桃太郎
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桃から生まれた桃太郎が、お婆さんから黍団子(きびだんご)を貰って、イヌ、サル、キジを従えて、鬼ヶ島まで鬼を退治しに行く物語。
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[編集] あらすじ
昔々ある所に子供の居ない老夫婦が住んでいた。ある日、お婆さんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れて来たので、お爺さんと食べようと持ち帰った。 二人で桃を割ると中から男の子が生まれたので、『桃太郎』と名付けて大事に育てた。 成長した桃太郎は、鬼ヶ島の鬼が人々を苦しめている事を知り、鬼退治を決意する。両親から黍団子を餞別に貰い、道中それを使って犬・猿・雉を家来に従える。 鬼ヶ島で鬼と戦い、見事に勝利を収め、鬼が搾取した財宝を持ち帰った。
- 優等生型桃太郎
- お爺さんとお婆さんの期待通り働き者の桃太郎に育ち、自ら鬼が島に鬼退治に出かける。
- 寝太郎型桃太郎
- 優等生型と同じように力持ちで大きな体に育つが、怠け者で寝てばかりいる。村人や殿などに言われて鬼退治に出かける。
[編集] 成り立ち
桃太郎の事跡は、岡山県の吉備津彦・温羅伝説の他、香川県や愛知県犬山市等全国に多数あり、本家争い等舞台に付いての異論もある。
成立以前の物語に原型を見る事も出来、特に鬼退治のくだりはヤマト王権と朝鮮半島からの渡来人との間で起きた武力衝突を、御伽噺やお話として脚色、伝承したものが元になったという指摘もしばしば成される(桃は、また別の伝承等との関連が指摘される)。
発生年代は正確には分かっていないが室町時代とされ、江戸時代以降に広まったとされる。草双紙の赤本による『桃太郎』『桃太郎昔話』等が出版により広まった最初の版であるとされる。
明治時代初期までは桃を食べて若返ったお爺さんとお婆さんの間に桃太郎が出来たという回春型の話の方が主流であった。この他にも『赤い箱と白い箱が流れて来て、赤い箱を拾ったら赤ん坊が入っていた』、『川上から二つの桃が流れて来たのでお婆さんが「緑の桃はあっちゃいけ、赤い桃はこっちゃ来い」と言うと赤い桃が寄って来た』等、物語に差異のあるものが多数伝わっているが、巖谷小波により1894年に『日本昔話』としてまとめられたものがその後の語り伝えに大きく影響した。明治20年に国定教科書に採用される際にほぼ現在の形のものを掲載して以降、これが定着した。因みに舞台の一つとされる岡山県で桃の栽培が始まったのも明治時代以降である。
また、香川県では桃太郎が女の子だった、とする話が有る。(生まれてきた女の子があまりにも可愛らしいので鬼にさらわれないように桃太郎と名づけた)
その後語り、絵共に様々な版が生まれ、また他の創作物にも非常に数多く翻案されたり取り込まれたりした。落語の『桃太郎』等もその一例である。
なお、太平洋近海の国に伝わる御伽噺に『樽』や『果実』の中に入った子供が出てくる話が多数あり、日本人の先祖の一つに海洋民族があることを示している証拠だとする説もある。
語り部によって、桃が川に流れている描写を「どんぶらこっこ すっこっこ」、「どんぶらこ どんぶらこ」などと表現する。
[編集] 解釈・改変
上流から流れてきた桃を食べて老夫婦が若返ったというくだりには、道教や様々な神話が影響していると見られる。『山海経』や西王母伝説、或るいは日本神話のイザナギの逸話に見られるように、桃は邪気を祓い不老不死の力を与える霊力のある果実とされている。また、山奥に住む仙人にも桃は欠かせない存在である。桃太郎を齎した桃は、こうした霊力のある桃が山から流れて来たものとも考えられる。
