ソード・ワールドRPGシアター
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ソード・ワールドRPG 西部諸国シアター(そーどわーるどあーるぴーじー せいぶしょこくしあたー)は、『月刊ドラゴンマガジン』に1996年から1997年まで連載された、ソード・ワールドRPGの読者参加企画。及び小説全3巻の題名。シアターとも略される。 執筆者は山本弘。イラストレーターは井上純弌、針玉ヒロキ、田口順子。全6話・12回(特別編1話3回を含めれば全7話・15回)が連載された。本企画をもってリプレイ以外のソード・ワールド連載は一旦終了することとなる。
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[編集] スケールダウン企画
ソード・ワールドRPGシアターは、アレクラスト大陸の西部諸国を舞台に読者から送られた原案を素材として山本弘が小説を執筆するという企画である。「シアター」は映画の劇場を意味しており、「様々な映画が上映される劇場のように、バラエティに富んだストーリーが楽しめる連載」になるよう願って名づけられた。
膨大な枚数のハガキに目を通す作者への負担を軽減するため、アドベンチャーからスケールダウンしたとも言われる。しかし募集される内容が小説原案ということもあり、膨大なハガキ枚数にのぼる作品、完成した小説に近い原案が投稿されることも多く見事に目論見は外れ、山本が一つの原案を読むのに一日を費すといった事態も発生した。このため、途中から「一作品はハガキ10枚以内に収める」というルールが急遽定められることとなった。この制限は小説の原案を作るという行為共々読者に敷居が高いと感じさせたようであり、参加者を減少させ企画が短命に終わる一因ともなった。
[編集] 方針の対立
なお、この企画に関しては山本と原稿料の支払いに関して「読者に金を払うこと」に難色を示す富士見書房側との対立があったようである。 このことが企画が短命になる原因になったかどうかは定かではない。
[編集] 歴代採用作
[編集] 雑誌掲載
- 第1回: 『帰ってきたドラゴン』 (原案:黒騎士)
- 紹介作:「ファンドリアの黒い影」(次点?)ほか
備考:原題は「帰ってきた女必殺拳」。舞台はラバンの郊外の小都市バーク。初回だけに派手な話をという山本の意向で決定された。原案作者の黒騎士は前企画「ソード・ワールドRPGアドベンチャー」以前からの常連であり、反戦詩人「流れる風」など音楽に関連した投稿が多かった。シリアスな作風を得意とし、本作の主人公の母を主人公とした前伝「捨てるほどの愛でもいいから」、ヒロインの一人を主人公とした「五番目のサリー」なども手がけており、好評を博した。 だがいつも真面目というわけではなく、1970年代フォークを題材としたと思われる呪歌を大量に投稿し、山本の笑いを取ったこともある。 後日、この物語の主人公の豹変について魔法のアイテムが関連していたのではないかとキャラクターが想像する読者投稿イラストがハガキ紹介ページで採用されている。 なお、この回前編の1996年10月号より、「一度ボツになったアイディアを書き直して再投稿するのも可とする」というルールが追加された。「愛の力でパワーアップは禁断の技」という見解が示されたのもこの第1話前編である。
- 第2回:『海魔の女王』(原案:泉森浩志)
- もうちょっとなのに惜しいなあ賞:「烏の鳴く夜に」(事実上の次点)
備考:舞台はガルガライスのカラン村。原題は「そして、海へ還る」であるが第0話、第1話と「帰る」が続いたため山本が変更した。編集者からは「怪獣物」と評される。原案作者の泉森は大量投稿者として有名であるが、山本からは「詰めが甘い」と評されており、この回は珍しく話がまとまっていたがゆえの採用とはっきり書かれていた(1996年12月号)。この回では暴走が過ぎて叱責を受けた(1997年1月号)ものの1997年4月号でタラントを扱った作品群の秀作のひとつとして投稿作が取り上げられ、8月号で政治劇「あいつに泣き顔見せられない!」「我王生誕」二作の紹介を獲得し、名誉を挽回した。このため政治劇での評価が高いが、「政変、大破壊ばかり描くので採用しにくい」「西部諸国の設定が変わってしまう」とも評されている。また、このほか「遥かなる大地の叫び」で「古代王国の魔獣創造施設はもう飽きた」とダメ出しを食らってもいる。
- 第3回:『魅入られし者』 (原案:市川)
- 次点:「悪徳なんてこわくない」(原案:薄羽陽炎)
備考:舞台はクォーレ村。主人公は『ソード・ワールドRPGリプレイ第2部』のPCおよび『ソード・ワールドRPGアドベンチャー』の重要人物で、両作品を繋ぐリンクに当たる。シアター第3話は1997年1月号発売の時点で、八割方「悪徳なんてこわくない」の採用が決まっていたが、その後にそれまで全く投稿の経歴がなく、無名だった市川の原案が到着、大逆転で採用が決定し山本は驚愕し、賞賛していた。市川は六人の採用者中唯一、ドラゴンマガジン表紙に名前がクレジットされた(1997年2月号)。なお、この回で採用を逃した薄羽(あまりにも劇的な「サヨナラ負け」を喫する結果となっため、山本から詫びられていた)はのち清水零壱と改名し、1997年4月号でタラントを扱った原案を投稿、児玉晴雄、泉森浩志、藤村秀一の三投稿者とともに作品タイトルを紹介される健闘を果たし、連載終了後の「帰ってきたドラゴン」刊行に際して単行本への原案採用及び5分間シアター掲載を勝ち取りリベンジを果たしている。
- 第4回:『熱血爆風!プリンセス』 (原案:大竹雅樹)
