ジェイムズ・ディロン
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ジェイムズ・ディロン(James Dillon、1950年 - )はイギリスの現代音楽の作曲家。スコットランド出身。
目次 |
[編集] 序説
独学で作曲を修めたのち、ブライアン・ファーニホウ、マイケル・フィニスィーなどの新しい複雑性に関る作曲家たちと交流を深めた。1982年にダルムシュタット夏期講習会に参加しクラーニヒシュタイン音楽賞を受賞する。インド古典音楽からロックに至るまでの幅広いジャンルからの影響をブレンドする作風が注目を浴びるが、似非クロスオーバー音楽にならずに独自の書法へと結実する点が特徴である。
[編集] 第一期
クラーニヒシュタイン音楽賞受賞作となったチェロソロの為の「パルジャンニャ・ヴァータ」、フィニスィーが初演したピアノソロのための「スプリーン」等の作品は書法こそいびつだが、極端な密度の増減から生まれる衝撃力への偏愛が聞かれる。管楽アンサンブルとコントラバスの為の「むかしむかし」のコントラバスパートのドローンにはヘヴィメタルからの影響が指摘されている。
[編集] 第二期
フルートソロの為の「スゴタン」辺りから、ようやく楽譜の書き方に統一性が見られ、様々な楽器編成のための連作「九つの河」で、国際的な名声を決定的にした。依然として「確かに個性的かもしれないが音が汚すぎる」、「演奏家への要求がきつい」、「発想が大胆すぎ」などの批判に晒されるが、それを凌駕するほどの特殊な楽器法の冴えが聞き物である。ハリー・ハルプライヒはこの時期のディロンの作風を「ロマン的構造主義」と評した。「音の汚さ」は前述の連作内の作品「香る遮蔽幕」にて六つのヴァイオリンの微分音を含むトータルユニゾンなどに見られる。近藤譲はこの時期の彼を「最もイギリスで強い作曲家の一人」と激賞した。それ故かディロンは奨学金を貰って日本に滞在し、演奏精度こそ低いものの日本初演もちらほらみられる。
[編集] 第三期
新しい複雑性が市民権を持つと同時に、ディロンの音楽はそれほど複雑とみなされなくなった。オーケストラ作品の委嘱が増え始め、以前のような語法では手間がかかりすぎる為にコンピュータソフトを援用した作曲に傾斜する。この頃からディロンの音の汚さは徐々に後退し、洗練された筆致を伴ったクラシカルな音色へ近づいていった。大規模なピアノ作品になった「要素の書」では各セクション内の密度は複雑どころか簡明な部分が多く、「ヴィア・サクラ」では古典的なファンファーレまで使われる。
近年もこの傾向は続いているが、イギリスを支配するマニエリズム系とは一切相容れない。スコットランド出身であることを強固に主張する独自の音楽美学が、流行に左右されていないと言う指摘もみられる。