鬼は、風水では丑と寅の間の方角(北東)である「鬼門」からやって来ると考えられている事から、桃太郎はそれに対抗して、裏鬼門に位置する動物(申(サル)、酉(キジ)、戌(イヌ))を率いた、という解釈がある。敵役である鬼が牛の様な角を生やし、虎の腰巻きを履いているのも、風水の考えに由ると考えられる。しかし丑と寅の逆の方位に当たるのは、申、酉、戌ではなく、未と申である事から、率いている動物には別の意味があるともされる。 また、陰陽五行説では桃、申(サル)、酉(キジ)、戌(イヌ)はどれも金を意味する。 儒教的解釈では、サルは智、キジは勇、イヌは仁を表すともされている。
解釈の範疇を超え、一種のパロディ作品も多く生んでいる。有名なところでは桃太郎を鬼の面から解釈した尾崎紅葉の『鬼桃太郎』、極力ユーモラスに桃太郎を書いた巌谷小波の『桃次郎』(明治44年)などがある。
また、時代により様々な思惑から物語に改変が加えられている。
- 日露戦争の際には『日露ぽんち桃太郎のロスキー征伐』(明治38年)という版が出ている。内容は「昔は南の国に鬼がいたが、今は西方にロスキー(露西鬼)がいる」というものであった。
- 太平洋戦争の際には桃太郎は軍国主義という思想を背景に、勇敢さの比喩として語られていた。
- しかし、現在では「暴力的な話」だとして、絵本や子供向けの書籍では「鬼退治」ではなく「話し合いで解決した」などと改変されている。しかしこの場合、どこからどうして金銀財宝が出てくるのか、判然としない。また「金銀財宝」の獲得、つまり経済的成功こそが正義とする思想も、価値観が多様化する現代においては受け入れられ難くなっている。
- 「桃太郎」というネーミングはジェンダーバイアスを押し付けるものだとして主人公が「桃子」になっているものも存在する。だが、現在男性名によく使われる「~太郎」がジェンダーバイアスの押し付けであるとすれば、現在女性名に良く使われる「~子」も同じく押し付けになり矛盾している。なお「桃子」のストーリーは前述したような、話し合いによる解決となっている。これは「男性=暴力性・攻撃的、女性=穏やか・平和的」との日本におけるフェミニズム的な性主観からストーリーが改変されたと思われる。その一方で、桃子が鬼と肉弾戦を行う女性の活躍を描いたものも存在する。
- 最近の例を挙げると、NHK教育テレビの番組「おはなしのくに」で放映されたもの(出演・朗読はFLIP-FLAP)では桃太郎は「乱暴者で親の手伝いをしない怠け者」であり、村を襲ってきた鬼に育ての親のおばあさんが襲われたことで目が覚め、鬼ヶ島の鬼たちを懲らしめる。現代的な問題提起要素を加え、「やればできる」という教訓付きのストーリーになっていた。
[編集] 唱歌
唱歌「桃太郎」は、文部省唱歌の一つ。1911年の「尋常小学唱歌」に登場。作詞者不明、作曲・岡野貞一。
- 「桃太郎」
一、
桃太郎さん、桃太郎さん、
お腰につけた黍團子、
一つわたしに下さいな。
二、
やりませう、やりませう、
これから鬼の征伐に、
ついて行くならやりませう。
三、
行きませう、行きませう、
あなたについて何處までも、
家來になって行きませう。
四、
そりや進め、そりや進め、
一度に攻めて攻めやぶり、
つぶしてしまへ、鬼ヶ島。
五、
おもしろい、おもしろい、
のこらず鬼を攻めふせて、
分捕物をえんやらや。
六、
萬萬歳、萬萬歳、
お伴の犬や猿雉子は、
