サルでも描けるまんが教室
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『サルでも描けるまんが教室』(サルでもかけるまんがきょうしつ)は、相原コージ、竹熊健太郎による漫画。
目次 |
[編集] 概要
1989年「ビッグコミックスピリッツ」に連載。愛称「サルまん」。
作者を模した相原弘治、竹熊健太郎の二人の青年漫画家が漫画で日本を支配するという野望を達成するために、ヒットする漫画を研究・執筆に取り組み、大ヒット作『とんち番長』を描いて、ついに野望を実現(そして崩壊)するまでの軌跡を物語形式で描いたもの。タイトル案には『仁義なきマンガ教室』があったが、略称の語呂が悪いため現在の名前となった。
当時の漫画事情を的確に分析した、時には身体を張った痛烈なギャグは多くの反響を得た。
連載当時は全3巻・ソフトカバーの大判単行本にまとめられた(1巻初版のみおまけとしてポイント表つきのシステム手帳用定規がついている)。その後も根強い人気に支えられ、何回か増補改定された新装版が出版されている。21世紀愛蔵版には、「萌え」をテーマとした章も追加されている。
[編集] 『サルまん』におけるパロディ
- 独特の濃い絵柄や野望に燃えるところは、雁屋哲・由起賢二著『野望の王国』のパロディ。最初のうちは、画風を数回ごとに少女漫画風などに順次変えていくつもりだったが、最初にこの画風を選択して話を進めたところ、異様にハマってしまったため、ついに最後までこの画風で通したという。
- 初期の数回は漫画表現の技術論となっており、駒の枠線の引き方やストーリーの組み立てなどを紹介する普通の漫画技法書のスタイルに沿ったものであるが、そこに極端なネタを放り込んだり、当時ヒットしていた様々な漫画作品を取り込むなど実験的な要素もある。
漫画内に登場する辮髪の編集者佐藤はふくしま政美の『聖マッスル』に登場する巨人王がモデル。
[編集] まんがのパターン分析
パロディという形でまんがにありがちなパターンをとりあげている。サルまんによって有名になった概念も存在する。
- メガネくん
- 少年まんがにおいて主役級のキャラの後についてまわるあまり目立たないキャラ。ヒーローが読者の願望の象徴ならばメガネくんは「読者そのもの」であり、読者はメガネくんを通じて作品の世界と一体化する。
- 強いやつのインフレ
- 少年まんが(バトルまんが)においては最初の敵より二番目の奴が、二番目より三番目の奴が強くなる。しかし連載が長く続くと作者がもてあますほど強い奴を出すことにもなってしまう。
- 少女まんがにおける出会い演出
- 食パンくわえて「ちこくちこく」と叫びながらあわてて家を飛び出すヒロインが道で少年にぶつかって恥をかく。その少年は実はヒロインのクラスにその日やってきた転校生であった。このパターンは新世紀エヴァンゲリオンテレビ版最終回でオマージュとして使用されている。
- 庶民の良識
- 風刺まんがにおいては庶民の良識に基づいて政治や社会情勢を風刺する。その庶民の良識とは
- 権力は悪い
- 昔はよかった
の2種類のみである。
- エスパーまんがにおける法則。ヒロインがピンチに陥り「イヤァッ!」と叫ぶと眠っていた「能力」が覚醒し敵の頭が「ボーン」と破裂する。超能力の威力を見せ、話を先に進めるためのわかりやすいパターン。
[編集] とんち番長
作中で架空の少年漫画雑誌「少年スピリッツ」に連載された漫画作品。少年スピリッツ1000万部突破の原動力となった作品で、アニメ化もなされた。アニメ化の際は元とは似ても似つかぬ絵柄に変更されたが、特に原作者としては主人公役の声優の選定に、かなり不満があった様子。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています(笑)
主人公のとんち番長とお供の一休、彦一、吉四六が数々の番長ととんちで対決する。物語が進むにつれてとんち番長の過去があきらかになり、やがてとんちを悪用する秘密結社・黒とんち教団との対決へと発展する。
黒とんち教団との対決は連載301回目でとんち番長の死とともに完結、同時に連載終了する予定だったが、人気作の終了を阻止するため編集側が原稿の「完」の文字を改竄、強引に連載続行された(『男一匹ガキ大将』で実際にあった事例のパロディ)。
連載続行後はとんち番長の息子頓智とゲルとんち教団との対決になる。しかし時代とずれてしまったのか人気が急落し、ラブコメ編、ギャグ編、バレエ編、料理編、サッカー編などと内容を変えて迷走していく。
サッカー編中盤はオカルトじみた内容となり、この後打ち切りとなった。
[編集] 登場人物
- とんち番長 声:高橋和枝←(もちろん架空設定である)
- 主人公。幼少の頃に黒とんち教団にさらわれ、黒とんち(要するに詐欺)のスペシャリストとして人間世界に送り込まれるが、道でであったとんち道人に負かされたことにより白とんちに目覚め、黒とんち教団への対決を挑むようになる。とんちに負けると頭の中に埋め込まれた爆弾が爆発してしまう。
- 一休
- とんち番長の家来。黒とんちに対してあまりにもストレートな答えを出すため、その結果ひどい目に合う事が多い。しかし基本的に不死身で、五体ばらばらになっても生きている。
- 彦一
- とんち番長の家来。全く頭がやわらかくなく、非現実的な答えばかり出す(「象を飲み込め」というとんちに対し、「ステーキにして食べればいい」など)。鹿児島弁を使う。
- 吉四六(きっちょむ)
- とんち番長の家来。初期は毎回警察に頼ろうとする優等生キャラだったが、実は女性であり、男でないととんち番長の家来にしてもらえないと思って性を偽っていた。しかしある一コマに吉四六の陰茎が描かれており、これが大論争を巻き起こす事になった。
- とんち道人
- 黒とんち教団が最も恐れる老人。まだ黒とんちに染まっていたとんち番長に勝負を挑むが、彼を殺させまいと先に彼の答えを予想し、とんち番長を助けた。以降とんち番長は正義のためにとんちを使うことを誓う。
- 意味なし番長
- 黒とんち教団の主催者でとんち番長の父。どんなとんちに対しても理由も言わずにその通りに答えてしまう為この名前がついた。しかしとんち番長の「俺を飲み込め」というとんちに答えた所、とんちに負けたとんち番長が彼の体内で爆発したため、とんち番長と共に爆死した。
- とんち番長(2代目)
- 第二部以降の主人公。初代のとんち番長と吉四六の間に生まれた子供。・・・であったはずだが、第二部以降の人気急降下に伴う強引な打ち切りによって、正体が宇宙人という事にされてしまい、正体が発覚した彼は故郷へと去って行く。
[編集] 備考
- このマンガ内で、作者が意図的にはやらそうとしたポーズ「ちんぴょろすぽーん」があるが、『Mr.Clice』(作・秋本治)でパロディーとしてポーズもそのまま登場している。
- さらに秋本治作こちら葛飾区亀有公園前派出所の中でサルまんで提案されたサブリミナルトーンが許諾を得て使用された。
[編集] 関連文献
- 竹熊健太郎『マンガ原稿料はなぜ安いのか?』(2004年、イーストプレス、ISBN 487257-420-6)
- 連載までの経緯を綴った「『サルマン』はこうして生まれた」とボツにした第1回のネームを掲載。
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