ハブ (ネットワーク機器)
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ハブ(HUB)とは、スター型物理トポロジを取るネットワークにおいて中心に位置する集線装置である。ハブという名前の由来は『車輪の中心』からきている。
イーサネット、トークンリング、FDDIなどさまざまなネットワーク規格に存在する機器だが、ネットワーク分野において単にハブというとイーサネット(10BASE-T、100BASE-TX など)で使われる集線装置を指す。
ハブは元々、電送信号の中継を行う装置で、2線だけを収容する『リピータ』と、複数線を収容する『マルチポートリピータ』の総称で使われる。
なお、近年ではスイッチングハブの普及により、単にハブと言うと一般的にはスイッチングハブを指す事が多い。(後述)
目次 |
[編集] ハブの機能
ハブの中には多機能なものもあるが、主要な機能は以下の二つである。
- リタイミング機能
- 電送信号は伝送中にケーブル内で減衰、波形の歪み、ジッタの増加など様々な影響を受ける。伝送過程において電気信号としての品質を保つため、受信した電気信号を復元する機能を持っており、『リタイミング機能』と呼ぶ。
- プリアンブル再生機能
- 通信中のフレームには、プリアンブルと呼ばれる7バイトの1と0の連続が先頭に付加されケーブル内を流れるが、このプリアンブルも伝送過程において、ビットロスなどの現象が発生する場合がある。このプリアンブルを元の状態に戻す機能を、『プリアンブル再生機能』と呼ぶ。
[編集] ハブの動作
ハブは前述のような機能を持っているが、通信における動作としては以下のような動作を行う。
1)受信 2)リタイミング/プリアンブル再生 3)受信インターフェース以外のインターフェースに電気信号をコピー 4)送信
[編集] イーサネットにおけるハブの欠点
スイッチング機能を持たないハブは、一方から入力されたデータ自体には一切関知せず、信号を電気的に増幅し全Portに流すものである。これは、ツイストペアケーブルではなく同軸ケーブルを利用する古いイーサネット規格、10BASE-5、10BASE-2の基線にあたるケーブル、バスを単に機器に置き換え集線するようにしたものである。(そのため、多くのイーサネット規格は現在でもバス型論理トポロジを持つ)
しかし、それでは電気信号の衝突(コリジョン)が発生し、電気信号の波形が崩れ通信フレームが破壊される現象が多発する。
このような衝突が起こる範囲を「コリジョンドメイン(衝突ドメイン)」というが、ハブでは全Portがこの範囲となる。ハブ配下の通信ノードが増えると、それだけコリジョンの発生確率も増えるため、ネットワークの利用効率が低下する。
[編集] スイッチングハブ、用語
その欠点を補うために、MACアドレスを解釈し、適切なあて先のみにデータを送信する機能をもつブリッジ、通常はその機能を持つハブ、スイッチングハブを利用する。
スイッチングハブの発売当初は非常に高価であったが、現在ではハブよりも有用で安価に手に入ることからハブからのリプレースが進み、ハブが利用される場面が少なくなっている。
このため、一般的にはスイッチングハブのことをハブと呼ぶことも多く、ネットワーク技術者の間でも誤解されているケースも多いが、ハブは原則としてリピータの機能しか有していないものを指す。(特に区別する場合、これをリピータハブと呼ぶ。)
一般には利用が少なくなったハブだが、ネットワークの状態管理に使用することがあり、現在でもネットワーク技術者の中では、これを持ち歩き活用している人も多い。
なお、リピータハブはダムハブと呼ばれる事もあるが、ダムハブとは正しくはSNMPに対応していないハブを言う。SNMPに対応したハブはインテリジェントハブと呼ぶ。
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6 | プレゼンテーション層 | SMTP, SNMP, FTP, Telnet | |
5 | セッション層 | NetBIOS, NWLink, PAP, 名前付きパイプ | |
4 | トランスポート層 | TCP, UDP, SPX, NetBEUI | |
3 | ネットワーク層 | IP, ARP, RARP, ICMP, DHCP, IPX, NetBEUI | |
2 | データリンク層 | イーサネット, トークンリング, アークネット, PPP, フレームリレー | |
1 | 物理層 | RS-232, 電話線・UTP, ハブ, リピータ, 無線, 光ケーブル |