- 紹介作:タラント・キャレリン作品では四作がタイトル紹介
備考:舞台は「空に近い街」タラント。主人公はタラントの王女・キャレリン。キャレリンを描いた作品はソードワールド史上初であった。内容はキャレリンとインターネットのコミュニティでアレクラストの文明水準に関する論争の起こる要因の一つとなっている人物ジョン・ベインズを活用したもので、バリアントに近い。 1997年2月号でキャレリンの話をしたことから、山本はキャレリンの話が大量に投稿されることを予感していたが、予想に違わずキャレリン・ラッシュとなり、その中でも図抜けた面白さを誇った本作が採用となった。この回の現象はシンクロニシティと言われている(1997年4月号)。 原案作者の大竹は第0話ですでに採用を勝ち得ていることから山本は採用を迷ったようであるが、他の作品がキャレリンの特性を活かしきれていなかった、大人しすぎたという事情も手伝い採用となった。児玉晴雄、泉森浩志、清水零壱(薄羽陽炎から改名)、藤村秀一といった名だたる常連の秀作(四作いずれも、山本に「面白い」と評されながらの不採用)を押さえての採用であり、図抜けた内容であったことが分かる。もっとも、投稿された原案の内容はソード・ワールドの世界観とは相当にかけ離れた、パワードスーツまでが登場する、山本曰く「ぶっ飛んだ」ものであったらしく、相当のデチューンを施した上での採用となった。 次の第5話以降、一つの話は設定ハガキ含めてハガキ10枚以内という制限(「要請ではなく命令」としてルール変更)が付け加えられたため、無条約時代最後の作品である。
- 第5回:『魂の絆』 (原案:矢麻乃空彦)
- 一発決定のため競合作なし
備考:原題は「俺は生きている」。舞台はドレックノール。ずば抜けた内容によって山本のもとへの到着、読了と同時に採用が決定した(1997年7月号)。山本は「いつもは迷うが、今回は一切迷うことなく本作を選んだ」と言っており、この回は競合した作品は存在しなかった。作者に負担をかけないよう配慮した書き方になっていた原案は異色さでも飛びぬけており、9作品中山本の評価は最も高かった。山本は書くのが楽だったとコメントしている。この回はドレックノールを舞台とした原案が多く投稿された。
- 第6回:『鏡の国の戦争』 (原案:かみはらひろひと)
- 紹介作:不詳
備考:原題は「ミラー・メイズ」。舞台は新王国暦524年春のドレックノール。主人公はドレックノール盗賊ギルドの「闇の王子」ジェノア。『西部諸国ワールドガイド』掲載の設定が効果的に活かされた。ハガキ紹介ページのカットイラストには勇者ロボと思しきロボットが描かれている。この回の前編(1997年9月号)において、企画の終了が発表された。
※原案の後の名前は投稿者。
[編集] ハガキ紹介ページイラスト
ハガキ紹介ページのカットイラストにはソード・ワールドRPGアドベンチャー屈指の名キャラ(採用時、キャラクター投稿の見本として褒められた)であるサティア・アディのイラストが毎回描かれていた。このほかグルグルリュクティと称されるデフォルメキャラも必ず描かれている。
[編集] 単行本収録
- 『狂える館の復讐 ~隅の冒険者の事件簿~』 (原案:清水零壱)
備考: 舞台は鉱山都市ゴーバ。原案作者はミステリーでの評価が高い。
- 『時の果てまでこの歌を』 (原案:照屋剛)
備考:舞台は新王国暦522年末の「岩の街」ザーン。単行本書き下ろし。主人公はザーン盗賊ギルド長のダルシュ。内容は『サーラの冒険』シリーズの外伝に近く、本編用の文章も一部使用された。
- 『狂える森』 (原案:児玉晴雄)
備考:舞台はタラント南東部のポラン村。単行本書き下ろし。大作・秀作続きながら今一採用に届かなかった原案作者への功労賞として採用が決定。ヒッチコック調の作品。
- 『野獣、故郷に帰る』(収録予定、原案:大竹雅樹)
備考:舞台はベルダイン。『ソード・ワールドRPGアドベンチャー』の外伝的エピソードであり、『ソード・ワールドRPGリプレイ第2部』の最終決着編でもある。
[編集] 5分間シアター
巻末には準採用作となった原案を公開する「5分間シアター」のコーナーが設けられ、一冊につき10本程度の原案が収録された。雑誌掲載時に好評を博した作品が必ずしも掲載されているとは限らないのが特徴である。
[編集] 幻の作品
本企画の第0回『野獣、故郷に帰る』は当時文庫化されず、単行本化の際にも収録されなかった。掲載された号の『ドラゴンマガジン』(1996年7、8、9月号)も年月の経過により入手困難となったため、ファンの間では幻の作品となっており理由が注目されたが、JGC2006の「ソードワールドトークショー」において「(出版されなかったのは)リクエストが少なかったため」と山本が暴露、『サーラの冒険』に作者・読者とも集中していたため日が当たらなかった事実が判明した。のち2006年9月以降、出版の時機を逸した、将来的に何らかの形で収録するとの発言がグループSNE公式サイトでなされたが、未だ予定に上るには至っていない。
[編集] 作品一覧
- 『帰ってきたドラゴン』 ISBN 4-8291-4346-0
- 『帰ってきたドラゴン』
- 『海魔の女王』
- 『狂える館の復讐 ~隅の冒険者の事件簿~』 - 単行本書き下ろし。
- 『熱血爆風!プリンセス』 ISBN 4-8291-4360-9
- 『熱血爆風!プリンセス』
- 『魅入られし者』
- 『時の果てまでこの歌を』 - 単行本書き下ろし。
- 『鏡の国の戦争』 - ISBN 4-8291-4351-7
- 『鏡の国の戦争』
- 『魂の絆』
- 『狂える森』 - 単行本書き下ろし。
- 『野獣、故郷に帰る』(単行本未収録)