ
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エビータ(EVITA)は、アンドリュー・ロイド・ウェバー作曲、ティム・ライス作詞によるミュージカル作品。アルゼンチンのフアン・ペロン大統領が政権を獲得する前後の時代を舞台に、ペロンの二度目の妻であり、国民に絶大な人気を誇ったエヴァ・ペロンの姿を描いている。歴史事実を踏まえてはいるが、もちろんフィクションである。また、作中に登場する人物のチェは、(明示的に特定されていないが)チェ・ゲバラをイメージしたものである。
なお、『エビータ』は、アンドリュー・ロイド・ウェバーとティム・ライスが全編にわたり共同で制作した最後の作品でもある。
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[編集] アルバム
ロイド・ウェバーとティム・ライスのコンビによる前作、ジーザス・クライスト・スーパースターのように、『エビータ』はアルバムとしてリリースされた(1975年)。アルバムに収録されていたジュリー・コーヴィントンが歌う『アルゼンチンよ、泣かないで』(Don't Cry for Me, Argentina)は、1977年2月に全英ヒットチャートで一位を記録し、国際的にも好評を博す(但し、アメリカを除く)。その後『アルゼンチンよ、泣かないで』は、このヴァージョンを下敷きに、オリビア・ニュートンジョンやカーペンターズのアルバムでもカヴァーされた。
[編集] ロンドン公演
ジーザス・クライスト・スーパースターを上回る好評さを受け、『エビータ』はハロルド・プリンス (Harold Prince) の演出により舞台化される。1978年6月21日、ウェストエンドのプリンス・エドワード劇場で初演された。ウェストエンドでの初演では、エレイン・ペイジ (Elain Paige) がエビータを演じている。
[編集] オリジナル・スタッフ
[編集] オリジナル・キャスト
- エビータ:エレイン・ペイジ (Elaine Paige)
- チェ:デヴィッド・エセックス (David Essex)
- ペロン:ジョス・アックランド (Joss Ackland)
- ミストレス:シボーン・マッカーシー (Siobhan McCarthy)
- マガルディ:マーク・ライアン (Mark Ryan)
[編集] ロンドンでの再演
2006年6月2日より、ウェストエンドのアデルフィー劇場 (Adelphi Theatre) で再演が決まっている。キャストは
- エビータ:エレーナ・ロジャー (Elena Roger)
- チェ:マット・ロール (Matt Rawle)
- ペロン:フィリップ・コースト (Philip Quast)
[編集] ブロードウェイ公演
ウェストエンドで作品が公開されてすぐの1979年、ブロードウェイでも公演が始まる。ブロードウェイ公演もハロルド・プリンスが演出を担当している。このブロードウェイ公演でも高い評価を受け、エビータは1980年のトニー賞を最優秀ミュージカル賞他、計7部門で受賞する。
[編集] ニューヨーク公演オリジナル・キャスト
- エビータ:パティ・ルポーン(Patti LuPone)
- チェ:マンディ・パティンキン(Mandy Patinkin)
- ペロン:ボブ・ガントン(Bob Gunton)
- ミストレス:ジェーン・オーリンガー(Jane Ohringer)
- マガルディ:マーク・サイアーズ(Mark Syers)
[編集] マドンナ主演の映画
ブロードウェイ公演が始まると、映画化の話はすぐに決まったが、この話は凍結されてしまう。20年近い歳月の後、マドンナを主演としてようやく映画化された。この映画はアカデミー賞に5部門でノミネートされ、最優秀オリジナル歌曲賞を受賞した。(エバ・ペロンのページにあるマドンナによる映画を参照。)
[編集] 日本での公演
日本では劇団四季により上演されている。
[編集] 日本版スタッフ
- 製作・演出 … 浅利慶太
- 日本語訳詞 … 浅利慶太、岩谷時子(「スーツケースを抱いて」)
- 振付 … 加藤敬二
- 照明 … 沢田祐二
- エビータ・コスチューム … 森英恵
- 美術 … 土屋茂昭
- 衣装 … 劇団四季衣装部
- 音楽進行 … 鎮守めぐみ
[編集] 日本版キャスト
(キャスティングのみで出演記録がない場合を含む)
- エビータ … 久野綾希子、野村玲子、堀内敬子、井上智恵
- チェ … 市村正親、芝清道、石丸幹二
- ペロン … 光枝明彦、今井清隆、下村尊則
- マガルディ … 下村尊則、渋谷智也、飯野おさみ、佐野正幸
- ミストレス … 野村玲子、保坂知寿、石橋ちさと、西田ゆりあ、八幡三枝
[編集] レコード・CD版キャスト
- 1982年日生劇場公演
- 1997年日生劇場公演
[編集] 作品中のエビータ像
ティム・ライスの詩は、必要以上にエバ・ペロンの業績、特に慈善事業に対する功績を貶めている、と感じる人は多い。『エビータ』における詩やストーリーの骨格は、メアリー・メイン(Mary Main)のエビータの伝記、『ムチを持った女性』(The Woman with the Whip)をベースに構築されている。しかしこの伝記は、エバ・ペロンの影の部分を主に描いており、特にエバの政敵により語られる話が多いと指摘されている。『エビータ』が舞台化されるとすぐ、エバ・ペロンを肯定的に描いた伝記(Evita: The Real Lives of Eva Perón.)が出版されている。この伝記は、メアリー・メインの著作に描かれているエビータ像は多くの点で間違いがある(例えば、既婚者であるマガルディの愛人としてブエノスアイレスに上京したという事実はない、など)、と指摘している。
[編集] 受賞したトニー賞の一覧
- 最優秀ミュージカル作品賞:ロバート・スティグウッド
- 最優秀ミュージカル作曲賞:アンドルー・ロイド・ウェバー(作曲)、ティム・ライス(作詞)
- 最優秀ミュージカル男優賞:マンディ・パティンキン(チェ)
- 最優秀ミュージカル女優賞:パッティ・ルポン(Patti Lupone)(エヴァ・ペロン)
- 最優秀ミュージカル脚本賞:ティム・ライス
- 最優秀ミュージカル演出賞:ハロルド・プリンス
- 最優秀ミュージカル照明効果賞:デビット・ハーシー(David Hersey)