スイッチングハブ
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スイッチングハブは、イーサネット(レイヤ2)において、ブリッジと同等の機能、あるいは、より拡張された機能を持つコンピュータ・ネットワーク機器である。レイヤ2スイッチ(L2スイッチ)とも言う。ブリッジが2ポート製品から多ポート製品となっていく過程で、従来のリピータと同等の専用機器として定着したものである。
従来のハブ(リピータハブ)が1つのコリジョンドメインとなるバス型ネットワークの性質をもち接続端末数が増えると大幅なパフォーマンス低下をもたらすのに対し、スイッチングハブはスター型ネットワークの中核としてコリジョンドメインを個々の端末で分割し個別の接続を割り当てるため接続端末数が増加してもパフォーマンスが落ちないのが大きな違いである。また、ブロードキャストドメインの分割などのためにVLANに対応したものもある。その分スイッチングの為のハードウェア機構が複雑になりコストは割高になる。
[編集] 第一世代の登場
ブリッジの製品コストの中で、大きな比重を占めるのが、スイッチング用のLSIで、当初のブリッジ製品は、1ポート毎にスイッチング用のLSIを必要としたため、ポートが1個増えるごとに、LSIの追加コストや、基板設計のやり直しが必要になった。
また、当初のブリッジ製品は、1ポート毎に異なるMACアドレスを持っており、このための管理コストも無視できないため、4ポート以上の多ポートブリッジの製品化は難しいとされていた。
1995年前後から、そのような背景でも、各ポートが独立したレイアウトで、8-16ポートのマルチポートブリッジが各社から発売された。この頃から、「スイッチングハブ」の名称が使われるようになったが、実体はあくまでもマルチポートブリッジであった。
当時は、収容される端末数の増加も目を見張るものがあり、ネットワーク(分割)機器としてのルーターが着実に売上を伸ばしていたものの高価であるため大量導入は難しく、リピーター増設ではコリジョンが多くなり病人のようなネットワークとなり、企業内のネットワークが構築困難になって来ていた。また、ブリッジはすでに第一線の製品としての地位を失っていた。このような中で、安価にコリジョンドメイン分割ができるスイッチングハブの登場は、大いに歓迎された。
当時のスイッチングハブの能力はあまり高くなかったが、以下のような機能を実装することで、ブリッジとは一線を画する製品も登場した。
- 転送モードの選択
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- カットアンドスルー
- 入力バッファに入ったフレームの宛先MACのみ読んで、出力ポートを判別し、出力側のバッファに転送する方式。最も高速に転送できるが、通信品質には全く影響しない。(ヘッダが破損していても気づかない)
- ストアアンドフォーワード
- 入力バッファに入ったフレームを転送バッファに取り込む方式。このときに、データ部の破損したフレームを破棄し、通信品質の向上に貢献する。機器が高価になり、転送速度も落ちる。
- フラグメントフリー
- 入力バッファに入ったフレームのヘッダのCRC情報を読んで、簡単なチェックを行ってから出力側のバッファに転送する方式。ある程度通信品質の向上に貢献し、転送速度も速い。後にこの方式が主流となる。
- ブロードキャストコントロール
- 秒あたりのブロードキャストフレーム数を制限する。閾値はユーザが設定できる。
- 5000フレーム/秒あたりが主な規定値。
[編集] 第二世代の登場
大野式連続鋳造法による無酸素銅線(PCOCC)が通信ケーブル用の銅線製造方式に広く採用されるようになると、既存の無酸素銅線(OFC)の品質向上・価格低下をまねき、ツイストペアケーブル(Category5 UTP)の品質が大幅に向上し、イーサネットの100BASE-TX環境への移行に拍車をかける事になった。
同時に各ポートに異なるMACアドレスを持っていた第一世代の手法は無くなり、一台のスイッチングハブで1個のMACアドレスのみ持つようになった。
1チップで8ポートを制御するBGAによる基板実装のLSIが開発され、価格重視の4-16ポート製品を除いて、最近の製品は1Uサイズで24または48ポートへ進化した。
2003年頃から、さらにLSIが高速・低発熱になったことでファンレス化され、より完成度が高くなったシリーズが多い。また、コストが高くなり不安定の原因となる副基板には光ケーブルインターフェースのみ実装とし、主基板のみにツイストペアケーブルインターフェースを実装するようになり、全ポート・ギガビットイーサ対応のものも多くなった。
現在では低価格化が進み、ハブの代替品として家庭用としても利用されている。 企業では、SNMPやVLAN、STPなどに対応した高機能スイッチが、集線装置として多く利用されている。