オカルト
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オカルト (occult) とは、元来は「隠されたもの」という意味のラテン語に由来する表現であり、目で見たり、触れて感じたりすることのできないことである。そのような知識の探求とそれによって得られた知識体系は「オカルティズム」と呼ばれている。ただし何をもって「オカルト」とするのかについては時代や論者の立場等により見解が異なる。
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[編集] 概要
オカルトはラテン語の occulere の過去分詞「occulta」(隠されたもの)を語源とする。
この語はヨーロッパにおいては、論敵にレッテルを貼るために使われてきた歴史を持つ。特に、正統派を自認している側から、そうではない側をこの名称で呼ぶことが行われた。ただし、その正統派が誰なのか、という点は時とともに変遷する。
例えば、アイザック・ニュートンが「万有引力」を提唱した時には、同時代の学者たちから"オカルト・フォース"を導入しているとの非難が浴びせられた。だが、その後はニュートンの説のほうが次第に正当との扱いになり、"オカルト"ではなくなり、レッテルを貼っていた側のほうが、非正統派となってしまったわけである。またこの事例は、自らの理論体系・知識体系がその一部に(万有引力のようにまさしく)「目で見たり触れて感じたりすることのできないこと」を含んでいても、論者自身は通常それを"オカルト"とは呼ばないものである、ということも示している。
そもそも、この語がこのような使われ方をする別の理由としては、立場が異なる知識体系の内容は、それがどんなものであれ大抵は、とりあえず慣れないうちはひどく意味不明であり、まるで得体の知れないものを扱っているように感じられることから、"隠されたもの"という語があれば、その語を用いて非難してしまいたくなる、という人間の心理上の事情もある。宗教や信仰の分野においてもそのような原理は働いており、自らの信仰体系とは異なるものは即「オカルト」と呼ぶことにもつながる。
実際、キリスト教が正統派とされていた(あるいは自身でそう自認できた)19世紀のヨーロッパにおいて、いわゆる"正統派キリスト教会"の信仰体系とは異なる信仰体系(異教)が復興してきた時には、それが「オカルト」と呼ばれることになった。
この歴史の影響から、「19世紀以降の、正統キリスト教以外の、平常の生活から隠された人間の知識を超えた神秘の研究とその結果である神秘主義体系がオカルティズムと呼ばれる」と解されることもある。
もっとも、上述の心理的原理により、その後この「オカルト」という語は拡張的に利用されてゆくことになった。後年、自然科学の分野が発展すると、自らを"正統な科学"の担い手と自認する勢力が、自らとは異なる手法(いわゆる疑似科学)を「オカルト」と呼ぶことも起きるようになり、同じように、伝統宗教からはずれた"異端"宗教、民間宗教、宗教的俗説から、果ては今日では単に「一般的ではない知識」まで「オカルト」と呼ばれる現象も一部に起きている。
日本では、このような知識についての記事が、学習研究社の児童用雑誌に掲載され好評であったため、そこからスピンアウトした同社の雑誌『ムー』により人々に広く知られるところとなった。
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[編集] 関連項目
[編集] 関連書
- ミルチャ・エリアーデ主編、ローレンス・E.サリヴァン編 『エリアーデ・オカルト事典』 鶴岡賀雄・島田裕巳・奥山倫明訳、法蔵館 ISBN 4831870315
- コリン・ウィルソン 『オカルト』 中村保男訳、平河出版社 ISBN 9784892031014
- H.P.ブラヴァツキー 『シークレットドクトリン』 竜王文庫
- 高岡光 『クリシュナムルティ - 水晶の革命家』 創栄出版