セシル・B・デミル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
セシル・B・デミル(Cecil Blount DeMille, 1881年8月12日 - 1959年1月21日)は、アメリカ合衆国の映画監督。20世紀前半の最も成功した映画製作者のひとりである。
目次 |
[編集] プロフィール
彼の両親は脚本家であったが、デミルが12歳のときに父親が亡くなった為、彼の母親は生計を立てるために女子のための学校と、劇団を設立した。デミルは演劇学校で演技を学び、1900年に舞台俳優としてデビュー。その後の12年間は俳優として、また母親の劇団のマネジメントを手がけていた。
1920年代の人気が訪れるよりも前に、1913年以降の監督第1作、数多くのサイレント映画の短編作品を監督した。エジソンの作った映画特許会社MPPC(→スタジオ・システム)の手から逃れるためにハリウッドで製作したのである。
1913年、プロデューサーのジェシー・L・ラスキーらが設立した映画会社にて、ハリウッド初の長編映画(80分以上)である「スコウマン」を監督しヒットさせた。
初期のデミル作品は、第1次世界大戦後の享楽志向を的確に捉えヒット作を連発、デミルはハリウッドの創生期の最高の実力者にのし上がる。彼の成功は、男性客の喜ばすシーンでも女性も画面に釘付けになるように、わざわざ仕組んであった。例えばバスルームのシーンでも豪勢を極め、バスロープもネグリジェも最高のブランド品を用意させ、女優たちが身につける宝石類もすべて本物、いよいよ見せ場になると金に糸目をつけなかった。こうして、女性ファンさえもうっとりさせ、夫やボーイフレンドを連れて、映画館に足繁く通ったのである。こういう作品群は、宗教団体が黙っているわけではなかった。一斉にボイコットされる雰囲気を彼は感じ取っていた。
次に彼の作風が転換するのは、『十誡 』(1923)前後であろう。旧約聖書を扱えば、そういう動きは、わが作品にはなかろうと製作したのである。しかし、豪華主義は相も変わらずで、莫大な資金力をバックに、3千人のエキストラとか何千頭の家畜を動員しての紅海分割シーンの壮大さは、後までの語りぐさになる。予想に反して制作費を軽く超えてしまう収益をあげたデミルは、続けて歴史物『キング・オブ・キングス』 (1927)とか『暴君ネロ』(1932)、『クレオパトラ』(1934)などを制作し、次々と成功を収めていく。シルクのシャツに乗馬用のブーツをはき(写真参考)大勢の側近を従え、マスコミは彼の所属するパラマウント・スタジオを「デミル王国」とも呼んだ。
今度に彼の作風が転換するのは、『平原児』(1937)や『大平原』(1939)などのスケールの大きい西部開拓史を作り始めたころである。ここでは、戦雲たれ込める世情を反映した愛国心を鼓舞する作品群とも解釈できるし、還暦を控えた彼の覚悟であろう。
最後に到達したのは、テレビに押されかけた彼の帝国「映画」を復権させようと、大型映画に見せ物的要素を加えたり(『地上最大のショウ』(1952)はアカデミー賞の作品賞を獲得し監督賞にノミネートされる)、最晩年75歳になってもかつての自分のリメイク作品でしかも彼の作品中で最もよく知られている『十戒』(1956)を完成させた執念は凄いものがある。
1959年に死亡し、カリフォルニア州ハリウッドのハリウッド共同墓地に埋葬された。
[編集] 主な監督作品
- スコウ・マン The Squaw Man (1914)
- 農場の薔薇 Rose of the Rancho (1914)
- カルメン Carmen (1915)
- チート The Cheat (1915)
- 孤松の桟道 The Trail of the Lonesome Pine (1916)
- マリア・ローザ Maria Rosa (1916)
- ヂャンヌ・ダーク Joan the Woman (1917)
- 小米国人 The Little American (1917)
- 神に見離された女 The Woman God Forgot (1917)
- 悪魔石 The Devil-Stone (1917)
- 嘆きの合掌 The Whispering Chorus (1918)
- 醒めよ人妻 Old Wives for New (1918)
- 浮世の常 We Can't Have Everything (1918)
- 情熱の国 The Squaw Man (1918)
- 夫を変へる勿れ Don't Change Your Husband (1919)
- 連理の枝 For Better, for Worse (1919)
- 男性と女性 Male and Female (1919)
- 何故妻を換へる? Why Change Your Wife? (1920)
- 人間苦 Something to Think About (1920)
- 禁断の果実 Forbidden Fruit (1921)
- アナトール The Affairs of Anatol (1921)
- 愚か者の楽園 Fool's Paradise (1921)
- 土曜日の夜 Saturday Night (1922)
- 屠殺者 Manslaughter (1922)
- アダムス・リヴ Adam's Rib (1923)
- 十誡 The Ten Commandments (1923)
- 勝利者 Triumph (1924)
- 霊魂の叫び Feet of Clay (1924)
- 金色の寝床 The Golden Bed (1925)
- 昨日への道 The Road to Yesterday (1925)
- ヴォルガの船唄 The Volga Boatman (1926)
- キング・オブ・キングス The King of Kings (1927)
- 破戒 The Godless Girl (1929)
- ダイナマイト Dynamite (1929)
- マダム・サタン Madam Satan (1930)
- スコオ・マン The Squaw Man (1931)
- 暴君ネロ The Sign of the Cross (1932)
- 新世紀 This Day and Age (1933)
- 恐怖の四人 Four Frightened People (1934)
- クレオパトラ Cleopatra (1934)
- 十字軍 The Crusades (1935)
- 平原児 The Plainsman (1937)
- 海賊 The Buccaneer (1938)
- 大平原 Union Pacific (1939)
- 北西騎馬警官隊 North West Mounted Police (1940)
- 絶海の嵐 Reap the Wild Wind (1942)
- 軍医ワッセル大佐 The Story of Dr. Wassell (1944)
- 征服されざる人々 Unconquered (1947)
- サムソンとデリラ Samson and Delilah (1949)
- 地上最大のショウ The Greatest Show on Earth (1952)
- 十戒 The Ten Commandments (1956)
[編集] 外部リンク
[編集] 関連項目
カテゴリ: アメリカ合衆国の映画監督 | マサチューセッツ州の人物 | 1881年生 | 1959年没