コックニー
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コックニー(英: Cockney)とは、ロンドンの労働者階級で話される英語の一種である。
生粋のコックニーとは、元々Bow Bells(シティにあるSt.Mary-le-Bow教会の鐘)の音が聞こえる範囲内で生まれた人の事を指した。
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[編集] 特徴
コックニーの特徴として、以下が挙げられる。以下は全て容認発音(RP)との対照であり、括弧内には例示として、具体的なフレーズをコックニーの発音で示してある。
[編集] 発音
- 二重母音・長母音の発音が異なっている。具体的には/eɪ/が[aɪ]に(day [daɪ])、/iː/が[əi]に(keep [kəip])、/aɪ/が[ɒɪ]に(like [lɒɪk])、/ɔɪ/が[oɪ]に(oil [oɪl])、/aʊ/が[æː]に(town [tæːn])なる。
- 単語中の[h]を発音しない。(half → [a:f]) 不定冠詞はanとなる。(a hand →[ənænd])
- コックニーを矯正しようという意識のある話者は逆に[h]を不要なところに付加してしまうケースもある。(hardly ever [hɑːdli hevə])
- 母音と母音の間にrの挿入が行われることがある(America is→America-ris)。
- 強勢のない歯茎側面接近音[l]の円唇後舌母音・半母音化(little [lɪʔʊ]、able [eɪbl]→[aɪbɪ])。
[編集] 言い回し、語彙
- am not, are not, is not, have not, has notの短縮形としてのain'tの使用。
- myの代わりにmeを使用。
- "Isn't it?"の短縮形としての"innit"を多用。(Good day today innit?)
- kosher - 正当、本物。イディッシュ語カーシェールから借用
コックニーには伝統的に押韻スラング"Cockney Rhyming Slang"と呼ばれている隠語めいた言い回しがある。現在はコックニーだけでなくイギリス各地で日常会話の中で、俗に使われている表現も多い。典型的な例として、有名人の名前が、あるネガティヴな意味を表している、というのがある。ブラッドピット他。
押韻スラング | 意味 | 使用例 | |
---|---|---|---|
Adam and Eve | 信じること | Believe→Adam and Eve | I don't Adam and Eve it! |
Bacon and Eggs | 足 | Legs→Bacon and Eggs | She's got a nice set of Bacons. |
Butchers | 見ること | look→Butcher's hook (肉屋の肉フック) | Let me take a Butchers! |
China | 親友 | mate→China plate (陶器) | How are you, me old China? |
Grass / supergrass | 密告/密告者 | Copper(警官)→Grasshopper (バッタ) | I think he grassed me up. |
Lady Godiva | £5 | fiver→Lady Godiva (ゴダイヴァ夫人) | Can I borrow a Lady Godiva? |
Porkies | 嘘 | Lies→Pork Pies 豚肉パイ | He's telling Porkies. |
Pete Tong | ダメになること | Wrong→Pete Tong (イギリスのDJ) | It's all gone Pete Tong. |
[編集] 実際の使用
イギリスでは多様な英語が話されているが、特にコックニーは伝統的に「汚い」英語だと上流階級から非難を受けることが他の英語より多かった。戯曲『ピグマリオン』や、それを原作としたミュージカル・映画『マイ・フェア・レディ』では、コックニーを話す主人公を矯正してRPを話させるようにする過程が描かれている。
コックニーの発音は以下で確認することができる。
- ミュージカル・映画『マイ・フェア・レディ』
- デヴィッド・ベッカム