勇んで車をえんやらや。
暴力性を感じさせるという理由からか、現在では歌詞が改変されたり、後半部を削除したりする場合が多い。これと似たような経緯で後半部を削除された童謡に、てるてる坊主がある。 また、上記に比べ知名度は劣るが、作詞・田辺友三郎、作曲・納所弁次郎による「モモタロウ」もある。
- 「モモタロウ」
- 桃から生まれた桃太郎、気は優しくて力持ち、鬼ヶ島をばうたんとて、勇んで家を出かけたり。
- 日本一の黍団子、情けにつきくる犬と猿、雉子ももろうてお伴する、急げものどもおくるなよ。
- 激しい戦に大勝利、鬼ヶ島をば攻め伏せて、とった宝はなになにぞ、きんぎんさんごあやにしき。
- 車に積んだ宝物、犬が引き出すえんやらや、猿が後押すえんやらや、雉子が綱引くえんやらや。
[編集] 吉備団子
吉備団子は、黍団子に因んで江戸末期に売り出された物。吉備とは、備前・備中・備後・美作地方の古名で、現在の岡山県にあたる(備後は広島県)。
[編集] 関連書籍
- 柳田国男『桃太郎の誕生』1933年 (角川文庫 1983年)
- 滑川道夫『桃太郎像の変容』東京書籍 1981年
- 野村純一『新・桃太郎の誕生 日本の「桃ノ子太郎」たち』吉川弘文館 2000年
[編集] 派生用語
[編集] 選挙
[編集] 野菜
[編集] 菓子
[編集] 鉄道
- ECO-POWER桃太郎は日本貨物鉄道(JR貨物)の電気機関車・EF210形の愛称。
- 鬼無桃太郎駅は四国旅客鉄道(JR四国)の予讃線、鬼無駅の愛称。
- 四国桃太郎貨物駅は日本貨物鉄道(JR貨物)の予讃線・高松貨物ターミナル駅の愛称。
- 西日本旅客鉄道岡山支社の吉備線及び津山線の入線メロディ(岡山駅では山陽本線ホームでも使用)。
[編集] 企業
- 株式会社桃太郎(桃太郎映像出版、桃太郎ピクチャーズ)は日本のビデオ製作会社
- 有限会社 藍布屋(らんぷや) 「桃太郎ジーンズ」というブランドを展開
[編集] 桃太郎に関連する作品
- 『桃太郎の海鷲』
- 『桃太郎 海の神兵』
- 『桃太郎伝説』 - ハドソンのテレビゲームソフト。この作品から設定を拝借した『桃太郎電鉄』も知られる。一般的には後者の方が有名。
- 『ぼく、桃太郎のなんなのさ』 - ドラえもんのエピソードのひとつ。映画化もされる。
- 『The Momotaroh』 - にわのまことの漫画。週刊少年ジャンプに連載された。
- 『つっぱり桃太郎』 - 漫☆画太郎の漫画。週刊ヤングジャンプに連載された。
- 『新・鬼ヶ島』 - 任天堂が制作発売したファミコン用ゲームソフト。桃太郎の鬼退治を物語の原案としている。
- 『PEACHBOY』 - シガニー・ウィーバーのナレーション、坂本龍一の音楽で綴られた紙芝居風のビデオ作品。
- 『HUMANITY THE MUSICAL~モモタロウと愉快な仲間たち~』 - 地球ゴージャスのミュージカル。
- 『新・桃太郎』(台湾映画) - 台湾でも桃太郎は有名で映画化された。主題歌の曲は鳩ポッポの曲であった。
- 岡山県立倉敷商業高等学校応援歌「桃太郎サンバ」 編曲は中桐實(おかやま山陽高等学校)
- 古典落語『桃太郎』 - 子どもに桃太郎の読み聞かせをしようとした親が、逆に子どもから作品の別の意味について講釈を受けるという内容。
- 『Dancing Blade かってに桃天使!』 - 株式会社コナミ販売のアドベンチャーゲーム。
- 『桃組+戦記』 - 左近堂絵里の漫画。主人公の桃園祐喜が桃太郎の生まれ変わりという設定。
- 『仮面ライダー電王』モモタロスというキャラクターが登場する。